第63話 派手と言えば派手!?
「さすが、ロイ君ですね。いつものレラに戻りましたよ?」
フィアが僕を褒めてくれる。
「そうだね……」
この大人でも悶絶しそうな威力の攻撃でよくダウンしなかったと自分を褒めてやりたい。【痛覚】のレベル下げとけば良かった……。
「さて、私も順番が来たみたいなので、後ほど──」
フィアが問診の場所に向かうと次々と呼ばれる。そして、最後尾にいる僕だけがその場に残る。
最後にいるのは意図的だ。僕はトップを目指す為に目立たなければならないけど、別に生徒の前で目立たなければならないわけじゃない。先生の前でだけで十分だからね。
それにしても……全く、ハーフやクウォーターの認識が酷すぎるだろ……。何でこんなに毛嫌いする人が多いんだろうか?
別に何も悪い事してないんだからいいじゃないか。
この感じだと、入学してからも一悶着ありそうだな。
さてと──
あまり覗き見はよくないと聞いているけど、どんなスキルを持っている人達が受験するのか気になるし──片っ端から『鑑定』を使ってみるか……。
まずはあいつらだな。
レラや他のハーフ達に向けて悪態をつく貴族を『鑑定』してみるが──そこまで特筆するようなスキルは持っていない。
だけど、他の人をこうやって見ているとユニークスキルや特殊スキル持ちがたくさんいる。
今年が豊富というのも頷ける。
特にあの獣人の女の子──
おそらく、構成から近接戦闘が得意なのだと予想出来る。とてもスキル構成が充実している。
スキルだけを見るならレラと良い勝負かもしれない。
というか、この子は入学受付の時、僕に対して獲物を見る目をしていた子だな……。
しかし、『剣の極み』『魔導の極み』に続いて──
──『拳の極み』か……。
この子も『極み系』のスキル持ちか……。
その内、魔王退治に駆り出されたりして?
おっと、またガン見されてしまった……バレたかな?
──ん?
あそこの貴族っぽい女の子も『剣の極み』を持ってるぞ?
同じ学園に2人もいるの??
んん?
その隣の人は『魔導の極み』?
こっちもかユーリに続いて2人目?
更に隣の女の子はユニークスキル『復元』か……見た目的に教会の服装だからこちらは聖女候補かな?
本当、なにこれ?
フィアは聖女候補から降りているけど、もし降りてなかったら定番の勇者パーティの卵が2人ずついるんだけど?!
「はい、次の方〜」
「あ、はい! いきます!」
なんか嫌な予感しかしないけど、とりあえず今は試験だな。
呼ばれたので中に入ると個人情報を守る為か仕切りがしており、目の前には先生らしき人が1人いた。
スキルは基本的に自分以外には教えない。
リスクが高いからだ。人によったら利用する人も出てくるし、戦闘になれば手が読まれる恐れがある。
出来ればこういう場所でも極力教えたくはない。
教員から情報が漏れる可能性は『契約』スキルを使用されているから低いと母さん達が言っていたけど、それでもどこかで情報が漏れる可能性が高い。
何故なら既に『開花の儀』で漏れているからだ。
学園内でも今後、そういう探りを入れてくる貴族もいるかもしれないから気を付けないとダメだ。
まぁ、その為に『隠蔽』と『詐称』スキルを使っているわけなんだけどね。
「はい、その用紙を渡して下さい。では、そこに座って──この紙に触れて下さい。これは『鑑定用紙』ですので」
「わかりました──」
女性教員の言われるままに入口で貰った用紙を渡し、目の前に座った後──用意された紙に触れる。
すると、紙に文字が羅列していく。
うんうん、ちゃんと『隠蔽』と『詐称』スキルが仕事してくれているな。
「……この年にしてはスキルが凄く多いですね……ユニークスキルは無しっと。構成的に盾使いでしょうか?」
スキルが多い事に一瞬驚くもユニークスキルが無いと確認すると残念そうにしてた。やはり、ユニークスキルはかなり重要なのだろう事が予想される。
ちなみに渡した紙にはユニークスキル無し、細かいスキルは書かれていないが、構成は盾使いと記載されていた。
「そうですね。僕は盾使いです」
「わかりました。ここはこれで終わりになります。盾使いには少し厳しいかもしれませんが、この後直ぐに『魔力量測定検査』、『魔法適性検査』を行い、外で『スキルや魔力を使った攻撃試験』、『職種別試験』、『現役の冒険者による模擬戦』がありますので頑張って下さい。この鑑定用紙は今処分しておきます」
「はい」
僕は返事をして席をたつ。鑑定用紙がその場で処分されたのを確認してから次の場所へと向かう。
確かに通常の盾使いであれば『職種別試験』以外はかなり厳しいだろうな──
普通ならね。
僕には問題ない試験ばかりだ。
約束通り──
──派手にいきますかね!
表に出ると──
「あれ? 皆いない?」
既に誰もいなかった。
「そこの君、こっちが空いてますよ〜」
「あ、はい」
どうやら、皆は既に呼ばれて先に進んでいるみたいだった。僕も『魔法適性検査』の場所に呼ばれたので向かう。
どうやら仕切りがあるのはスキル鑑定の場所だけのようだ。周りを見渡すと──
ユーリは全属性適性みたいで注目の的になっていた。
ユーリやるじゃないか! さすが大賢者の再来だ!
僕も既に基本属性は『火魔法』が使えるんだッ!
何かしら反応があるはずだッ!
ちなみに『回復魔法』や『生活魔法』はこの検査ではわからないと聞いている。
というか、『生活魔法』はほとんどの人が練習すれば使える魔法だからね!
「では、ここでは魔法適性を調べるから、この水鏡に向けて手を当ててくれるか?」
「はーい」
ここではそんなに派手にいかなくて構わない。
とりあえず適性があれば問題ない──
「「…………」」
水鏡には何の反応も起こらず、僕と教員のおっちゃんは無言になる。
いや、『火魔法』は温度が変わるはず。
教員のおっちゃんは水鏡の中に手を入れ、僕に向けて一言告げる──
「まぁ、魔法だけが全てじゃないさ……」
は?
そういうのいりませんけど!? 哀れみの視線やめてくれません!?
「温度変わってませんでした?」
「変わってないな……まぁ数十年に……ひと──げふんげふん、ごく稀に適性無しの人もいるから……今年は豊富だから無いと思ってたんだけどな……」
今、数十年に1人って言いかけただろ!
「いやいや、僕『火魔法』使えますよ!? それおかしいんじゃないですかね!?」
無能判定やめてくれませんかねぇ!?
「いや、これ見てみろ。ちゃんと属性判別しているぞ?」
おっちゃんが手を当てると不純物が出来て、水の水量が増えていた。土と水の属性だ。
「おかしいですね……僕は『火魔法』使えるんですよ? さっき鑑定用紙にそう書かれてましたって!」
「そう言われてもな……実際に反応がねぇしな……夢でも見たんじゃねぇか?」
「……『火球』──どうですか!?」
論より証拠だッ!
僕は『火球』を出してドヤ顔する。
「あぁ、生活魔法の『着火』だろ? たまにいるんだよ。生活魔法を属性魔法と勘違いしてる奴がさ。多少は大きさも変えられるからな……」
な、なんだと……僕は勘違い野郎だと思われている?
誤解を解かねば!?
「……ぬおぉぉぉぉぉッ!」
僕はもう一度水鏡に触れ、今度は魔力をガンガン込めていく──
「……気合いは認めるし、魔力量は大したものだが……何の反応も無い……諦めろ……」
「……はい……」
僕は項垂れてその場を後にした──
絶対おかしいってッ!
◆
私は大賢者の再来と言われている。基本属性は全て習得している。
だから今回の適性検査は当然の結果。
私は凄いのよ?
「全属性は君で5人目ですね」
「え? まさか、私以外に4人も!?」
「そうです。今年は本当に豊富です。先が楽しみな子ばかりです」
お母さんが「全属性の人は他にもいるし、世界は広いんだから慢心したらダメよ?」と口を酸っぱくして言われてたけど、まさか同世代で私を含めて5人もいるなんて……。
大人でさえ、私は大賢者様とお母さんしか知らない。
学園じゃ気合いを入れないとダメね。
私はふと視線を見渡す──
レラとロロ、スフィア様が属性検査を受けていた。
レラは火、光、風の3属性。
ロロは風と──氷? まさか私の習得していない上位属性の才能があるなんて……。
スフィア様は──
へっ? 2属性!? 光しかなかったはずなのに火が増えてる!?
どういう事なのよ!?
基本属性って増えるの!?
困惑しているとロイドが入ってきた。
相変わらずへらへら笑ってムカつくわね。
ロイドは水鏡に手を当てるが、何の反応も示さなかった。
ふん、やっぱり大した事ないわね。まぁ盾使いだし、そんなものでしょ。
何やら火を出してるけど、生活魔法と言われているみたいね。
『火属性』があるなんて見栄を張ってたけど『着火』を属性魔法と勘違いしているとは……。
哀れな……。
何を思ったかロイドは再度、水鏡に手を当てる。
今度は魔力を込めているみたいね。
さすがに魔力量は凄いわね……。
今の放出量で既に私を超えてるわ……。
ただ、いくら魔力を込めても適性試験に変化はない──
──!?
私の特殊スキルである『精霊視』に微精霊が写り、続々と集まり続けている。
この状況に気付いている人は私以外にいない!?
あそこまでの微精霊に好かれるなんて異常だわ。
つまり、ロイドは『精霊魔法』の適正がある事になる。
やっぱり、世界は広いわね……。
負けてられないわ──
次の『魔力量測定検査』じゃ本気出すッ!
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