第106話一座の秘密5
お坊さんが私を見るのを辞め、後ろの方を見ている事に気が付く。
「はい、僕も弟子です。」
後ろにいた人物に驚いた。
帰ったと思っていたのにどうしてここにいるの与一君!
「そうなのか?」
「そうです!」
「ならさっさと入れ。」
怪しまれないためにとっさに返事をしてしまった。
何とかお寺の中に入る事は出来たけど私が立てた作戦とは少し違う。
与一君に言いたい事があるがまだこの場では言えない。
お坊さんの背を追うとある場所で止まった。
大きな建物とは離れていて一軒家みたいな感じだ。
「料理場はここだ。」
「ありがとうございました~。」
お坊さんが居なくなったのを確認してから与一君を見る。
「どうしてここに来たの!家に帰るって言ってたのに!今からでも帰ろう?」
「嫌だ。」
「でも絶対やすさん心配するよ?」
「それは師匠もだろう。」
その言葉で色んな人達の顔が浮かんだ。
「それはそうだけど…。子供が来ていい場所じゃないし。ね?帰ろ。」
「嫌だ。師匠が帰らないなら帰らない!」
これは…困ってしまった。
どうやって与一君を帰そうか悩んでいると与一君がぽつぽつと話始めた。
「俺は…約束したんだ。あいつとも…自分とも…。だから師匠からは離れない!」
与一君が誰と何を約束したかはわからないけど覚悟だけは伝わってきた。
でもごめんね…やっぱり巻き込まないよ。
深く息を吸い、与一君を説得させようとした時だった。
「おい…いつまでそこでぶつくさ喋ってんだ。さっさと入れ。」
孫次郎さんが料理場から出てきた。
「すみません、孫次郎さん。いてもたってもいられなくて、来てしまいました。」
「わかったから。さっさと入れ。」
「ありがとうございます。」
お寺の料理場に入るとその広さに驚いた。
よしさんのお店の料理場の数倍の大きさがある。
「一人多い気がするが気のせいか。お前…誰だ。」
「与一。師匠の弟子。」
「師匠?」
孫次郎さんが私を見て説明を求める。
「え~、私が働いている所で一緒に働いてる与一君です。ここまでついて来ちゃってて。」
「はぁ~。わかった。今日の事については俺からは何も言わない。だからお初に怒ってもらえ。正直人手が足りねぇから助かる。」
「はい!孫次郎さんを手伝う為に来ましたから!」
自分でまいた種だ自分でも何とかしなきゃいけない。
そう思ってここまで来たのだ。
「坊主、お前もここまで来たんだ。手伝えよ。」
与一君は少し驚きながらも強く頷いた。
「頑張ろう、与一君!」
「うん。」
こうして私達は料理に取り掛かろうとしたのだが、孫次郎さんの話を聞いて驚く。
「えぇ!六十人分作るんですか!」
「そうだ。俺も来てから言われた。だから人手が足りないって言っただろう。」
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