第143話 ピンポンさえも押さないで

 今日は五月十五日。私の四十三回目の誕生日だ。書いていて思った。まだお母さんに「産んでくれてありがとう」を言ってなかった。今すぐ言ってからまた戻ってきます。しばしお待ちを。


「お母さん今日わたし誕生日やから、産んでくれてありがとう」


「あああ、本当や。おめでとう」


「それで今年は母の日もまだやしなんか持ってくね。そういえばお母さんがモデルの登場人物が活躍する長編ミステリー完結したわ。なかなか最後いい活躍っぷりだっ……」


「そこ、もっと分厚いやつでやっといて。うんうん、そうそこもっと分厚く」


「聞いてた?今の話?」


「は? ああ、ごめん、こっちの話してたわ。今切り身をもっと分厚く切ってもらおうと思って。で、なんやった?」


「うん。通常運転だね。それは。まさにそんな感じの登場人物だったわ」


「ははは。で、なんやった?」


「うん、もういい。とりあえず、産んでくれてありがとうっていう電話」


 やはり母は母だった。今年は人生初の長編ミステリーに没頭し過ぎて、お母さんを蔑ろにしていたと思います。いつもは大きなフラワーアレンジメントを買って持っていくのに。


 そういえば、今日の占いの館、昨日の夜は誕生日パーティーをして飲んでいたので、更新が先ほどになりました。本日のカードは「怠惰」自分のやるべきことを怠けてやってない状態を教えてくれるカードでした。


「そ、それなのか!? 母の日も生んでくれてありがとうも、今年はちゃんとしていない私へのメッセージカードだったのか!?」


 そんな気がしてなりません。でも、まぁ思い出して電話できたので半分くらいは良しとしましょう。


 今日のお昼はうな重を食べました。今年のパパからの誕生日プレゼントです。おうちに出前を頼んで、私の家事を減らしてくれるのが目的です。なんと優しい旦那様。ピンポーンとチャイムがなって、四番ちゃんがとりに行ってくれました。


「おいおい、お金持って行かないとっ!」と追いかけたら、お母さーんとはしって戻ってきました。手には紙袋。それを見た家族全員が口を揃えて言いました。


「Mちゃんだ!」


 私の誕生日とクリスマスに車で三十分以上かかる場所から、わざわざ手紙付きのプレゼントを持ってきてくれるMちゃん。第十六話に出てくるMちゃんです。いつきたのだろうか。ピンポンもしなかったし、いつきてくれたのか不明です。ほんと可愛いんだから。きっとドッキリ大作戦を企んで、その通り驚き喜ぶ私を想像していたのでしょう。ういやつめ。そんなMちゃんがクリスマスにプレゼントしてくれたフワモコパーカーを今日も着ています。もうこのフワモコパーカーのお世話にどんだけなって小説を書いているのか。


 今回のプレゼントも素敵でした。むかし仕事で京都に一緒に行った時、立ち寄ったことのあるお店「sou.sou」さんの高島縮でできたモダンなデザインのワンピースとフラワーアレンジメントです。もちろんメッセージカードもついています。


「めっちゃ涼しい! めっちゃ可愛い! これ部屋着にはできんって!」


 と、早速袖を通し愛する夫に見せたところ、


「体型が全く分からないってことはないけど、うまくカバーできているワンピースだね」


 と言われました。うむ、そうだよね。知ってる。もういいのだよ、その辺は。しかしプレゼントのセレクトセンスがまた上がったなと思いました。さすがおもてなしの心を常に持っている彼氏のような彼女。私は今年の彼女のプレゼントになにを選べばいいのだろうか。毎年手巻きセットを実家に取りに行ってもらっておしまい……。いいや、去年はオリジナルロゴをデザインして、それでオリジナル水筒を作りプレゼントしたはず。では今年は一体なににしようかな?


「Mちゃんに捧げる小説を書いてプレゼントしてみる……とか?」


 ないな。それは多分いらないと思いました。私がデビューしている売れっ子小説家ならまだしも、カクヨムで楽しく書いてるだけおばさんでは付加価値がない気がする。残念だ。Mちゃんと私の百合百合な小説を書けるような気が一瞬してしまったのに。まだ一ヶ月あるので、いろいろ考えてみたいです。小説ではなく、プレゼントの方を。もしもこれを読んだMちゃんが百合百合なオリジナル小説を希望だよって言ってくれたら書いてみようかな♡えろっぽく♡でもきっとこの妄想日記読んでないのでそんな未来はこない気がします♡おい、なんで♡がつい♡て♡♡♡くる♡♡♡のだ♡♡♡もう、書きたいのか?私?


 書きたいといえば、長編もまた書きたいと妄想が次のミステリーに動いていますが、子供たちが「五分で読書」の書いたものが読みたいというので、どうしようかなと悩んでいました。長編が楽し過ぎて、「五分で読書」に頭が切り替わらないような気がしていたのです。でも、「つばさ文庫」が今年からカクヨムでも応募できることを教えていただき、処女作の「ガッチーズと怪党キューピー」を真面目に直して文字数内に入れ、出してみたいと思っていたので、ちょうどそのトレーニングに「五分で読書」はいいのかもしれないと思いました。対象年齢がどんぴしゃりで我が家にいるし、ガッチーズを直すためにもいいのかと。


 そういえば、大好きなカクヨムさんの、正雪さんも以前、「子供が理解できるように漢字を開いて書くといいですよ」ってアドバイスしてくださったことがありました。本当にそうだと思います。で、あれば、やはりそのためにも挑戦するべきかと思いました。早速行動に移します。だって本日のカードは「怠惰」です。ちょっとどころかだいぶ他のことも怠惰なくせに、やりたいことには前向きな私は早速子供にいいました。


「一番、二番、三番、お母さんに誕生日プレゼントでお題をくれ!」


「「「え? お題ってなに?」」」


「あのさ、カクヨムで五分で読書シリーズのコンテストがあるんだって。それに小説書くからお題が欲しいんだわ」


「え? お母さん書くことにしたの? やったー!」


「か、かわええな三番。ありがとう! ではお題を。五分で解決探偵あらわるか、誰にもいえない恋かどっちかで、五個くらい書いてん」


 そんなやりとりがあり出てきたお題がこちらです。


 まずは中三女子の一番ちゃん。一番ちゃんは恋愛ジャンルがいいそうです。書いたお題は、「中間テスト」「LINE 」「班活動」「修学旅行」「体育祭」「受験」「卒業式」今気づいたけど、七個もあるやん。まぁいいか。その中からセレクトするか。


 続いて二番は中二病ではない中二男子です。ジャンルは探偵もの。ちなみに彼の今までで一番文字数を多く読んだ小説は私のガッチーズだそうで、もっと物語の世界を知って欲しいと思うのですが、まぁそれは良しとしましょう。出てきたお題は、「車」「山」「キャンプ」「海」「13日の金曜日の真夜中」でした。もう心は中間テストから先へ進んだ夏休みのようですね。全く。


 最後の三番は小学六年生。満面の笑みでノートにお題を書きました。ジャンルは探偵ものがいいそうです。恋愛じゃないんだ。意外! と思いながら、彼女が書いたお題は、「オムライス」「レストラン」「裏切り者」「泥棒返し」「大嫌い」です。えっと、「泥棒返し」ってなんのことなのか、ちょっとお母さんわかりませんが、泥棒から泥棒することを言ってるのでしょうか?


 そんなわけで、「五分で読書」のお題をジャスト年齢の子供達から誕生日プレゼントでいただいたので、楽しく書きたいと思いました。間に合うだろうか。それこそ隙間時間の隙間時間に書く予定です。


 四番五番はまだ適正年齢じゃないし、何より聞いても昨日のエッセイのような回答がやってくると思うので、スルーしていいかなと思いました。お題が「異世界転生」って言われたら困ってしまう。設定考えるだけで大変だもん。


 ほんと異世界ものや、現代ファンタジー書いているカクヨムさんたち凄いなって思います。使う道具とかも名称から考えなきゃいけないですよね。私は無理だ……。なんならこないだのミステリーの登場人物たち、苗字のない人がいっぱいいるし。名前よりも物語の内容を自分で知りたくて書いてるから、登場したときに思いつきで名前を決めていました。そんな私にはファンタジーは書けないです。お話書く前に設定で倒れそうです。


 さて、そろそろ夕方。洗濯物を干して、ん? 今、夕方だけど? まあいいや。お誕生日だし。それともう一回洗濯機を回して、また干して、夕飯のカレーを仕込まなければ。お誕生日だけど、昨日お祝いしてもらったので、今日は普通の夕飯です。なんなら昨日のバーベキューで残った材料を放り込んで煮るだけのお手軽メニューです。そんな本日は、この辺で。


 本日もお読みいただきありがとうございました。



 今日生まれた命に。今日失われてしまった命に。

 世界中の人が愛する家族と幸せに過ごせる、そんな日が早くきますように。







 ――――黙祷

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