第6話 脳筋聖女とモブじゃないモブ





 俺はモブだ。でも他のモブとは少し違う、俺はモブであることを自覚しているモブだ。

 そして日本からの転生者だ。




 なぜ自分がモブだと思うのか、だって?




 それはもちろん俺よりもキャラが濃い奴がわんさかいるにからに決まっているだろうが。







 この世界の主人公といえば間違いなく聖女様だろう。全てが完璧である絶世の美少女。

 俺のようなモブとは格が違うのだ。

俗にいうチートというものを持っている。





 今の彼女なら素手で災害級の巨大ドラゴンを一撃で倒せるだろう。

 したがって俺は一日中全力で戦ったとしてもせいぜいノーマルクラスのドラゴン5匹が限界だ。天と地ほどの差がある。次期騎士団長とかいわれているが、俺みたいなモブがなれるはずがない。




 俺は現在、聖女様の護衛をさせてもらっている。

正直、俺たちの出番はないに等しい。聖女様に敵意を向けた瞬間、泣く子も黙るほどの恐ろしい制裁が待ち受けているからだ。





————————————————————





 今日も俺は仕事をこなす。聖女様の儀式中に聖女様の代わりとして魔物を討伐しに行くという仕事がある。


 本日の依頼はブラックドラゴン1匹だ。それなりに強いがすぐ終わるだろう。


「アキラ様お1人で討伐⁉︎⁉︎あり得ません、ブラックドラゴンはあのSランク冒険者が束になってやっと倒せる魔物ですよ⁉︎それをアキラ様お1人で⁉︎」


「そうか?普通だと思うのだが……」


 Sランク冒険者なんて普通だろ?だってSって『普通スタンダード』を省略したものなんだから。

 普通の冒険者が束になって勝てる魔物だとしたら聖女様の護衛騎士の俺がその魔物を楽々倒すことが出来なくてどうする?


聖女様だったらブラックドラゴンごとき道端に生えている雑草を引っこ抜くくらいの力で倒すことができるからな。俺もまだまだだ。



「じゃ狩ってくる」


「いっ、いってらっしゃいませ--……お気をつけて………」





 俺は転移魔法を使い、現場に向かった。俺の目の前には黒い大きなドラゴンが黒い吐息を吹きながら森を荒らしている。

ふむ、意外と小さいな。大体高さ10メートルくらいか。


 俺は剣を引き抜く。

大体1メートルくらいの長さだ。見た目と反して軽い。そしてその剣に魔法を纏わせる。

大体五割くらいの力で魔法を発動させる。

詠唱?そんなの時間の無駄だ。とっとと倒してしまおうじゃないか。


 俺は空中浮遊を発動させ飛び上がる。そしてドラゴンの首を一刀両断。はい、終わり。

  (転移してからここまでで約2秒)




 ちなみにブラックドラゴンは食えるらしい。聖女様への土産として持って帰ろう。

俺は異次元空間アイテムボックスを発動させドラゴンの死体を持ち帰る。

辺り一面はブラックドラゴンの魔法で荒れ果てていたので浄化クリーンで大地を回復させておいた。



これで聖女様のお役にたつことができた。

帰ったら褒めてもらおうじゃないか。





 俺はまた転移で神殿に戻ったのである。






————————————————————




  俺はルークだ。久しぶりだな。


 突然だが、次期騎士団長様は少しおかしい。


 なぜなら、自己評価があまりにも低すぎるのだ。彼は自分を聖女様と比較している。1番比較してはならない人と、だ。


 聖女様は規格外、まず比較できるわけがない。

 聖女様と戦うにしてもこの国全ての国民が集まり、一斉攻撃を不意打ちに仕掛けたとしても聖女様に触れられるかどうかだ。


 というか聖女様と競うことができる次期団長様も規格外だ。

 平気で伝説級魔法や上位ランク魔法をポンポン使う。今回だけでもとんでもない魔法を連発している。



 転移魔法⁉︎それって伝説ともいわれている最上級魔法⁉︎



 剣に魔法を纏わせる⁉︎えっそんなことできるものなのか⁉︎


 無詠唱で魔法を発動⁉︎常人にできる技じゃない、、


 空中浮遊⁉︎えっなにその魔法、、知らないんだが、、



異次元空間アイテムボックス浄化クリーン、、もうそれとんでもない魔法だよ?






 次期騎士団長様はかなりおかしい。






 自分が異常ゆうしゃだということに気がついていない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る