雨上がり ~梅と黄金比~

2022年6月15日


 いよいよ、夏が来た! と思っていたのに…。しとしとと降り続く雨に、片づけてしまった上着を引っ張り出す…そんな時期。

 庭の水遣りは必要が無いので、今はもっぱら屋内の子達を可愛がっております。


 気が付けば、13匹にまで増えていた我が家の観葉植物たち。100円ショップからお迎えした見習い騎士イメージのパキラや、影の実力者テーブルヤシ。花束を水挿ししておいたら根っこが出て来たので、そのまま植えたら立派になってしまった強欲な貴族ドラセナ様1号と2号…など。———ああ、そんな中二病的なキャラ設定は秘密にしておかなければいけないやつでした。失敬。

 気が付けば皆着々と大きくなって、晴れた日に窓際に移動させるのも楽々と言うわけにはいかなくなってきました。ドラセナ様なんて大きくなりすぎて、キャスター付きの台に乗って移動していただいております。


 水も滴る素敵な近衛騎士だったはずのモンステラさんは(もう良いって?そんなここと言わずにもう少しお付き合いください。)、葉から滴るお水もや妙に早い水切れが気になるので、定位置にてカーテン越しに日光を浴びていただいており、その存在は我が家の皇太子の如し。

 今一番のお気に入りは、小姓シンゴニウム。小さい植木鉢からたくさんの葉を茂らせてくれるようになり、鉢を大きくしたのも既に2回。薄い緑色が、キッチンを明るくしてくれます。


 さて、そんなアホな妄想をしながら彼らをのんびりと眺めつついただくお酒は「あれ」です。「あれ」。




【梅】



 我が職場に、おおよそウン万円は余裕でするであろうドライバーなるものを持って来たお客様。ドライバーと言っても、ネジを回す「+」とか「-」とかあるものではありません。ゴルフで使う、長いあれです。

 何を思ったか、お客様。華奢なお体にも関わらず、それを片手に駐車場の裏手にある梅の木を叩き始めました。葉が雨露を落としていることも気にせず、バシバシと叩く音。それと共に、下草の上にドサドサと落ちて来るそれは、うっすらと色づいた今が旬の梅の実です。


 職場のあちらこちらに植えてある梅の木は、春ともまだいえないような寒さの残る時期に、いの一番に見事な花を咲かせ楽しませてくれますが、その実もお客様に大人気。毎年たくさんの実が成りますが、あっと言う間に無くなってしまうほど。

 その時も、下の方の実は既に取られてしまっていたようで。高い位置にはまだ残っているけれど、なかなか届かない! とお客様、そのウン万円のそれを私に手渡し、「あなた、ちょっとあの辺叩いてくれない?」とおっしゃられました。


「え? 今、なんと?」


 しかも、これ、お客様の旦那様のものじゃありませんか? まあ、折っても大丈夫という言質をとり、それならば! と、バシバシ落とさせていただきました。再びボトボトと音をさせ落ちて来る梅の実。ビニール袋が梅でいっぱいになると、お客様は私用にとその5分の1ほどを置いて、満足げに帰って行かれました。


 手元に残った梅の実。こうなったら、あれを作らねばなりません。




【梅酒】



 梅:氷砂糖:酒 = 1:1:1 


 美味しい梅酒を作るための黄金比、一体一対一。そんな黄金比のために私が用意したのは、ブランデーベースでできている果実酒用のお酒。実は、そのブランデーとホワイトリカーの2種類で漬けるのは毎年の恒例行事。床下収納を開ければ、一番古いものでもう8年も眠っているのものもあるのですよ。ふふふふふ。


 芳醇な味を感じられるロックがおすすめですが、昼間にちょっぴり~なんて時は、ジュース感覚で炭酸割りですよねぇ。


 久々の晴れ間。そして、今日は仕事が休み。———とくれば、可愛い観葉植物たちを日光に当て、その背中を眺めながら手作り梅酒サワー。最高です。






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