第14話 ききょうの回想 5 天慶3年 長月
「姫様のご様子は・・・」
などと、興味ありげに女房達は尋ねて来ますが、当の姫様は御変わりなく、以前の通り手習いや歌の道もそこそこに勤めておられます。
飼われておられます虫たちもきちんとお世話なされ、近頃は姫様ご自身も庭におりて女童たちを指図して草を集めておられます。女童の中には、姫様に懐いて虫を可愛がっておる者までおりました。あのような気味の悪いものを・・・と眉を顰めますが肝心の姫様があの通りでございますので私も𠮟りかね、手を
姫様はその日も庭に下りてどこどこにどのような草が生えているのかを一人で調べておいででございました。その時、ふと妙ちきりんな姿をした者どもが姫様を窺っているのがわたくしの眼に映ったのでございます。
妙ないでたちでございました。女の格好をしておりますが背は高く、顔はよくは見えませぬがちらりと見えた顎のあたりは、髭の剃ったあとをまだらの白粉で隠しております。
あ・・・さようですか。その
翌日、その右馬の介様から姫様に贈り物が参ったのでございました。
その前に・・・
「さような所でお小水をしていると、体の中に長虫が入り込みますよ。長虫は暖かいところが好きなのです。その上一度入ると
と大変に叱られた挙句、そんな一大事が我が身に起きた時の事を想像して余りの怖さに二日ほど寝込んだのでございました。以来、長虫を見るたびにその事が思い出されまして・・・長虫は大嫌いなのでございます。
ですから右馬の介様から届いた白木の箱の中に三匹の長虫がとぐろを巻いているのを見た時はそれこそ腰を抜かさんばかりでございました。姫様が虫を愛でておられると聞いて贈ってきたのであろうと殿はなぜか右馬の介様を
それに・・・右馬の介様と言えばさる画師の方が地獄図を描こうとして閻魔様の顔が思い浮かばず、参考までにぜひ
その右馬の介様に姫様はなぜかその日から
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