第37話 子供の世界と倫理観 後編
あぁ、辛い、もう本当に辛い。じゃぁ、やめればいいじゃないか、そんなことを始めたのは自分なんだから。もう、このままフェードアウトしてもいいじゃないか、いやでもできない。そんな中途半端なことは私のいつか痩せたいと思ってることだけでもうお腹いっぱいじゃないか。辛い辛いって、そんな辛い体験をする話になってしまったのか、いや違う、そうじゃない。違う違うそうじゃ、そうじゃなぁい。何が辛いってそりゃあなた、
「面白すぎるネタが満載の我が家の週末なのに! 妄想して楽しい話がこれ終わるまで書けんじゃないかーい! そしてこのネタ絶対書こうと思うような出来事朝からあれやらこれやらたっぷりあったのに! 脳内記録したはずなのに! もうなんだったか思い出せないじゃないかーい!シクシク……」
はい、心の叫びを吐き出したところで、いよいよ後編です。
Zちゃんのお母さんに電話することにした私。すぐに出てくれたので、今までうちの四番がされたことを説明する。
「昨日はLINE返信ありがとうございました。で、Zちゃんのお母さんは、実際、どれくらいZちゃんがひどい言葉を使ってるか知ってますか?」
「えぇ、その話を昨日のLINEで聞いて知って、後、LINEでも送った各地区の担当教諭の先生のお話はうちの子もかなって思って」
――いや、そう言うレベルじゃない、うちの子もかなじゃなくってさ。
「だいぶですよ? うちの四番も何度泣かされて帰ってきたかわかりません。それでも、仲直りしたいって四番が言って、Zちゃんに次の日謝ったこともあるらしいです。うちは喧嘩両成敗で教えてますので、自分に悪いところがあったらごめんって言って、そしたらまた、はぁ?マジウゼェ、喋りかけんな!って言われたと言って泣いて帰ってきたこともあります。私も直接現場に居合わせた時は注意したこともありますよ。他の保護者さんもお子さんから聞いて知ってるかもしれないけれど、こう言うことはZちゃんのお母さんに直接誰も言わないと思うので、私は直接電話しました」
「そうですか、お兄ちゃんが口が悪いので、それがうつっちゃったんでしょうかね。自粛で家にいるので、本人と、今日話し合ってみます」
――うん、でもきっと本人は話さないだろうな。
と思った私は、昨日の前編に書いた出来事を話し、子供は自分のされたことは言うけれど、したことは正直に話さないかもしれないので、一応、うちはこんなことをされました、あと、うちの中学生が居合わせて、Zちゃんにうちの四番をいじめるなって叱ったこともあるそうですので、お伝えしときますね。と伝えて、通話は終了した。
ちょっと平和が戻ってきた金曜日。私は書きかけの小説らしきものの世界にどっぷりと潜って文章を選びながら書いていた。BGMは落ち着いたピアノ曲。ヘッドフォンで子供の声もシャットアウト。登場人物の見る世界を一緒に体験して、それをこれからの展開に繋げれるような空気感を出せるように考えて、言葉を探して、くっつけて、また探して見つけてくっつけて、自分のボキャブラリー辞典の厚みの薄さに落胆して、でもめげず。コーヒーを入れて香りを嗅いでそれをイメージした文章にできないか考えて、その文章が登場人物の気持ちと重なるようにならないか考えて、と、かなり潜っていた。こんな時は子供にも邪魔されたくない。あぁ、そうだと、
――意識の深い場所へ潜っているときに、外部から現実に引き戻されたら、なんとも言えない喪失感を味わうことくらい私は知ってるつもりだ。
まさにこれな。今誰も邪魔しないでねと思いながらこの一文を書いて、さらに指を進めていた時、
前編に書いた電話が鳴った。あぁ、喪失感。せっかく深く潜って脳内再生真っ最中だったのに。でも、出ないわけにはいかない。だって、朝、直接電話して話したのは私なんだから。
「もしもし?」
「あの、和響さん、今日の朝の電話のことなんですけれども」
――ですよね、そりゃその話題ですよね。
「今日一日、休憩を挟みながら、私詳しくZに話を聞きました。本当に申し訳ありませんでした。本人はそんなひどいこと言ってるつもりはないって言ってますが、それは人を傷つける言葉や態度だよと、教えました。あの、それで、Qちゃんに謝りたいってLINEをQちゃんのお母さんにしたのですが、Zちゃんが怖いから、謝られたくないって言われてしまって………うううううぅ」
そうか、そりゃ嫌かもなと正直思った。Qちゃんは口数が少ないおっとりとした女の子で、まるでおとぎの国に住んでいるような感じの子だからだ。それはかなり嫌だろう。そしてそんなことを言われてしまったら、泣きたくなってしまうZちゃんのお母さんの気持ちもわかる。私はあえてあっけらかんと、
「いいんじゃないですか? じゃぁ謝らなくても」
と言った。だって謝られたくない理由は怖いから会いたくないのであって、許せないからとかではない。多分。
「だって、会うのが怖いから嫌て言ってるんですよね?Qちゃん。だったら、それでいいんじゃないですか? 心の中でそう思っていれば。そして、もうZちゃんが今までのこと反省して、喋る言葉を気をつければ、それでいいんじゃないかともうんですけど」
「でも、それじゃあうちのZがきちんと謝罪してないことになってしまって良くないかと思うんです」
「でも、それはZちゃん側の問題で、謝りたいと言うのに謝って欲しくないって言うQちゃんは、それもQちゃんの問題じゃないですか? 言ってる意味わかります? すいませんややこしくて。あはは」
コミュニケーションはキャッチボール。相手が受け取りたくなければ成り立たない。これはもうしょうがない。そんなことを話しながらいたら、どんどんZちゃんのお母さんは泣き始めてしまった。おおお。そうか、泣きたいのか、いいよいいよどんどん泣いて、ばぁって出し切っちゃいましょうよと言う私。
すいませんこんなに泣いちゃって。今色々重なっていてと、さらに泣く泣く泣く。私は
「全然オッケー!なんなら子供の前で泣いたってくださいよ。お前のせいでこんなにお母さん泣いて苦しんでるんだぞ! それだけのことを自分がしたって、身に染みて感じて反省してよ!って。私それよくやりますよ。ははは。あんまり言うこと聞かない時は、もうお母さんこんな家出てってやる!って泣きながら大げさにバタン!ってドア閉めてコンビニ行ったこともありますし。あはは。結構効果ありましたよ?」
そうなんですか、なんてちょっと落ち着いてきたZちゃんのお母さんに、
「そうですよいいじゃないですか、あと、他の保護者の方から敬遠されるなんてことがあって、もしかして村八分になっちゃうんじゃないかって心配があるなら、それは絶対私しないんで」
「でも、皆さんのお子さんたちに、してしまってたみたいで」
と言うので、私は言った。
「子供のお手本の大人が、村八分してたらそりゃ子供も誰かを仲間外れにしたりしますよ。もしもそんなことあったら、バカなの?大人は子供の見本でしょ?って私皆さんに全然言いますよ。でも、うちの子供会、みんな優しくて思いやりがある人ばっかりだから、そんなこと起こりませんよ。だからそこは安心していいっていうか」
なんだか落ち着いてきたZちゃんのお母さんと、その後しばらくあぁだこうだと話をし、そういえば私趣味で今小説書いてて楽しいよとか、実は私もお店を出したい夢があってとか、最後は人生相談みたいな感じになって電話は終了した。
よかったよかった。
きっとZちゃんは変わらないかもしれないし、もしかしたら少し変わるかもしれない。でも、基本、Zちゃんのお母さんも言ってたけど、本当に立ち直りが早い。悪気があるのかないのかは知らないが、多分今回のこともすぐに忘れちゃうかもしれない。だから、またいつもの日常になるかもしれないと思った。
キャッチボールが強めのストレートだったら、頑張ってミットに収めるんじゃなくて、よければいい。それだけのことだと思う。そううちの子供たちには伝えている。それは無視をするってことじゃない。あぁ、また強めのストレートねって言えばいいだけのこと。
相手を変えようとするのではなく、まずは自分を変える。きっと単純にそういうことではないかと思っている。
大人も子供も、世界平和は家庭からというが、家庭の前にまず自分。ZちゃんもQちゃんも、子供会のみんなもうちの子も、子供会の保護者さんも、みんなが話し合う時間ができてよかったと思う。
さて、明日からまた月曜日。子供たちは少しは成長して登下校できるだろうか。私もいい小説のネタになりそうなので、このまま見守りたいと思う。
――ん?
四回に渡って書いてしまった、妄想の全く入らない日日是好日日記。最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。最後は長かった。申し訳ないです。3600文字ですって。もう、本当、見直すのも大変。でもこれで、やっと、
いつもの妄想が楽しめるどーーーーー!
さぁって、なんのお料理にしようかな♪
ウッキウッキ!
ということで本日はこの辺で!
ご清読ありがとうございました。
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