第107話一座の秘密6
六十人分か…。
でも三人いれば何とか間に合うと思う。
「惣菜まんですよね。任せて下さい。」
「それが違うんだ。」
てっきり惣菜まんを作るとばかり思ってた。
「惣菜まんあるだろう。その外側が薄くて、中身が小豆が入ったものを作れってんだ。お前わかるか?」
「たぶん饅頭の事だと思います。」
孫次郎さんが言っているのが饅頭だと直ぐわかった。
というかそれしか思いつかなかった。
「お前なら知ってるんじゃないかと思ったよ。そのまんじゅうってやつ作れるか?」
私は近くにある食材をよく見てから頷いた。
「作れると思います。」
「よし、まんじゅうは食後に出すらしいから、それまでには作り終えないとならない。俺らはお前の指示で料理する。頼んだぞ。」
「はい、わかりました。」
でも私には少し気になる事があった。
料理に取り掛かる前に孫次郎さんに聞いてみる。
「私達はお菓子だけを作るんですよね?じゃあ、お菓子を出す前の料理は誰が作るんですか?」
「さぁな、坊主どもじゃないか?だから俺らは離れの料理場なんだろ。」
そう言われるとそうだ。
私達は本堂とだいぶ離れた料理場に案内されていた。
私が納得していると袖を引っ張られる。
「師匠、早く。」
「ご、ごめん。今指示出すから。」
最初に取り掛からなきゃいけないのは饅頭の中に入れるあんこ作りだ。
これが一番時間がかかる。
「孫次郎さんには饅頭に入れるあんこを作ってもらいます。小豆を洗ってから沸騰したお湯に小豆を入れて少したったら、もう一度今言った事を繰り返します。そして次は灰汁を取りながら柔らかくなるまで小豆を茹でて欲しいです。」
「ずいぶん手間がかかるんだな。そこまでやったら声を掛ける。」
そして私と与一君はこれから重労働をする。
簡単な作業だけど辛い作業でもある。
「私と与一君はある粉を一から作ります。」
「こな?」
ある材料を頑張って運び与一君に見せる。
「これを使うの!」
「餅米を?」
私達の会話を聞いていた孫次郎さんが突っ込む。
「俺達が作るのは飯じゃねぇ。菓子だぞ。」
「はい、これで作るんです。お菓子を。」
どうやら孫次郎さんは納得がいかない様子だ。
与一君もいまいちよくわかっていないっぽい。
「もしかして…大福って知らない?甘~いお餅。」
「餅が甘い?」
与一君が首を傾げる。
まだこの時代って大福ないんだ!
饅頭は一部の人が知ってるから大福も知ってるもんだと思っていた。
「機会があったら今度作ってあげるね。今は饅頭に集中しよう。」
餅米を粉にするべく、近くにいたお坊さんに声を掛け石臼を持って来てもらった。
少し怪しまれてしまったが、師匠(孫次郎さん)に頼まれたと言ったら何とかなった。
「さぁ、与一君ここからが大変だよ~。」
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