第145話 決戦はいきなり決めろ

 環境保護艦隊スペピが総攻撃を仕掛けてきた。

 環境保護なのに総攻撃ってどうなんだと思うが、してきたんだから仕方ない。


 宇宙を埋め尽くすほどの数万隻の宇宙船が出現し、惑星を取り囲んだのだ。


『オー! ブラックがスリーでUFOがセブンでーす! UFOがメニメニーでスペースがキャノットシーでーす!』


 フランクリン、SFっぽい説明をありがとう。


「数多くない?」


『スポンサーが金の力で雇ったんだなもし。これ、船がたくさんあるように見せて大半はガワだけで、中身はスペースポートなんだなもし』


「だよなあ。こんなに船作る予算ないだろうしなあ」


 震え上がるバイト邪神たちをよそに、俺とヌキチータは冷静そのものである。

 なぜなら、身も蓋もない決戦アイテム、エーテルバスターキャノンがあるからだ。


 ラムザーが作った力こぶオブジェの、拳あたりに設置してある。


『タマル様! いつでもオブジェをぐるぐる回せますぞー』


「おう、ちょっと待ってくれ。一番被害がでかそうなところを調べるから」


 俺も基本的には平和主義者である。

 争いで決着などつけず、平和的に奴らをキャッチして全部売り払いたい。

 だが、問答無用で攻めてくるならば対応せねばならないのだ。


「俺もたくさんの仲間を支えている身だからな。これほどの艦隊、きっとゲットできれば大儲けできただろうが……。俺の感情を優先していては、せっかく開発した惑星がやられてしまう。俺は今、星と仲間を守るためにこの引き金を引くぞ……!」


 どこらへんが一番いいかなーと思って、キョロキョロする俺。


「タマルー! あのね、シェフがね、新しい料理ができたって!」


「こんな時にか!」


『ほんと!?』


 ポタルの報告に、俺ではなく横にいたキャロルが強烈に反応した。

 俺を押しのけるように動いた。


「ウグワー! 宇宙で押しのけるなー!」


 ふわーっとふっ飛ばされる俺。


『あっ、こっちはいけませんぞー!?』


 ラムザーに激突。

 二人でウグワーッと言いながら、力こぶオブジェに追突した。

 そこがちょうど、エーテルバスターキャノンの引き金辺りで……。


『環境破壊者ども! これが最後通告だ! 我らスペースオブピースの正義の前に屈せよ! 破壊者許すまじ! 根絶やし! 降伏せよ! 根絶やしにしてくれる! 降伏……』


 とんでもねえこと言ってるな。

 誰が根絶やしにされるのに降伏するんだよ。

 と思いながら、俺はエーテルバスターキャノンが絶好調でビームみたいなのを吐き出す姿を見ていた。


 俺とラムザーは、ぶつかった反動でキャノンから離れていくところである。


 力こぶオブジェは土台の固定が緩かったらしく、衝突の影響でくるくる回り始めている。

 つまりだ。


 エーテルバスターキャノンが放たれる!

 土台のオブジェがくるくる回る!

 360度方向の環境保護艦隊が薙ぎ払われていく!


『な、なんだこれはウグワーッ!?』


 先ほど居丈高な態度で演説していた、環境保護艦隊の声が途絶えた。

 おお、凄い凄い。

 エーテルバスターキャノンというだけあって、エーテル宇宙では最大の威力を発揮できるのかもしれない。


「こんなとんでもないもの、どうして8000ptだったんだ……?」


 疑問を感じる俺を、下からふわふわ浮いてきた大きなフグがキャッチした。

 上には逢魔卿が載っている。

 隣にはヌキチータがいるな。


『無事かタマルよ。全く、そなたが死んではわらわの楽しみがなくなってしまうだろう。もっと己を大事にせよ』


「あっはい」


『エーテルバスターキャノン、惑星を更地にして再開発するためのものなんだなもしー。宇宙で使うことは想定されてなかったんだけど、実は事故で一つの恒星系を滅ぼしたことがあって』


「おいおいおいおいおい」


 いま初めて聞いたよ。


『その時に全宇宙で廃棄が決定したんだなもしー。今は技術も残ってないのであれが最後の一個なんだなもし。魔人商店の双子が、骨董愛好家が死んだ時に遺産から安く買い取ってきたんだなもしー』


「だからあんなに安かったのか……」


 対神武器というか、対宇宙殲滅アイテムだった。

 一応は道具の部類に入るので、スローライフという目的には叶う。


『あっ、砲口がこっちを向いたぞ! まずい!』


「ああ、それは平気だ。うらっ、石壁!!」


 俺は全員を覆える石壁を展開した。

 エーテルバスターキャノンは石壁を直撃し……しかしこれは破壊不能オブジェクトだったので、ビームはそこで止められた。


 ただ、エーテルバスターキャノンは射撃を止められる前提でできていなかったらしい。

 ビームの勢いがどんどん強くなっていく。

 まるで宇宙全体が真昼になったみたいな明るさだな。


 その時、俺は見ていなかったのだが、後にフランクリン曰く。


『エーテルバスターキャノンがレッドにチェンジして、ラージサイズにパンプアップしましたねー! そしてシュートするビームがどんどんビッグになりましたが、タマルさんにガードされて、ついにはPOW!』


 爆発する仕草をした。


「爆発しちゃったのか」


『しましたねー。マイセルフのパワーでオーバーヒートして、ブロークンしましたねー』


 こうして、宇宙に残った最後のエーテルバスターキャノンは破壊されたのだった。

 あ、ちなみに環境保護艦隊は97%くらいの損耗率になったよ。


『ウグワーッ!! 星を守りきりました! 10000ptゲット!』


『称号:エーテル宇宙の開拓王Lv1』


 Lv1……!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る