第108話一座の秘密7

石臼を使って餅米をすり潰していくが…。


「う~ん、なんか粉にしては粗すぎるな~。これもう一回石臼でやってみよう。」


もう一回石臼ですり潰してみる。

そうすると今度は粒も少し混ざってるが粉に近い仕上がる事が出来た。

これをザルを使って振るう。


「見て見て~!凄い!もち粉だよ!」


やっぱり自分の手で作ると感動する。

この感動を与一君にも知ってもらおうともち粉を見せる。


「え?あぁ…うん。じゃあ、二回石臼使えばいいんだね。」


「あっ…うん。そうだね。」


与一君の冷めた様子にちょっとだけ寂しくなった。

私は初めて石臼を使って感動してたけど、この時代の人からしたら何に感動してるのかわからないよね。


気持ちを切り替えて私も与一君と交代しながらもち粉を作っていく。

しばらく夢中でもち粉を作っていると孫次郎さんに声を掛けられた。


「小豆だいぶ柔らかくなったぞ。」


あんこの様子を私も確認しにいくと、確かに簡単に潰れてしまうくらい柔らかくなっていた。


「すごくいい感じです!後はもち粉だけです。もち粉を作るのに意外と時間がかかってしまってて。」


「そうか。だったら、俺はもち粉とやらを作るのを手伝うからお前は別の仕事をしろ。どうせ何か考えてるんだろ。坊主!かわれ!」


「ありがとうございます。」


孫次郎さんのお言葉に甘えて別の作業に取り掛かる。

色々な材料が並んでいる中で私は干し柿を手に取り、一口ちぎってパクリ。


「おぉ~、甘い~。」


干し柿にも当たりはずれがあるがこの干し柿は当たりのようだ。

この干し柿を細かく刻む。

その後、あんこを二つに分けて両方に塩を少しだけ入れた。

そしてあんこの味見。


「うん、いいかな。」


今度は刻んだ干し柿を片方のあんこに加え味見。


「あんこに近い!!」


甘いあんこを作りたかったが、ここには蜂蜜も砂糖もなかった。

甘酒で作る手もあったが時間が足りないので諦め、食材の中にある干し柿を見て閃いたのだった。

もう一口味見をしようとした時に与一君と目が合う。


「あ…味見はこれぐらいにして~。山芋でも擦ろうかな~。」


久しぶりの甘味に誘惑されてしまっていた。

あんこを冷やす為に外に置いて来た。

山芋を擦っていると目の前に大量の粉が置かれた。


「ほらよ、これでいいんだろ。」


「はい、ありがとうございます。」


後はあんこを包む皮を作るばかりだ。

もち粉と山芋を混ぜ、練っていけば皮の準備は出来た。


「ここから見ててくださいね~。」


出来た皮を平たくしてその中に外で冷ましたあんこを入れて包む。


「これを百二十個作って貰います!さぁ、頑張っていきましょう!」


「…えっ?」


「はぁ~?」

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