第75話 これが力の差!?

 良しッ! これなら行けそうな気がするッ!


「全員、即興でも良い──フォローしながら戦ってッ! 僕の合図があるまで今度は皆が時間稼ぎをしてッ!」


「「「了解ッ!!!」」」


 おぉ!? あの2人も素直じゃないか!


 初めからそれぐらいまとまっていて欲しかったよ!


 さて──


 まずはに操作出来る枚数の盾を重ねて出して、次は──


 僕は奥の手を発動する為にを確認する。


 ──良かった、まだ繋がっている。これなら行けるはず。


 だッ!


 ここへ到着するまでに得た力を使う!


 マブダチの『感度操作』更なる覚醒した力である【】を使用し、【痛覚】を最大の10にする。


 これで僕とレアルさんの痛覚はされているはずだ。


 これでを作るッ!


 この感度共有の効果で今は痛みだけを共有する事が出来て、スキル効果は反映されない事は検証済みだ。


 つまり耐性系のスキルがある僕は耐えられる。当然ながらレアルさんも持ってる可能性はあるから我慢比べだけどね。


 ただ、僕は『気絶耐性』があるから気を失う事は無いと思う。


 だけど……少し度胸が必要だ……最初の頃はこれで酷い目に合っているし。試した時とか悶絶するぐらいだった。


【痛覚】10の状態で戦闘時に試すのは初めてだけど、僕なら耐えられるはず……たぶん。


 ──躊躇ってる暇はないッ!


 レラに確実に当たるであろうレアルさんの右の拳打が今迫っているッ!


 守れッ! レラを守る為に自分を犠牲にしろッ!


 隙さえ作れば皆がなんとかするはずだッ!


 右腕を叩く──


「──いッ、たぁぁッ!」


 ──あまりの痛さに僕は右腕を抱え込むように蹲る。


 すんごく痛いッ! 折れたかと思ったんですけど!? 本当に耐性さん活躍してるの!?


 そういえばレアルさんはどうなった!?


 顔を上げて状況を確認すると、レラに拳打は当たる事なく戦闘が継続していた。心無しか少しレアルさんの表情が固い。


 効果は抜群だッ! 僕も非常に痛いけど!


 次は両足だ。機動力を削ぐッ!


 ──いったぁいッ!


 涙が出そうだよッ!


 でも、レアルさんの動きも鈍くなったし、これなら攻撃を当てる事は可能だろう。


 僕は痛くて動けないけどね!


 しばらく皆が攻撃を続けてくれるが──


 これでも攻撃が当たらないとは……次期Sランクというのは化け物だな……。


 しょうがない。攻撃がこれでも当たらない以上、次の手を使うしかないな。



「お前──呪術師か何かか?」


 レアルさんは攻撃を避けながらも僕に話しかけて来た。


 僕がやった事がわかったのか……この乱戦の中観察力が半端ないな。


「僕は──盾使いですよ」


 でも、ネタバラしはしない。『感度操作』は誰にも教えない。疑いを持たれた所で証拠なんてないしね!



 だけど、こっちに意識を向けてくれたのは丁度良い。


 ここで──【好感度】1の『挑発』だッ!


 そして、上空にあるを一気に操作して勢い良く落とす──


 これで僕の準備は万端だ。


「ふざけやがって──」


「──!?」


 レアルさんは他の攻撃のダメージを最小限にしてこちらに一直線に走って来る。


 というか、レアルさんのダメージがこっちに来て激痛で動けない件についてッ!


 他の皆がいっせいにこちらに駆け寄るが──


「来るなッ! 僕を信じろッ!」


 まだ来られると困るので制止させる。そして、全員が僕の言葉に立ち止まってくれる。


 これは予定の範囲内だ。


 迫る拳は痛みで動けない僕の腹部に直撃する──


「ぐッ──」


 ──超痛いッ!


 そのまま勢い良く吹き飛ばされて地面を転がる。


 本来であれば気を失うぐらい痛いのだろうけど、『気絶耐性』が効果を発揮してくれているお陰でなんとか意識はある。というか意識を手放したいぐらい痛い!


 微かに見えたレアルさんはこの激痛で苦悶の表情を浮かべる。


 耐性スキルを超えた痛みなのに耐えているレアルさんが半端ないな……。


「目の前に集中しろッ!」


 レラ、ユーリ、サラさんが駆け寄ろうとするが、制止させて攻撃の準備を取るように促す。


 もうすぐで上空から盾の塊が降ってくる。


 今の状態であれば避けるのは不可能のはず──


 名付けて──【流星盾メテオシールド】だッ!


「ちッ、糞がッ!」


 レアルさんも上を向いて悪態を吐く。


 これで倒せるなんて思ってはいないし、【直感】先生がそう言っている。


 だから──


「──皆ッ! 一気に行くぞッ!」


 ──ここで一気に仕留めに行くッ!


「「「──!? 了解ッ!」」」


 盾の塊がレアルさんに直撃し、ズゴオォォォォンッとけたたましい音と共にクレーターが出来上がった瞬間に全員が必殺技を繰り出す為に動く──


 僕も最大枚数の【盾刃シールドカッター】で皆が動き出すと同時に牽制する為に放つ。


 すると凄い圧力が僕達を襲ってきた。


 ──これは非常に拙い気がする。『危機察知』の警鐘が最大だ。


「ウガアアアアァァァァッアッ!!!!」


 レアルさんの雄叫びで更に強まる『威圧』──


 僕以外の動きが止まる──


 何が起こっているんだ?!


 既に放っていた【盾刃シールドカッター】は当たる事なくレアルさんがいつの間にか持っているによって全て破壊される。


 動きが全く違う──大斧って剣みたいに振れるんだね……。


 この感じは暴走した姉さんと一緒だ。


 確かレアルさんの二つ名って──『狂戦士ベルセルク』だった気がする……失念していたな……。


 念の為に『鑑定』で確かめてみると『狂化』スキルというのがある。


 うん、ヤバい。


 このスキルって確か自我を失う代わりに身体能力が2倍になった気がするんだけど……。


 こんな危険な人を試験官にするとか学園は正気か!?


 レアルさんは大斧を数振りすると、衝撃波が皆に襲う。


 僕は咄嗟に魔力を多めに込めた【盾具現化シールドリアリゼイション】で相殺しようするが、簡単に壊され、離れている僕以外は吹き飛ばされて気を失う。


 たった一回の攻撃で立場が逆転してしまった……この人ヤバすぎるだろ……。


 これ試験にならないんじゃね?


 レアルさんが鋭い眼光でずっと僕を見据えてるんですけど!?


 試しに自分を攻撃してみるが──レアルさんは無反応だ。


 僕は一旦【痛覚】を通常に戻す。


 おそらく、アドレナリンという奴が出過ぎて痛みを感じてないんじゃないかな……。


 ──無理無理、武器使わせたし試験終了で良くね?!


 ゴリ先生ヘルプッ!


 目を泳がせてゴリ先生を見つけると──


 女性の先生に鼻の下を伸ばしていた。


 いやいや、ちゃんと試験見ててくれないですかねぇ!?



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