第8話 繭狩り③
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「神封じの儀式だ、準備をしろ」
結局なにもできずにただそこにいただけのシャルロは……その言葉に信じられない思いで顔を上げた。
『神封じの儀式』はしなりのある植物を輪状にたわめ、そこに
異常な治癒力を持つ神繭たちが確実に命を落とすために発案されたというが、それを一般人にまで施すなど聞いたことがない。
そう。結局ここに神繭はいなかった。
隣村に匿われていると情報が入ったのだ。
「お、
シャルロの渇いていた喉から掠れた声がこぼれるが、眼帯の男――繭狩りの長は嘲るような冷ややかな視線を向けて鍛えられた腕を組む。
「お前に口答えする資格があるのかシャルロ。ただのひとりも狩ることができなかったお前に」
「でも……彼らは一般人で……」
「そんなことは関係ない。シャルロ。神繭を崇拝するような愚者を生かしておくことは我らの障害でしかない。――ふん、やる気がないのならお前は今回の狩りから外す。王都に戻って頭を冷やせ」
「……ッ」
「少し腕が立つくらいでいい気になっていたか? そうだろうな。いい機会だ、我らがお前を育ててやった恩についてよくよく考えておけ」
「…………あ、う」
「わかったら返事をしろシャルロ!」
「は、はいッ……すみません……でした……」
シャルロは泣きそうな顔で後退り……かぶりを振って身を翻す。
逃げるように離れていくことしかできない自分が情けなくもあり……けれど指示は絶対だと感じる自分を肯定してもいる。
――王都に帰らなきゃ……。私は繭狩りだもの。間違っていない、私の覚悟が足りないだけ。
その捨てられた犬のような姿に同情する繭狩りもいたが……大半は彼女を完全に無視することを選ぶのだった。
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