第75話 和響の第六感
一話を書くのに五時間もかけてしまった昨日。そして、そのせいでなぜか左腕が筋肉痛。ううんと、四十肩……でしょうか……? 四十二だけに?
そんなことを思っている本日は、朝から妄想日記を書き始めることにしました。どうも、これが最後になると、えいや! って書いてる感がぱないなと思いまして、ちょっと反省です。そして、呑みながら書くと朝まともな頭になったときに、驚愕してしまう。あぁぁぁぁ!! なんてものを皆さんに読ませてしまったんだぁぁぁぁ!!!!
『呑んだら書くな。書くなら呑むな』
今後は、この標語を目の前に貼っておこうかなと思いました。昨日の妄想日記は文体が乱れまくってしまい、大変失礼いたしました。今日は、ものすごくものすごく真面目に妄想しようと思います。
KAC2022第三回のお題「第六感」を今度は妄想を楽しんで書いてみたいと思ってます。カードじゃ妄想できない。妄想を、妄想の息継ぎをしなくては、わ、わたしは、し、死んでしまうぅ……な本日だからです。でも、妄想日記なんてめんどくさい名前つけてるから、そこはやっぱり本当のことを妄想を交えて書かなきゃダメだよね? うん。ちょっとネタを探してきます!
チクタクチクタク………………チーン!
うむ。多分いけるで第六感! では、少々長くなってしまいましたが、お付き合いいただけましたら幸いです。
********
タイトル「和響の第六感」
その建物は、とても古く、それでもなんとか倉庫としての役目は果たしていた。だが、それもついこないだまでの話である。
この倉庫の隣に建っていた古い喫茶店が取り壊され、その跡地に建売住宅が建つことになると決まったのは、もう半年も前のことだった。
この倉庫は元々は工場だった場所なのだが、この家に嫁いできたユキが、姑の嫌がらせを受けながらも、自宅を改装し、飲食店を経営し始めた頃から、ほぼ原型のまま、かれこれ二十年以上使い続けてきた倉庫なのであった。
現在六十九歳のユキにとっては、お持ち帰りのパッケージ類や、冷凍庫を置くスペースとして、大変重要な倉庫なのであった。が、半年前からわかっていたことだとはいえ、実際に隣の古い喫茶店が取り壊されるとなると、様々な問題がユキに降りかかってきた。
例えば、隣の喫茶店の外壁と、この古い工場の壁は接着されているかのように競り建っていて、隣の喫茶店を取り壊した際、もしかすると、工場の壁が倒れてくる可能性があり、修繕するための費用が必要ということが、まず初めにユキを襲った。
「どうしよう和響。もしかして倉庫の壁が落ちてまうかもしれん。そうなると、壁をなおさなきゃ倉庫として使えないし。でね、見積もりをとってみたら、すごいお金がかかるって言われて。ねぇ、聞いてる和響?」
「えー。いいじゃん、なおせばぁ?」
「お金がかかるっていってんの! もう年やしさぁ、どうしよう? 本当に。どう思う?」
「えー? もういいじゃん直せば。どうせ直せんかったら店困るやん」
「でもお金がかかることやしね! でも、直さないと、物を置くところがなくなるもんねぇ。どう思う? 和響?」
「もうだから直せばいいじゃん! っていってんじゃん! もう小説書いてて忙しいから切るよ!」
ブチっと娘に電話を切られたユキは、馴染みの工事業者に相談をするしか無く、なんとか、安値で改装をしてくれる業者を見つけ、見積もりをとることにした。
「和響、聞いてる? 和響?」
「もうさぁ、マジで! 今めっちゃのって書いてたとこなんだけど! 壊すんやろ? で、直すんやろ? でそのお金が80万くらいかかるんやろ? で、もう手配済みなんやろ? でもって、お金の準備はできたと。はい、この件は完了! え? 子供に財産が残せんかもしれんって? 大丈夫! そこは全く期待してない! もういい?じゃあね! 今忙しいんだわ。マジで。もう早く書き終わらないと、子供帰ってくるから! じゃあね! 好きにして! 負債を残さないんだったらなんでもあり!じゃあね!」
ブチっと娘に電話を切られたユキは、苛立ちながら、店の従業員たちに愚痴をこぼした。
「もう本当! 信じられない! なんなのあの子は! 親が困ってるのに! 何が小説なのよ! 趣味でしょ趣味!こっちは仕事してるんだってば! 私が今直さんかったら、あの子の代で直さないかんやつなのに!」
「ユキさん、これもうしょうがないやつですよ。和響さんも何回も何回もおんなじ相談をずっとされていて、そりゃ怒りますよ」
従業員に宥められて、ユキはなんとか落ち着きを取り戻した。そして、そんな日があったこともすぐに忘れ、忙しい日々を送っていた。
そして、いよいよ、隣の喫茶店が取り壊される日がやってきた。どんどん取り壊されていく古い喫茶店を眺めながら、ユキが言った。
「よかったぁ! まずは、壁が倒れる心配はなかった!ね、これなら安い見積もりの、壁の補強だけよね? 田中くん(仮名)」
「いや、これあれですよ。中に立ってる建物あるじゃないっすかぁ。それがもうボロボロなんで、ついでに今直しとかなきゃ、そのうち床が抜けて倒壊しますよ。ちょっとこっちきてくださいユキさん」
田中はそう言って、倉庫の中へと入っていき、ユキもそれに続く。
「ほら、これなんて、もうグラグラじゃないっすか」
そういって、工務店の田中は、腐ってボロボロになった柱を掴んで揺らした。実はこの倉庫の中には、築五十年の二階建ての木造住宅が建っていて、それは、今は亡きユキの夫が、子供時代を過ごした家であった。二階部分には古いものが詰め込まれ、今にも床が抜けそうなほどであった。
「地震きたら一発でアウトですね。下に誰かいるときに壊れたらマジで人死にますって。直すなら今しかないっすね」
「……田中くん。それ、またどのくらいお金かかるの………?」
こうして、何度となくユキを悩ませる、隣の喫茶店取り壊し問題。その度に娘に電話をし、そして、その度に、小説を書いてるときに電話してこないでよね! もう好きにしていいって! と言われる日々がまた始まった。そして、ついにその日はやってきたのであった。
「とにかくあれですよ! ユキさん! とりあえず中の物を出さないと!」
しっかり者の従業員に言われ、それもそうだと気づいたユキは、早速店が休みの日に、倉庫の中に建っている木造住宅の二階の物を運び出すことにした。奇しくもそれは、亡き夫の命日の日であった。
「ごほごほっ! すんごい埃ですねユキさん!」
「ごほごほっ!そうなのよ、誰も使ってないからねぇ。それにしてもすごい量だわ」
「ごほごほっ!ですね、これ誰が使ってた部屋なんですか?」
「これは多分、私の亡くなった旦那さんと、その弟かな。ごほごほっ!」
「確かに、そんな感じのポスターですよね、これ、この水着着てる若いお姉さんのやつとか、ごほごほっ!」
「そうよね、き、気をつけてね! ゆうこちゃん(仮名)! 今ここ、床凹んだから!」
「ごほごほっ! こ、ここも凹みましたよユキさん」
「は、早く物を運び出そう!ゆうこちゃん!」
「で、ですね! 命の危険を感じます! ん? んん?? ああ! こ、これは!」
「え? なになに? 何かあったのゆうこちゃん?」
「ゆ、ユキさんこれみてください! これ!」
「え? これ? こ、これは……」
「「
こうして、十五年前に癌でこの世を去った夫の、高校、大学時代の日記を見つけたユキであった。それは、十五回目の命日に、この日記を見つけてほしいという夫からのメッセージだったのだろうか。そして、それを第六感的な何かでキャッチし、見つけたのであろうか。二人は片付けるのをひととき忘れ、その日記を読むのであった。
こうして無事に倉庫の中身を出し終えたユキと従業員は、休日を満喫するために解散し、ユキは娘の自宅へと孫たちに会いに出掛けた。そして、ことの成り行きを娘に話したのであった。
「でさ、ゆうこちゃんと倉庫の掃除をしててね、で、お父さんの高校時代とかの日記が出てきたの!」
「えー! みたいそれみたいー!今日のことやろ? それ、持ってきてないの?それ!」
「あぁ、家に置いてきた。少し読んだけどね、女の話ばっかり!あの子がどうとか、この子がこうとか」
「お母さんと結婚する前でしょ?」
「そうだけど、もう本当女の子の事しか書いてないの。面白くて面白くて。大学時代はパラパラっと読んだよ。でも高校時代は女のことじゃなさそうだったから読んでない」
「それもどうかと思うわ!」
「ゆうこちゃんが、和響ちゃんにあげたら小説のネタになるって言って、きっと喜びますよって言ってたわ」
「そ! それだーーーー! そう! まさにその時代の若者を書きたいのだ! くれ!今すぐくれ! お父さんきっと私がその時代を書こうと思ってるのを察知して見つけさせてくれたんや! まじすげー!私の第六感! 望めば手に入るこの第六感! これはあれだ! 昨日真面目にカードリーディングしてバリバリ第六感働かせてたご褒美だ! だよねぇ!おとうさーん!さすが命日がサンキューの日だけあるね! ありがとー! 私の小説のためにネタくれてー!」
天国で、黒歴史を小説にするのはやめてくださいと父が叫んでいることを、ユキも和響も、一生気づく事はなかった。
終わり
※これは、飲食店を営む六十九歳ユキ(仮名)が体験したほぼほぼ実話である。
父と母に感謝して。私を産んでくれて、本当にありがとう。
******
本日もお読みいただきまして、誠にありがとうございます。そして、本日も最後に、お亡くなりになられた方々の魂に鎮魂の祈りと、戦争のない世界になって欲しいという祈りを込めて、
――黙祷。
世界が優しい光に包まれて、戦争のない平和な世界になりますように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます