第62話 入学試験開始!?

 僕達は冒険者学園の受付に到着すると、まずは筆記試験だと告げられる。


 新しい校舎の教室に僕達は指定された部屋と席に座る。


 受付順ではなさそうだ。おそらくカンニング防止の為、全員がバラバラの席にいるのだろう。


 しばらくすると席が埋まり、大人の人が何人も入ってきてプリントを配布していく。


 おそらく試験官を務める先生だろう。


 そして、筋骨隆々のスキンヘッドのいかつい人が前に立つと話し出す──


「全員揃ったな? それでは筆記試験を開始する前に簡単に説明しておく。通常であれば基礎科目の他、冒険者に必要な知識の問題だけだが──今年からは魔法、スキル、作法などの問題も足され、例年よりも更に難しくなっている。カンニングをした奴は俺らが見つけ次第──不合格だ。では問題用紙も行き届いたな。制限時間は今から60分だ。開始──」


 全員が問題を解き始める──


 僕も問題用紙を確認しながら解いていく。


 一般常識や計算問題は普通に小学生レベルだし、問題無い。


 他の問題も──


[常時依頼とは何か?]


[薬草はどれか?]


[魔法の基本属性を答えなさい]


[『剣術』スキルを習得するにはどうすればいいのか?]


 ──などの簡単な問題が多い。


 特に詰まる事なく解いていく。これならレラも問題はないだろう。


 だけど予想外の問題に頭を悩ませた。


 まさかが入ってるとは……。そんなもん習ってないから知らないよ!


 これはもう前世の記憶に頼る事にした。一緒ならいいなぁ、と思いつつ最後の問題を見ると更に頭を悩ませる。


[スキルとは何か? 何故レベルがあるのか? 同じレベルで効果が違うのは何故か?]


 そんなもん知らんわッ! と机を叩きたくなったけど、とりあえず僕の思ってる内容をそのまま書く事にした。


 これがラノベのテンプレなら未だ解き明かされていない問題を出しているはずだ。なので適当でも問題ないだろう。


 僕の中でスキルはだ。この才能がなければスキルを習得するのがになる。でも習得出来ないわけじゃない。努力次第で習得は可能だが、極める事は難しいのかもしれない。



 そうでなければゲームのように決められた職業のスキルしか習得出来なくなるし、僕には才能が無い『剣術』『火魔法』『回復魔法』などのスキルを習得出来るわけがない。


『感度操作』の【性感度】で僕は他の人よりもハードルが低いだけだと予想出来る。


 そして、この間疑問に思ったレベル表示があるスキルはあくまで扱い方が上手くなったり、やり方がわかる程度だろうと予想している。


 何故なら僕と師匠では『盾術』のレベルはそんなに変わらない。


 だけど、扱いに差が出ているという事は──ここに他のスキルの関係性やも関係している気がする。


 そもそも、レベルの意味がわからない。正直、『火魔法』を習得した時点で僕は火をそれなりにし……。


 それと上位スキルや特殊スキルに昇華すれば更に専門性が高まって次の段階にいける。


 そして、他のスキルを併用して使う事も重要になってくる。


 確か流派の違いはスキルの使い方だと師匠が最初の頃に言っていた。


 これによって個人差が出てくるのかもしれない──


 その辺の事を簡単に書く事にした。



 周りを見渡すと全員が頭を抱えている。


 おそらく最後の問題が難しいのだろう。



 時間もまだあるし、もう少し考えようと思う。



 この世界にはラノベとかでよくある『無属性魔法』というのは僕が調べた限りは存在していない。


 まだ試していないけど──属性の乗っていない魔力弾、身体強化、魔法の威力強化など──全て魔力が使えれば出来る現象のように思う。


 ラノベとかの『無属性魔法』というのは主にを上手く使えば出来る事が多い気がする。


 これは仮説にはなるけど──


『無属性魔法』=『魔力操作』


 に当てはめるなら、これが僕の中で1番可能性が高いと思っている。



『無属性』という定義で言えば──


 どの属性にも当てはまらない属性という可能性もあるし、逆に基本属性という可能性もある。


 これは何故か?


 確かエレノアさんを『鑑定』した時にと表示された記憶があるからだ。


 つまり、前者でいくならエレノアさんはどの属性にも適さない精霊という事になる。


 だけど、他の属性精霊がエレノアさんの中に入っていたのは、統べる能力があるからだと予想しているから後者にもあてはまる。


 もちろん、全てを属性という可能性もあるかもしれないけど、今の所は聞いた事がない。ただ、そんな異次元な魔法があるとするなら『無属性魔法』はそれに当てはまるのかもしれない。



 まとめると──


『無属性魔法』は『魔力操作』の可能性が高い。


『無属性』という枠で考えた時は『どの属性にも当てはまらない』や『全属性』や『無に返す』という可能性が高いという事だ。


 話が逸れてしまったけど、今回の問題はスキルの事だ。


 つまり、『魔力操作』を極めていけばスキルとは関係無しに能力が向上していくだろうという事だ。


 僕が基本属性の『火魔法』をレベル1でもそれなりに扱えたのはその可能性があるからだと推測する。


 それに師匠が使っていた【盾反射シールドリフレクション】も魔力を使っている。この使い方が更にスキルの扱い方を変える。


 スキルを上手く使うには基礎を鍛えた上で、他のスキルの組み合わせを行い独自性を出す。そして、『魔力操作』により更に精度を高めるという流れが1番の近道だろう。


 スキルレベルは人がようにする為のシステムみたいなように感じてしまうな……。


 まぁ、でもこの世界は。可能性は無限大だ。



 それらも簡単に付け足していると──


「──終わりだ。次は実技試験だ。各々空いてる所から順番に受けていくように」


 書ききる前に終わりが告げられる。


 書ききれなかった事は残念だけど、ここまで書いてたら問題ないはず。



 僕は教室を出ると皆が待っていたので合流する。


「どうだった?」


「まぁまぁかな……」


 レラは自信が無いようだ。まぁ、実技で挽回出来るだろう。


「最後の問題以外は……」


「確かに、あんな問題が基礎学園で出題されるとは……今も明確な答えが無い問題ですね……」


 フィアとユーリも最後の問題が不安のようだ。


 だけど、僕の予想は当たったようだ。基礎学園とは11歳から通える学園の事だろう。最後の問題は確かに10歳が解けるような問題ではない。


 まぁ、だからこそ──こういう問題は仮説に近い答えや斬新な答えを出せば大丈夫だと思っている。



「余裕です!」


 ロロって馬鹿そうに見えるのに勉強とか出来るのか……。


「まぁ、こんなものでしょう」


「そうですね」


 ユフィー様とサラさんは問題なさそうだ。



「そういうロイは?」


「ん、あぁ、特に問題はないかな? 作法はさすがに習ってないから適当に書いたけどね」


「だよね……何で作法なんかがあるのよ!」


 まぁ、それはあれだろうね……王侯貴族が入ってくるから必須になったんじゃないかな?


「仕方ないですわ。今年は貴族院に本来行く人がこちらに流れてきたからでしょう。授業では必須ではないと聞いていますからそこまで気にしなくて良いと思います」


 ユフィー様の言葉でレラは安心する。


 ちなみに僕もそれを聞いてホッとした。大量の貴族と並んで授業とか受けるの嫌だしね!


「さぁ、他の方も移動していますし、そろそろ行きましょう」


 フィアの掛け声で僕達は移動する──


 どうやら、実技試験は前世でいう体育館や運動場でやるみたいだ。


 全員が体育館の方へ向かっている。


「そうだね。さぁ向かおう」



 僕達は体育館みたいな所に入ると、在校生らしき人に一枚の紙を渡され──


「これを持って試験を順番に回って下さい」


 ──と言われた。なんか書き込む欄があって身体測定みたいだ。


 中を見渡すと受験生がその紙を渡して水晶や水鏡に手を当てたり、何やら問診されている人達がいた。


「あれって何やってるんだ?」


「あれは──魔力量を調べる水晶と魔法属性を調べる水鏡ですね。あそこの人は鑑定士っぽいです……おそらくスキルの確認を行なっているようですね」


 ロロの疑問の声にユーリが答える。


 なるほど、先にここで基本能力を計測してから運動場の方で実技的な試験を行う流れなのだろう。


 僕達は順番待ちをしていると──


「おいっ、あそこにがいるぜ」


「全くけがらわしい」



 そんな声が聞こえてきた──




 ◆




 会場に着いて並ぶと私や他の半端者に向けて悪態をつく人達がいる事に気付く。半端者は銀髪や紅い瞳が多いから直ぐにわかる。


 私は悪意のこもった言葉を聞き、少し目を伏せる。


 やっぱり、私みたいな半端者はどこに行っても差別を受けるのかな……。


 そう思っていると──


「レラ、気にしなくていいよ。どうせあいつらは口だけで大した事はない。僕達がいるから大丈夫だよ」


 ロイが笑顔でそう言ってくれる。


 続いて──


「そうです。実力にハーフだからとか関係ありませんよ」


 フィア──


「そうだぜ! 僕がボコってきてやるよッ!」


 ロロ──


「所詮は温室育ちの甘ちゃんですからね。気にするだけ無駄です」


 ユーリ──


「我が国の貴族じゃなくて良かったですわ。とんだ恥晒しです」


 ユフィー様──


「全くです。レラ殿、貴族もあのような輩ばかりじゃありませんので気にしないで下さい。一部の馬鹿共は未だに血統重視なだけですので」


 サラさん──


 ──の順で便乗して私を勇気付けてくれる。


「う、うん……ありがと……」


 私は顔が熱くなる。きっと顔が真っ赤になっている気がする。


 今まで友達は少なかったから本当に嬉しい。


 しかも、ここに来て友達が増えた。


 その人達が私の為に優しい言葉をくれる。


 友達って──


 とても良いなぁ……。


「レラに落ち込んでる顔は似合わないよ。ほら、いつもみたいに元気に行こうッ!」


 俯き、涙が溢れそうな私にロイが頭をポンポンっと軽く叩きながら茶化すように言ってくれる。


 ロイを見ると「僕がなんとでもするから」と言わんばかりだった。


 頼りたい──だけどこれはこの先私が冒険者としてやっていく時にも乗り越えないとダメな事。


 それに皆を心配させてばっかりじゃダメッ!


「──むっ、私は元気よッ!」


 そんな事を言いながら強がって──


「ぶふぇ──」


 拳を振り抜くと鳩尾みぞおちに直撃し、ロイの間抜けな声が聞こえてきた。


 あれ? いつもなら平気そうな顔するのに?


「ご、ご、こめん──「次の人〜」──あ、はい」


 謝ろうとすると私の順番がやってくる。


「い、いいんだ……さぁ、順番だよ。入学試験でレラの凄い所を証明しようッ!」


 ロイは私の背中を押して、行くように促してくれたる。


 私も気持ちで負けてられないわッ!


 ロイと同じく──


 トップを狙う勢いでやってやるんだからッ!

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