第68話 恐ろしい子!?
「ロイ君……」
唐突に背後からフィアに声をかけられたので振り向くと何か言いたそうにしていた。
「フィア? どしたの? こっちはまだっぽいし、ここから応援してるよ!」
前衛職は人数が多いからまだ順番が回って来ないのでフィアを応援する意を伝える。
「ロイ君は模擬戦を受けるのですか?」
「まぁ、そうなるだろうね。僕はまだトップを取れるだけの点数を稼げていないだろうしね」
今年は豊富だとアレクさんから聞いている。確かに羨ましいユニークスキル持ちの人達ばかりだ。
ユニークスキルがかなりの加点対象であるのなら、厳しい気がしているのも事実。
今の所けっこう良い感じに得点は稼げているとは思うけど──
模擬戦で現役高ランク冒険者を倒す事を念頭に入れておかないとトップとか無理だろうなと思っている。倒せるかわからないけど……。
師匠曰く、僕が『アイギス』を使わずに本気で防げばBランクまでは問題ないと言っていたから案外なんとかなるかもしれない。Aランク以上は試してみないとわからないかな?
まぁ、母さんより強いって事はないだろう……。
「なら私も受けますね。ユーリも受けるみたいですし」
「え? ダメだよ。高ランク冒険者との模擬戦でしょ? たぶんBからAランクの人達だと思うから後衛職だと大怪我するかもよ? 僕はフィアが傷付く所見たくないなぁ……一応、テントの方で回復魔法とかで加点貰えるだろうし、そっちで頑張らない?」
な・に・よ・りッ! ライバルが増えるじゃないか!
「ロイ君……その顔は半分嘘ですね?」
うぐ……鋭い……というか僕ってそんなに顔に出ているのだろうか? もしかして僕のポーカーフェイスって、エロい時だけしか出来ていない?!
「いやいや、嘘じゃないよ! 白くて綺麗な肌が傷付くのは僕が許さない!」
「うふふ、じゃあ模擬戦はやめておく代わりに──私がこの試験で試験官に一撃でも当てれたら……ここもマッサージしてほしいです。ダメなら模擬戦に参加します」
「……わ、わかった……」
「うふふ、必ずですよ? 本気出してきますね?」
「……はい」
ルンルン気分で試験を受けに行くフィア。
本気か……何気にフィアが本気で戦うのは見た事がないな……なんせ回復役と援護が基本だし。
それより、軽はずみに約束してしまった方が問題だ。マッサージのこことはおっぱいの事だ。
ここに到着するまでの道中でもしつこく──
『ここを揉んで頂けたら──もっと気持ち良くなる気がするんです……』
──と、けっこうな頻度で言われていた気がする。断りまくってたけど……。
まだ10歳──いや、11歳になったんだったな。それなのに僕のせいで性に目覚めさせてしまったようだ。凄い罪悪感だ……。
確かにこの世界は早熟だ。婚期もかなり早い。
だけど、早すぎね?
前世なら小学生だよ?!
知ってるか? 大人から見たらまだそこまでフィアのお胸様は大きく見えてないだろうけど──
同年代の視点で見ると凄く大きく見えるんだぜ?
歩く度に『ゆさゆさ』と揺れるノーブラおっぱいの破壊力は僕の鉄壁である精神を壊しに来るッ!
しかし……まさか、こんな形で逃げ道を塞いでくるとは……。
是非、あの試験官の先生に頑張ってもらいたい……僕の理性を守る為に。
そして、仮に責任を取れと言われたら取る所存だ。むしろ取らせてほしいッ! こんな可愛い彼女なら大歓迎だッ!
おっと、妄想している間にフィアは準備を完了したようだ。
「では──開始する」
「はい、いきますッ!」
フィアの試験が開始された。武器はモーニングスターだ。
このモーニングスターはシャーリーさんのお古と聞いている。
実はこれも魔道具だ。
普段は藍色の水晶がモチーフの杖だけど、魔力を込めると水晶と棒の接続部分から魔力で出来た鎖で伸びるようになり、水晶部分は刺々しい鉄球に変わる。
それを開始と共にぶん投げながら距離を保っている。
攻撃をしない先生もお淑やかそうに見えるフィアからガンガン投げ続けられる鉄球を見て頬を引き攣らせている。
まぁ、でも当たる事はなさそうだ。
先生はやはり相当強い。というか木剣でよく捌けるなぁ、と思う。
木剣に魔力を纏わせているように見えるけど、よく壊れないな……。
木に魔力を纏わせるのって実はかなり困難だったりする。少し制御をミスると簡単に破損した記憶がある。
まぁ、でもこれだけ技術のある先生なら一撃を受ける事はないはず。僕の安全は保たれているようなものだ──
そう思ってた時期が僕にもありました!
中々当たらない攻撃に痺れを切らしたフィアは鎖部分を魔力で操作して先生の腕を絡みとる事に成功する。
そこから、先生を鎖で
空高く鉄球を飛ばし──
『光魔法』を付与させる。
それだけではない──鉄球を大きくして落とす。
「──【
その言葉と共に光輝く刺々の鉄球が重力の力を借りて凄まじい勢いで落ちてくる。
顔だけ出ている先生は更に顔を引き攣らせながら空を見る。
僕もかなり頬がぴくぴくしている。
一つ言えるのは──先生は油断してたと思う。あまりに必死なフィアの姿に手を緩めたのだ。
ここまで戦えるフィアの姿にシャーリーさんを重ねる。
もしかして……おっぱいを揉んでほしいが為に覚醒でもしたのだろうか?
フィアは僕の方を見ながら鉄球を振り落とし──
「私の為に──散りなさい──」
──そう言う。
まるで漫画やアニメのワンシーンのように背後にどでかい鉄球が落ち──
クレーターを作り、砂埃が舞う。
フィアはこちらを花が咲いたような笑みを浮かべながら見ていた──
これは余談だけど、鉄球が地面に衝突した際におっぱいがブルルルルンッ、と震えていた。
僕からすると全てを差し置いてこっちが優勝だ。この一年で魔法だけじゃなく──
──おっぱいもより成長しているッ!
しかし、僕だけじゃなくて今周りにいる先生と受験生はこの光景を見て唖然としてるよ?!
確かこれ──職種別試験であって、模擬戦じゃないよね!?
そこら辺の前衛より強い自衛だよ!?
──ん?
砂埃が晴れてくると鉄球の上に姿が見える。
「──あー危ない危ない……とんでもない後衛もいたもんだ……今年は優秀な子が多いな。試験は終わりだ。だけど、模擬戦は止めておいた方がいいかな。テントで職業別試験は受けるかい?」
涼しい顔をした先生は無傷で鉄球の上に乗っていた。
絡め取られていた鎖を引きちぎり、当たる瞬間に飛び移ったのだろう。やはりこの先生、強いな。
でもお陰で僕の理性は守られそうです!
「……はい……」
……フィアさんや、そんな残念そうな顔しないでくれませんかね……僕の心が痛いです。
「フィア──「ロイ君」──何かな?」
僕は声をかける。おっぱいは無理だけどちゃんとマッサージはしてあげる──そう言おうとするとフィアの言葉が被せられる。
「……魔力切れです……本気を出しすぎたみたいです……回復して下さい。それと疲労が強いので帰ったらマッサージもお願いしますね?」
──え゛?!
フィア……ただでは転ばぬとは……恐ろしい子──
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