起 鎌飯網

 嫌悪。

町人地の通りに広がる黒い染みを見て私が最初に覚えた感情は物見人と同じものであった。

この光景を見て喜ぶ物好きは、この件の要因か。

無知で酷な道を歩んできたの者であろう。


 呉服屋のかずに呼ばれ目付が去った現場に訪れるとだれが整備したわけでもなく意図的に避けられた場が出来上がっていた。


「目付様の話では死に身がなく怪奇であると、怪奇といえば姉さんかと思い声をかけさせてもらいました。」


 なるほど、これ程の血だまり……。

この溜まりの中心にいたであろうモノは間違いなくの骸になっているはず。

しかし溜まり以外に垂れもなく、動かされた形跡がない。

目付様が怪奇を言ったのも頷ける。


「夜盗の後ならば皆、気にしないのでしょうが。

 妖の仕業となれば下手に触れると明日は我が身、恐れて避けているのです。

 何分行き来きするにはこの道を避けては通れません。

 これではいつまで経っても不便だと話になり

 姉さんに祓っていただこうと……。」


 尻すぼみになる かずの言葉。

おそらく私が血溜まりに手を触れたせいであろう。


 すっかり乾ききった血は間違いなく人か動物のものである。

目を閉じ母から教わったとおりに血に残る妖かしの気配を探る。

目付けの言うとおり妖かしの気配はある。


 しかし極々微量でこれは血溜まりを作ったものではないのかも知れない。


 妖かしのせいでないにしても、このまま人が避けては悪い気が貯まる一方。

見かけだけの払いをして痕跡を消すことにした。

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