第61話 何してるんですかねぇ!?

 ぶっちゃけ──この王女様は何を言っているんだと心底思った。そもそも、婚約者がいるのに婚約者のフリっておかしいでしょ!


 って事で、とりあえず話を聞く事にした。


 まぁ、要約すると──


 生まれた時から婚約者が決められていたそうで、それも王族の定めだと思って諦めていた。


 だけど、最近見た書物では自由恋愛や婚約破棄系の話について書かれていたらしい。元々、その婚約者は自己中心的で合わないと思っていた事もあり、書物の影響を受けて自分も思いやりのある素敵な男性と恋をしたいと婚約破棄がしたくなったそうだ。


 婚約破棄する理由が酷すぎてドン引きした……この王女様の頭の中、腐ってない?


 一応、国王様もアレクさんからの情報がきっかけで可愛い娘の為に婚約破棄の申し入れをしたが、相手側がユフィー様に惚れているらしく諦めていないそうだ。


 一応、ユフィー様側は婚約破棄はしていると思っているが──相手側は破棄の話を無かった事にしているらしい……。


 それでこんな意味のわからない状況になっているのかと納得は一応した。


 そして、アレクさんの情報とは僕の事だ。


 婚約破棄を申し込む前にちょうど良く僕の話が上がり、白羽の矢が当たったらしい。


 僕が婚約者のフリをする事で諦めさせるのが狙いらしい……。


 この爺いアレクが僕のスキル情報を言わなかったのはわかったけど、僕の存在を国王様に知らせた事により起こった案件なのはよくわかった。僕の知らない内にね! 


 何勝手に話を進めてくれてるんですかねぇ!?


 限界ギリギリの枚数で盾刃シールドカッターを放ちたくて仕方なかったのは言うまでもないだろう。


 ここで何故、僕なのか?


 これには母さんが関係している。母さんは昔、とある国に正面突破で一人乗り込んで王族を脅した事があるそうでほとんどの国が母さんには不可侵と聞いた。


 母さん……何してんのさ……。


 まぁ、そんなこんなで元婚約者の国と関係を悪くしたくない王様は『双聖』がバックにいると思わせたいというのが狙いだろう……。


 いくら娘の為とはいえ、他人頼りで婚約破棄って…… 国王様も頭悪いのか?? しかも婚約破棄した時点で印象悪すぎだろ!


 正直、こんな案件に巻き込まないでほしいと心底思って断ろうとしたら、フィアとレラはユフィー様の心情も理解出来るらしく、結局言い寄られた場合は僕がなんとかする事になってしまった。


 好きな人と一緒になりたいという気持ちは──まぁわかる。今回はその肝心の好きな人がいないけどねッ!


 ちなみに偽婚約者になって諦めさせるという話にはフィアとレラが猛反対し、偽婚約者の話はなくなったので心底ホッとした。


 とりあえず何が出来るかわからないけど、協力する代わりにユーリさんとロロにもアールスレイ王国の後ろ盾になるとアレクさんから言質を取った形で収まった。


 そもそも王族の婚約破棄って国際レベルの話じゃね? 僕に何が出来ると思ってんのさ!? ただの子供に何期待してんのさ!?


 この国大丈夫なの!?



 はぁ……僕にとって学園というのは鬼門のような気がしてきた。本当勘弁して下さい。



 まさか婚約破棄系のラノベの展開になるとは……しかもドン引きな理由で婚約破棄をさせる側になるとは夢にも思わなかったよ!


 波乱の学園生活にならないようにしないと……。



 ちなみにその書物を書いた作者って教会や貴族達にとったら害悪認定されているらしく基本的に出回っていないそうだ。


 そんな物をどこで発見したのやら……。


 話を聞くに前世でよくあるラノベっぽいラブコメ的なお話だっただけに害悪認定されてるのは謎だった。



「ちなみにですけど、その書物ってあります?」


「これです。作者の名前が暗号みたいなっていて読めないんですが、この印がある書物は全て発禁されています」


 そう言われてユフィー様から渡された書物の読めないという暗号を見ると──


「…………マジか……」


』とサインがで記載されていた。


 うわぁ……。

 太郎さん、あんた異世界で何やってんですかね……世界救ってたんじゃないの!?


 しかも、発禁指定受けてるじゃないですか……。


「……まさか読めるのですか!? おそらくこの印が著者のお名前らしいのです! この方は隠れファンから通称『T様』と呼ばれています! わかるなら教えて下さいませ! この方の書く物語は斬新で素晴らしいのですッ! 女性同士や男性同士で愛を育む物語とか凄いんですッ!」


 凄いんですッ! 凄いんですッ! 凄いんですッ! ──と、その言葉だけ声が大きく、何度も反響し、部屋に響き渡る。


 ユフィー様は太郎さんの他の物語も見ているのが今の発言でよくわかる。熱意も伝わってきた。


 そして、発禁指定されてるのもよくわかったよ!


 だから僕は──


「いや、ですね。不思議な文字ですよね〜」


 ──関係者じゃないととぼけた。


 転生者だと絶対知られてはならないと、この時──僕は誓った。


 確かに僕は太郎さんの作成した『アイギス』には大変感謝している。


 だけど故郷が同じという理由で同性愛者の感性の持ち主だと思われたくない。


 おそらく発禁されたのはそれが理由だろう。非生産的な影響を受けてしまう人を少なくする為の処置と予想出来る。


 だから僕は知らないふりをするし、転生者と明かさない。


 世の中には知らなくて良い世界もある。


 別に同性愛者が悪いという意味で言っているわけじゃない。


 世の中は広い。そういう人もいるだろう。


 ただ僕がその感覚を理解出来ないだけだ。僕は女性が大好きだから周りに変な勘違いをしてほしくないだけ。


 だから、僕は堂々と知らないふりをする。


 とりあえず、ユフィー様がその道に進まない事を切に願う。


 というか、太郎さん! 普通のラブコメとか恋愛物だけ書いておいてくれよ!


 ただでさえ、太郎さんの残した本で協力させられてお腹いっぱいなのに!



 とりあえず話は適当に流しておいた。残念そうにしていたけど、僕の平穏な生活の為だ。



 その後は──


 皆で遅くまでわいわい話をしながら過ごした。


 ユーリやロロも最終的にはユフィー様と打ち解けていた。


 そのままの流れで全員が高級宿に泊まる事になった。



 本当、今日は色々と疲れたよ……。




 ◇◇◇



 次の日の朝──



 僕は試験に向かう為の準備をしている。


 とりあえず──


 僕のスキルの確認だ!


 名前:ロイド


 性別:男


 一般スキル:『危機察知』『気配察知Lv9』『魔力察知Lv9』『痛覚耐性』『毒耐性』『威圧耐性』『回避』『アクロバティック』『盾術Lv9』【『隠蔽Lv10』】『魔法耐性』『刺突耐性』『打撃耐性』『気絶耐性』『魔力操作Lv9』『剣術Lv1』『魔力譲渡』『味音痴』『臭い耐性』『挑発』【『詐称』】[『アイテムボックス』]『生活魔法Lv3』『火魔法Lv1』


 上位スキル:『予測(極)』


 特殊スキル:『鑑定』『直感』【『絶頂』】『見切り』『無音』【『魅了』】【『精霊使役』】[『魔力盾』]『回復魔法Lv1』


 ユニークスキル:【『感度操作』】【『無限収納』】


 エクストラスキル:【『アイギス』】



 おぉ、『剣術』スキル以外はレベル9になってるね! それに『気絶耐性』も習得しているな……マッサージ中に意識をしっかり持てと思っていたから習得してたのだろう。たぶん!


『絶頂』スキルは母さんから貰ったアイテムは使ってないけど既に『隠蔽』済みだ!


 更にだッ!


 ここで暴露しておこうッ!


 ついに念願の魔法を習得したッ!


『火魔法』と『回復魔法』だ!


 フィアとレラのお陰だッ!


 それはマブダチののお陰でもあるッ!


 そして肝心のそのマブダチである『感度操作』は──


【視覚】6

【聴覚】1

【平衡感覚】3

【味覚】5

【臭覚】5

【表在感覚】

(【触覚】5【温度感】5【痛覚】5)

【深部感覚】

(【魔感度】6)

【性感度】2

【好感度】5

【直感】8

【感覚共有】



 うんうん、【視覚】【直感】【魔感度】の最大値が上がってるね!


 それと新しく【感覚共有】が追加されている。これぞ僕の新しい力だ!


 これは旅の途中でレラとフィアが『魔力操作』が上手く出来ないと相談されて試したら出来た!


 効果も単純で自分との感覚が共有出来るというものだ。


 指定する場合は相手にまず触れて自分のをしないといけない。


 これを使用しながら僕が『魔力操作』を行うと2人は見事に上達した。


 そして、その逆も試そうと魔法を使ってもらいながら使用すると時間はかかったけど、僕も魔法を習得する事が出来た!


 特に【性感度】大先生を使用するとスキルレベルが上昇しやすいし、新しいスキルをお互いに獲得しやすいというチート級の能力だ!


 僕には魔法の才能が無いせいか、レベルは1だけどね!


 ただ、これ使うと──


 凄くエロい雰囲気になる!


 耐えるのが大変だった記憶がある。


 なんせお互いに声を我慢して顔を真っ赤にしてたからね。レラなんて涙目が凄かったし、フィアは息遣いがエロかった!



 まぁ、そんな事より今日は入学試験だッ!


 頑張るぞ〜ッ!



 僕達は意気込みながら学園に到着すると──


「ロイきゅん、試験頑張ってね〜ッ!」


 学園の外からリリアさんの声が聞こえて来た。


 あぁ、案内人ってリリアさんだったんだな……。


 僕とフィア、レラは手を振りながら応える。


「試験内容の活躍はちゃんと報告しておくから安心してね♪」


 試験結果じゃなくて──試験内容なの?


 しかも報告されちゃうの? 母さんに?


 試験じゃなくて、母さんのプレッシャーに勝てるかどうかが今回の鍵のような気がするな……。

 

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