第11話  空音の記 5 941年 盛夏

 あのいんちき霊媒師を思わずやっつけてからというもの、ますます皆が私を避けるようになった。私を見かけると目も合わせずにそそくさと逃げ出す者までいる始末。柔術を得意げに披露してしまったのは自分のせいとはいえ、どう考えてもあっちの方が悪いんじゃない?そんな居心地の悪い雰囲気の中、「父上」が突然

「娘の病を治した陰陽おんみょうの方がおられたではないか。あの方を招けばよかろう。前と同様、隣家の右馬うまの介どのを仲立ちにすればよい」

と仰ったそうだ。ききょうの話では使いの者に

「なあるほど」

右馬の介様は大げさに頷いたのだそうだ。

「あやつにとっては、さようなことは朝飯前でございましょう。けつね同士存分に話せば良い解決の方法もございましょうし」

 こうして私は「あいつ」と出会う事になったのだった。それにしても、キツネ同士ってどういうこと?そう思っていた私もその名を聞いて「なあるほど」と感心することになるんだけど。

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