第44話 午後の部

 午後の部。日差しは一層力を増して、焼けつくような痛みすらあった。

 後半戦の立ち上がりから午前の勢いをそのままに血気盛んに挑んだ二年A組は、惨敗を続けていた。

 競技は台風の目。

 放送委員は興奮気味に喋り倒す。

「あーっと、まただ、二年A組どうした! また棒に引っかかったぞ、これで三回目、優勝争いどころか、最下位に食い込む勢いだぁ! 借り物競争、玉入れに続いて何だこの失速は!」

「ったく、うるせぇよ!」

 棒を受け取りながら永田が叫び、陸上部らしくいいスタートダッシュをかますが、残りの三人がついこなかった。永田一人だけが棒を握ったまま走り出してしまい、審判に厳重注意を受けた。

「何してんだお前ら!」

「ごめん!」

 永田が怒鳴りながら振り返ると、本当に申し訳なさそうにした疲労顔が視界に入ってきて、永田はそれ以上何も言えなかった。

 その永田も、続く男子百メートル競走決勝では、三年生の先輩たちに僅差で敗れ、四位という悔しい結果に終わった。

 「前半飛ばし過ぎたんだよ」「やっぱりこうなると思った」「二年A組もこれまでか」様々な声が影から聞こえてきて、不穏な空気が漂い始めた。飛ばし過ぎというのは間違っていないかもしれない。午前は立ったまま身を乗り出して応援していた人々も、今や椅子に座ってため息をつく時間帯が長くなっていた。普段外に出ない私の体にも疲労が顕著に出て、頑張らなきゃと思えば思う程頭がクラクラしてくる。暑すぎるのに、興奮して応援しすぎたのだ。

「水を飲みなさい、水分補給!」

 枝木先生がクラス中に言って回って、初めて自分が水分をほとんど摂っていないことに気がついた。

「まだまだこれからだぞ!」

 炎天下を生き抜く運動部だけがまだ元気を保っている。

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