第69話 教育的指導!?

 フィアは僕が「回復するよ」という言葉を待っている。


 し・か・し・だッ!

 こんな公衆の面前でヤるのはさすがの僕も無理だ! ユーリの時と違って人が多すぎる!


 あぁ……何でこんな事に……。

 あれだ……いつもこんな事やってたから歯止めが効かなくなってるんだ……。


 おっぱいは触らなくて済んでホッとしてたのに、まさかこんな事態に陥るとは……。やるとしてもフィアのあられもない姿を周りに見せたくない……。


 だけど、このままでは魔力の尽きたフィアがテントで加点試験が受けれなくなってしまう……。


 ──何か手はないか!?


 ジーッ、とフィアは僕を屈みながら見詰める。


 ──今度は上目遣いだと!?


 可愛いじゃないか! ちくしょう──どうしたらいい!?


 ヤるしかない……。


 ──僕に良い考えがある。


「フィア、あの結界をお願いできるかな?」


「もちろんですッ!」


 顔を近づけて笑顔で答えるフィア。


 食いつきが凄い……。


「良し、なら──【盾具現化シールドリアリゼイション】ッ! じゃあ、結界使ってくれる?」


 魔力盾で天蓋のように僕達2人を囲む。いつもの魔力盾じゃない。魔力盾を展開している。


 これは何故か? 魔力を込めると白く濁ったような感じになるからだ。これを重ねると白いすりガラスのように外からは見えなくなる。


 とりあえず早く終わらそう。いきなりこんなの出したから外が騒がしい。


「わぁぁ、凄いです! 見えませんね! これならいつでもやってもらえそうですッ! ──『防音結界』──さぁ早くして下さい♪」


 え? 外で魔力回復する度にこれ使うの?


 困惑する僕に対してフィアは満面の笑みを浮かべている。


 はぁ……とりあえず準備は整ったしやるか……。


 僕はフィアを抱きしめる──


「えへへ、ロイ君のハグです♪」


 おっぱいを押しつけられているが耐えろ僕……違う事を考えるんだ!


 そのうち何かこういうのを耐えるスキルを習得しないかな……さて、やるか……。


「……『魔力譲渡』──」


「ん、んん…あっ、あぁぁァァァンン、ロイ…君──ロ、イ…く……んんッ」


 フィアは僕を涙目で見上げながら背中に手を回して更に密着して脱力する。


 僕の精神がガリガリ削られる……特に名前を呼ばれると精神ダメージが半端ない!


 おっぱいが柔らかいよッ!


 知ってるか? 


 おっぱいって押し潰されると──むにょんっ、て四方に分散して、触れてる部分の暖かさが広がっていくんだぜ!?


 鼻血が出そうだよッ! 温もり半端ないよッ!



 ──ん!? これは──



 ──僕の先生達が警鐘を鳴らしている!?


 ズゴォォォンッ、とけたたましい音と同時に僕の盾が破壊された。


 いったい誰が──


 ──って、先生!?


 目の前にいたのはさっき説明してくれたスキンヘッドのゴリ先生だった。


 どうやら大剣で僕の魔力を込めた盾を破壊したようだった。


「貴様──公衆の面前でいかがわしい事をするとは中々度胸があるなぁ? あ゛?」


 ドスの効いた声で僕は睨まれる。


「ご、誤解ですッ!」


 即座に弁解するが、仁王立ちするゴリ先生の迫力が半端なく怖い。




 ◆




 俺は元Sランク冒険者のゴルだ。去年に冒険者を引退した俺は育成学園の講師として再就職をした。


 冒険者は危険な職業だ。浮かれている奴ほど直ぐに死ぬ。


 そんな奴をごまんと見てきた。



 特に今年は『開花の儀』で特殊スキルやユニークスキル所持者が多い。だからこそ俺はそいつらの道標になるべく立ち上がったッ!


 だが──


 ──この目の前にいるふざけた野郎はなんだ!?


 いきなり結界みたいなので囲いやがったと思ったら、炎の鞭を使ってた餓鬼が「あぁッ! 絶対エロい事してるッ!」とか騒いで魔法を使いやがるから、被害が出る前に叩き割ったら、この野郎──女と抱き合ってやがった。


 白昼堂々とナニをしてた?!


 誤解とか、あの餓鬼の言葉とこの状況で誰が信じるんだ?


 これはが必要だろう。


「坊主──俺は基本的に監視がメインだが──今回は特別にお前の試験担当になってやろう。お前の獲物は──盾か。ほら」


「──!?」


 放り投げられた鉄の盾をキャッチする。


 俺も先生になったんだ。子供相手に本気は出さん。これは職業別の試験だ。


 盾使いであれば防ぐ事が出来れば試験は終了だが──少しぐらい躾けてもかまわんだろう。


「お前はロイドだったな。俺はゴルだ。学園に入学するのであれば覚えておけ」


「ゴリさんですか……」


 名前が違うッ!


 俺のこめかみがピクピクと痙攣しているのがわかる。


 落ち着くんだ。相手は子供だ……きっと聞き間違えたのだろう。


「いいか? 俺はゴルだ。では試験を開始する前にロイドに説明しておく。前衛職は用意された木製の武器以外は使う事は許さんが、今回は特別に鉄製を使わせてやろう。スキルは使ってもいいが、身体強化系とかの肉体に作用するスキルだけだ。さっき出した魔力で出来た奴も禁止だ。使えば減点する。お前は盾使いだから俺の攻撃を防ぎ切れば良しとしよう。俺はスキルは使わんし、これは刃引きをしているから安心しろ」


「マジか……(こんなチャチな盾で大剣持ったゴリラみたいなおっさんを対処するのか……刃引きしてもあんまり意味ないだろ)……」


 失礼なクソ餓鬼だなッ! 俺は『地獄耳』スキル持ちだから小声でもしっかり聞こえてっからなッ!


 というか、さっきのわざと間違えやがったな!?



「ロイきゅん、ファイトだよ!」


 ……あいつは確か『聖天』の──『瞬影』のリリアじゃねーか……。


 そういや……こいつライラの息子だったな。その繋がりか……。


 しかし、俺の目を掻い潜ってこんな近くまで来るとは流石だな……腐っても『聖天』か……。


「そんな人の皮を被ったゴリラなんか吹っ飛ばせ〜ッ!」


「──はいッ!」


 致命傷は避けるように吹っ飛ばしてさっさと終わらそう。


「さぁ、行くぞ? の息子よ──教育的指導だッ!」


 俺は大剣を上段に構える。


 こいつはカイルに似て盾使いだが、身のこなしを見ている限りは受験生でもトップクラスだ。


 それなりに手加減してりゃ、死ぬ事はなかろう。


先生──僕も出来れば木製を希望したいです。それだとペシャンコのミンチに──「俺の名前はゴルだと言ってるだろうがァァァァッ!!!」──なるぅぅゥゥゥッ!?」


 このクソ餓鬼がぁッ!!!


 俺は上段から真っ二つになるように一刀両断すると──地面に接触して砂埃が舞う。


 ちっ、感触がなかったな。どこに逃げやがった──


 ──俺の後ろか。けっこう動けるな。下手すりゃBランク冒険者ぐらいあるか……。


 砂埃が邪魔だな──


 大剣を横薙ぎに振ると風圧で砂埃が晴れる。


 そこには驚いた顔のロイドがいた。


 俺は間髪入れずに再度横薙ぎの攻撃を放つ。


 完全に捉えたぜ?


 さぁ──どうする?



 ◆



 私はなんとかロイきゅん達の試験が始まる前に到着する事が出来た。


 本当、一時は間に合わないかと思った……というか案内する役目を果たせていないから間に合ってはいないんだけどね……。


 まさか、途中の街で任務を受けさせられるとは……隊長の人使いが荒い……。


 必死に任務終わらせて教会に戻ると案内はアレクさんに頼んだと伝言を受けた時の絶望感が凄かった……。


 早めに到着してマッサージしてもらう予定だったのにッ!


 絶対にじゃんけんに勝った私にマッサージを受けさせない為の妨害だわ!


 そこからは全力で走って、なんとか試験前には間に合ったけど……。


 そして、試験を『隠密』スキルを使いながらロイきゅん達の活躍を見る事にした。


 周りにはスキル構成の人達がちらほらいた。


 隊長達の言う通り、各国が注目しているだけはある。


 特筆するべき事は──


 講師陣だろう。試験だというのに『大賢者』、高ランク冒険者がそれなりにいる。



 それにまさか──『剛力』のゴルがこんな所にいるとはね。お陰で近くに行って見れないじゃないッ!


 こいつは隊長並に強いし、パワーだけなら誰にも負けない。片手で巨大な岩を投げるなんて芸当が出来るのはこいつだけ。


 もう歳で引退したと昨年噂になっていたけど、まさか講師になっているとは……。


 しかも今、ロイきゅんと対戦している。


 刃引きはしてある大剣だけど、こいつの怪力で振るわれる一撃は速度もあるし、風圧と威圧で動けなくなって大体は沈む。


 でも──しっかりと一撃目は避けれたわね。


 さすがロイきゅん♪


 きっと、わざわざ『隠密』を解いた私の応援が届いたに違いないわ♪


 早く試験終わらないかな〜。



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