第65話 なんかピンッと来た!?

「ちょっと待ちなさいよ!」


 ユーリが後ろから走って追いついてきた。


「あぁ、ごめんごめん。ムカついてすっかり忘れてたよ」


 腹が立って置いてきてしまったので素直に謝る。


「別にいいわ。私もムカついたから! よくやったわね! それにしてもよく大賢者様が作った魔道具を普通に壊したわね……」


 おぉ、褒められた。ユーリの刺々しい感じが少しマシだ!


 やはり時間が解決してくれそうだな! なんかフレンドリーな気がする!


 大事な事だから言っておくけど、決して僕はボッチではない。それに近い環境だったけどね!


 でも、これが友達って奴だよね!?


 うんうん、きっとそうだッ!


 レラとフィアしか友達いないから、よくわからないけど!



「そういえば、あの先生も大賢者様が作ったとか言ってたな……」


「そうよ。あれは間違いなく大賢者様が作っているはずよ。なんせ弟子のがそう言ってたし。今回の試験用にあの水晶と次の『魔法やスキルを使った攻撃試験』の的を作ったって聞いてるわ。かなり頑丈に作ってるって聞いてるのに凄いわね……」


 ユラさんて大賢者様の弟子だったのね……なんか世の中狭くない?


 その内出会ったりして……。


 そんな事を考えているとロロから話しかけられる。


「ねぇねぇ、皇帝カイザーの魔力量おかしくない? 竜人の僕を軽く超えてるんだけど? しかも『威圧』スキル使ったにしては圧が強すぎだよ?」


 ロロは不思議そうな目で僕を見ながら声をかけてくる。


「魔力量だけは自信があるからねッ! おそらくこの世界で1番魔力が多いッ!」


 魔素が尽きない限り回復し続ける僕は世界そのものだろう!


 それよりも……『威圧』スキル? そんなの持ってないはずなんだけど──


 ──って、スキルを確認したら習得してるし!?


 ……なるほど……それで皆が座り込んだり、先生が失禁してたのか……。


 圧が普通より強いという事は──やっぱり魔力が鍵なんだろうな。


 もしかして『威圧』スキルって魔力を放出するのが習得条件なのかな?


 まぁスキルは色々と持っていた方が便利だしいいでしょッ!


 それに丁度良かったかも。レラやフィアの事をまた言って来たら『威圧』を使って徹底的にやった方がいいかもしれないしね!


 魔力ガンガン使えば制圧とかも出来そうだなッ!


 このまま自重しないってのもありかも!


 ラノベじゃ、そんなのよくあるもんね!


 よしッ! 母さん達を見習おうッ!


 試験も自重無しでガンガン行こうッ!



「さすが皇帝カイザーッ!」


 ……それよりも、そろそろ皇帝カイザーと言わないように口止めしておこう。


「ロロ、前も言ったけど、僕の名前は皇帝カイザーじゃない。僕にはロイドという名前があるんだぞ?」


 念押しもしたし大丈夫だろう──


「了解です、皇帝カイザーッ!」


 ──こいつ……話を聞いちゃぁいねぇな!


 ロロの頭はポンコツなのか!?



 そんなやり取りをしていると受験生を誘導している在校生らしき人に声をかけられる。


「君達──こっちに並んでくれるかな? 次はあっちで的を攻撃してもらう試験だよ」


「「「はーい」」」


 僕達は促されるままに進んでいくと、前世の射的場とかにあるような的が少し離れた所と手前に置いてあった。


 そこへ受験生は魔法やスキルを使って攻撃している。


 なるほど。


 遠距離、近距離どちらでも良いから的を攻撃すればいいだけか……。


 簡単だな。


 誰一人壊してはないけど──


 別に壊してしまっても構わんだろ?


 ふっふっふ、一回言ってみたかったんだよね〜。ついにテンプレがやってきたな!



「えーっと、君達の用紙を見せてくれるかな?」


 僕達は測定結果などの情報が書かれた用紙を声をかけてきた試験官の先生に渡す。


「ふむふむ、以外は全員、的の当たる距離で攻撃してくれ。当たるとあそこにあるボードに点数が表示される。魔法でも武器でも使っていいから自分の中で1番強力な攻撃をしてくれ。ちなみに魔道具の使用は認めていないから使ったらダメだよ?」


 へぇ、別の場所に点数が表示されるのかぁ。


 なんかゲームみたいだな。


「「「はーい」」」


 以外が返事をして的の前に移動する。


「僕はどうしたら?」


 僕だけ残るように言われたけど、他で何かやるのだろうか?


「あー、君は盾使いだろ? 特筆するスキルも無いようだし、してあげよう。盾使いでまともな点数を出せる子供はいないからね。やるだけ無駄だよ」


 えぇ!?


「ちょ、ちょっと待ってください! 免除された場合の評価ってどうなってるんですか?!」


「心配しなくても大丈夫。次の職業別試験で加点されるようになっているから。今年は非戦闘職の人も多いから採点基準が見直されたんだよ。だから安心しなさい」


 なんだってぇーッ! それは困るッ!


 受けなかった場合って点数下がるんじゃ……。


「ちなみにあれを破壊して、職別の試験を満点合格するのと、職別の試験で加点されて満点合格するのではどちらが点数高いですか?」


「そりゃー、両方満点の方が評価は高いぞ? まぁ、無理だろうけどね……あれ元Bランク冒険者の俺でも渾身の一撃でなんとか80点とかだったし……」


 先生は元Bランク冒険者なのか。それでも破壊できないって、どんだけ頑丈なんだよ。


 しかし、なんとしても試験は受けるッ!


 僕はトップ合格しなくちゃいけないんだぞ!?


 まさかそんな採点基準になっているとは……今までは冒険者学園だからこそ非戦闘職の人が少なかったんだろう。今年は色々な分野から人が集まっているから基準が変わったんだな……。


「では、僕はこの試験を受けさせて頂きます」


「話聞いてたか? これ受けると職別試験で加点が貰えんぞ? いいのか?」


「構いませんッ!」


「しかしなぁ〜」


 いいから受けさせて!


「何を揉めておるんじゃ?」


 僕と試験官が問答を続けていると、お婆さんの声が聞こえてきた。


「──!? これはこれはクレア様。いえ、盾使いの子が的当てをしたいと……」


 声のする方向を見ると皺くちゃのお婆さんがいた。


 僕は一目見てピンッ、と来た──

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