第103話一座の秘密2

信長様の言葉が気になりつつもいつも通りの日々を送っていた。

そんなある日の事、孫次郎さんのお店に行こうとしていた所に一人のお坊さんが訪ねてきた。


「お前ここの店の者か?」


「はい、そうですけど。」


「以前、白くて丸い料理を作った者はいるか?」


あぁ、惣菜まんの事か。

確かこの人とは別の二人のお坊さんにお土産として渡した事があった。


「私です。」


「………。女…冗談はいい。」


「冗談ではないです。惣菜まんを作ったのは私です。」


お坊さんは私を睨みつけてくる。

脅しているつもりだろうか。


「もういい。他に当たる。小娘一人の戯言には付き合ってられぬ。」


そう言ってそのお坊さんは去って行った。

去って行った方向を見て嫌な予感がした。

あの人他を当たるって言ってた…もしかして。

私は急いで孫次郎さんのお店に向かった。


孫次郎さんのお店に入るとそこにはさっきいた人が孫次郎さんと話していた。

後ろにいる初さんは不安そうな顔をしていた。


「そう言う事だ。」


「わかりました。」


孫次郎さんはいつも以上に怖い顔をしている。

お坊さんが孫次郎さんの店を出る時に私を見て鼻で笑い帰って行った。


「孫次郎さん!すいません、私のせいでご迷惑かけてしまって。」


「お前のせいじゃない。来てすぐに悪いが俺にお前が売ってた惣菜まんの作り方を教えてくれ。」


「それはかまいませんが…。どうして…。」


「………。」

前に惣菜まんの作り方を教えようとした時断られている。 きっとあのお坊さんに何か言われたに違いない。

私の時も惣菜まんにこだわっているようだった。

話そうとしない孫次郎さんのかわりに初さんが答えてくれた。


「お寺での催しの際に菜が作ってた惣菜まんを作って欲しいんだってさ。私達も最初は菜が作ってるって言ってたんだけど、中々信じて貰えなくてね。だからきりがないって思ったこの人が惣菜まんを作ったって事にしたわけなのよ。すまないね。」


「謝るのは私の方です。ご迷惑をお掛けして本当にすみませんでした。」


深く、深く頭を下げた。

私の作った料理が人様に迷惑かけるなんて思わなかった。


「もういいから。頭をあげろ。さっさと惣菜まんの作り方を教えろ。」


「はい、わかりました!」


その後、惣菜まんの作り方を孫次郎さんに教えた。

さっそく出来た惣菜まんを初さんに食べて貰う。


「確かに美味しいけど…見た目がねぇ。」


孫次郎さんが作った惣菜まんは具が生地からはみ出し、少しばかり不格好になっている。


「最初ですから仕方ないですよ。いつそのお寺に行くんですか?」


「明日だ。」


「明日?!」

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