第12話 サンタクロース委託業務は脳内再生で
今日はクリスマスイブ。
そして2番ちゃんの誕生日。そう2番ちゃんはイブ男である。多分将来めんどくさいこともあるだろう。なんで俺は自分の誕生日に彼女に尽くしているのかな? と思う日も来るかもしれない。
お母さんとしては、ケーキ作る回数が一回減ってありがたいのだが、プレゼントを一度に誕生日とサンタさんからと2個考えなくてはいけないので、まぁまぁ大変である。
我が家は誕生日プレゼントは予算内で好きなものをリクエストできるが、サンタさんからのプレゼントはサンタクロースから私への委託業務であるので、それぞれの希望は踏まえつつ、業務遂行する。
サンタクロースは欲しいものをなんでもくれる優しいおじいさんではない。必要なものを贈り物として届けてくれるおじいさんである。
さてさて、サンタクロースのおじいさんからプレゼントを用意せよと委託された私は執筆活動が忙しいので、すっかりその委託業務を先週まで忘れていた。田舎に住んでいる我が家は街に出ないと欲しいものが買えない。密林に頼るしかないのである。
クリスマスツリーにそれぞれ「サンタさんへ」と欲しいものを書いたお手紙を飾る子どもたち。
昼中誰もいない時間にそれを確認する。
一番ちゃんは「部屋に敷く白くてふわふわのカーペット」なるほど。まずは部屋を片付けないと敷けないぞ? 五番ちゃんを丸め込み掃除を始めていたのはこのためか。よしよし、それなら簡単。密林手配完了。
二番ちゃんは「爬虫類用の90センチ水槽かセグウェイ」バカなのか? いくらかかるんだ! 却下。
三番ちゃんは「音楽聴けるやつ」なるほど。最近ゲーム機でできるカラオケにハマってるしね。大手メーカーのものは高いので、お値打ちなものを密林手配完了。
四番ちゃんは「地球グミと目玉グミをたくさん」なんだそれは? と調べたら外国製でいかにも体に悪そうなので却下。アニメーターになりたいと言ってるので、いろいろな色があるイラストを描く専用のペンセットにして密林手配完了。
五番ちゃんは「お楽しみボックスとビンゴカード」どうやらお友達と近所の公園で遊ぶのに欲しいらしい。ガッチーズ中の人の継承者はお前か。やるな! 小学校二年生。早速ウキウキ密林を検索するが、納期が間に合わない。残念。というわけで、キャラを育てる腕時計を密林手配完了。
さてさて、二番をどうするか? 二番は誕生日プレゼントもある。2つも用意しなくてはいけない。爬虫類ケースもセグウェイも高すぎる。二万八千円はないなと思いながら、納期が可能な範囲で探すが、なかなか見つからない。
うーむ。どうしたら一生忘れられない十三歳の誕生日とクリスマスになるのだろう。面白くなくてはならない。ドッキリ要素がなければ。
妄想脳内再生を繰り広げる。どんなオチがいいだろう。
冬休み明け。
登校してきた子どもたちは冬休みのあれやこれやを楽しそうに話している。もちろんこの少年、二番君もそうである。劇場版アニメの感想を話して友達と笑ったり、もらったお年玉の金額を嬉しそうに公開したりと、とても楽しそうだ。せっかくなので、久々に会った友達と楽しそうに話している会話を少し盗み聞きしてみよう。
「ねぇ、A子ちゃんはサンタさんに何もらったの?」
「めっちゃいいものもらったよ! 推しの韓国アイドルグループグッズ! しかもセットで5個くらい。」
「まじで! すごいうらやましい! うちは今年もまたカバン。可愛いけど、毎年カバンとかもうまじないわ。」
「いいじゃんカバン。可愛いの買ってもらえてうらやましい!」
「俺は今年はゲームカセット。欲しかったやつだったからすげー嬉しい。まじサンタ神。冬休みやりまくりだったぜ。」
「俺もゲーム用のヘッドフォン。最新のやつでめちゃ嬉しいわ。」
「へぇ、いいな。」
「二番くんは?」
「あ、俺? 卓球台。」
「は?」
「だから、卓球台。ガチなやつ。」
「まじで? 超うけるー!」
はい決まり! 卓球台! 脳内再生天才か!
こうして二番ちゃんのサンタさんからのプレゼントは卓球台に決まった。まぁまぁ高いけどいつか買わされる気がしていたら良しとする。きっと一生忘れられないクリスマスプレゼントになるだろう。まさかサンタさんが国際規格サイズの卓球台を屋根裏にセッティングしてくれているとは想像できないだろう。
ちゃんと納期までに届く密林様様である。
そして、本番当日の現在12月24日午前11時。届いたまま段ボールの中でまだ眠ってるプレゼントたちを、委託業務としてこれからラッピングする。
卓球台はどうやって包めばいいのか、どなたか教えてくれるとありがたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます