第101話餃子が食べたい4
いつもだったらお客さんの反応を見つつ食べるけど今日はそうは言ってられない。
私の口が餃子を求め過ぎている。
でもまずは中華スープを飲んで準備をしてからだ。
「うん…美味しい。」
骨からいい出汁が出たのがすぐわかった。
塩だけの調味料なのにここまで美味しいとは。
そしてこのふわふわ玉子がこの優しい味にピッタリ。
そして今度は待ちに待った餃子に箸を付ける。
パリパリの羽を箸でわり餃子を一つを口の中に…。
噛めば皮が破れ肉汁と共ににんにくの香りが一気に広がる。
そして…この皮のもっちりした食感と肉肉しい感じが最高!!
「んんん~!!餃子だ~!!!」
この…この味を私は求めていたのだ!!
一度味わってしまうと箸を止める事は不可能。
ご飯、餃子、ご飯、餃子、ご飯、餃子のループが暫く続く。
大皿に盛った餃子が一気に減っていくが餃子より一番先に無くなるものが一つ。
信長様が口をモグモグしながらご飯茶碗を私の目の前に差し出す。
「………。」
あぁ、ご飯のおかわりね。
きっとご飯と餃子で口の中がいっぱいなのだろう。
信長様らしからぬ、可愛い頬だ。
「おかわりですね。藤吉郎さんもお茶碗ください。ご飯盛ってきます。」
「っすっむまへん…。」
藤吉郎さんの口の中もいっぱいのようで、申し訳なさそうにペコペコと頭を下げた。
与一君とよしさんのお茶碗を見たがあと少しでこちらも無くなりそうだ。
これは…おひつごと持って来た方がいいかもしれない。
料理場からおひつを持って来ると与一君とよしさんのお茶碗も空になっていたので信長様達の分と一緒にご飯を盛ってあげた。
「ご飯いつもより早く無くなりそうですね。」
「「「「………!!!!」」」」
四人とも無言でおひつを見る。
自分が言った自分の言葉に後悔した。
皆さっきよりも勢いが増し、食べ進める。
それはもう頬袋がパンパンになるほどに。
「言わなきゃよかった。」
その後、私も負けじと餃子を頬張ったのだった。
案の定最初に無くなったのはご飯で、次は餃子、最後にスープが無くなった。
綺麗なお皿は素直に嬉しい。
「皿を見て何故笑う?」
信長様がけげんな顔で私を見る。
どうやら表情に嬉しさが出てしまっていたらしい。
「嬉しくて…つい。今日はありがとうございます。」
「礼を言うのは俺の方だろう。」
「沢山美味しそうに食べてくれたので。ありがとうございます。」
信長様は私をじっと見た後に笑う。
「変な女だ。」
その一言は温かさがあり、誉め言葉に聞こえた。
「変な女」が誉め言葉に聞こえるだなんて私もこの人に慣れてきたって事かな。
「おんな…。」
「はい?」
片付けをしていた手を止めて信長様を見る。
まさかもっと食べたいって言うんじゃ…と身構えた。
「うまかった。」
その言葉を言う為に私を呼んでくれたと思うと何だか嬉しくてたまらない。
意外と可愛い人。
絶対にこんな事言えないけどその代わりに感謝を伝える。
「ありがとうございます!」
信長様は目を細めてもう一度同じ一言を呟く。
「変な女だ…。」
全く何回言うんだろ…この人は。
でも嫌な気持ちはしなかった。
そして…後日信長様から麻袋いっぱいににんにくを貰った。
こんな大量のにんにくどうしろと??
そのにんにくは料理場の片隅に置く事になるのだった。
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