第60話 これが王女様か!?
「「おぉー」」
ホテルみたいな宿屋に到着すると僕とレラは感嘆の声を上げる。
フィアとユーリは見慣れている為か普通だ。ロロはまだ寝ている。
「おぉ、丁度迎えに行こうとしていた所ですぞ。では学園でご一緒になられる王女様の元へ行きますぞ!」
丁度良くアレクさんが宿から出てきた。
「え、嫌なんですけど?」
えぇ……やっぱり会うの?
「そこをなんとか! それに後ろ盾になる国の王族と面識を持っておけば学園で必ずや役に立ちます!」
「まぁ、それはそうなんだけどさ……」
後ろ盾になってくれるんだし、面識ぐらいはあった方が良いのは確かだ……。
だけど──
ラノベとかで会う王女様って大概、高飛車かお淑やかの両極端のような気がするしな……。
高飛車な我儘だったらどうしよ?
自然とお淑やかなフィアと高飛車なユーリの方を向いてしまう。
「何か失礼な事でも考えてたでしょ?」
ユーリは勘が鋭いのかもしれないな……。
「な、何もないよ? 本当だよ? 田舎から出てきた所だし、王女様の想像が出来ないからフィアみたいな感じなのかなって思ってたんだよ?」
2人を視界に収めて言っているから問題ないはず!
「ふふ、ロイ君は褒めるのが上手ですね?」
フィアは頬を赤く染めて照れる。
うおぉぉっ、なんとか誤魔化せた!
「学園で王族の後ろ盾さえあれば周りも一目置きます。ささ、参りますぞ! チェックインは既に済ませております」
一目置かれると目立つじゃないかッ!
そんな事を思いながら僕達は半ば強引に連れて行かれる。
豪華な扉の前に到着し、トントンッ、とアレクさんがノックをすると中から「入りなさい」と聞こえてくる。
声のトーンを聞いた感じ──
気が強そうな気がするぞ?
しかもね……なんか──
『危機察知』先生が働いてるんですけど!?
これ入ったら攻撃されるパターンなのでは?
【直感】先生達も「防御体勢を取らねば死ぬぞ」と言っている気がする。
「アレクさん」
「なんでしょうか? 早くお入りになって下さい。王女様はお待ちですぞ?」
「……仮にですよ? 仮に──攻撃されてしまった場合に反撃したら罪になりますか?」
この確認は必要だ。相手は王女様だからね……。
「ほほぅ。いいえ、今回はなりません」
なに納得した顔してんのさ! 絶対これ罠じゃん!
罪にならないと言質は取ったから後は無力化するか……さすがに王女様に反撃はしないけど……。
僕はいつでも魔力盾を出せるように魔力を込めてドアノブをガチャッ、と回して中に一歩踏み入れると──
部屋の奥に白いドレスを着た金色の髪の毛を腰までなびかせる少女の碧眼がこちらを見据えていた。
ちなみに胸は無いッ! ユーリはどちらかと言えば幼児体型だ。
この目の前の王女様こそ──まさに絶壁ッ!
「こんにちは──」
その人が挨拶を言いながら、とても良い笑顔で弓を構えている。
貫通力と言う意味ではロロの槍に匹敵しそうなぐらいの魔力が込められているな……。
これは──即興の盾では防ぐのは難しそうだ。
「……んあ?
「へ?」
いきなり起きたロロは背中から離れて前に立つ。
「ふふふ、では行きますよ〜!!! 噂の英雄の力を見せて下さいませッ!」
英雄って……僕がやった事って、街を守る為に盾を出して、魔物をトレインして中途半端に殲滅したぐらいなんだけど!?
というか宿の中でこんな試し方しないでくれませんかねぇ!?
絶壁って心の中で言ったの謝るからさ!
──って発射されたぁぁぁっ!
「──ロロ、邪魔だからどいて──【
僕はロロの服を引っ張り後ろに下げ、矢の進路方向に多重に盾を具現化させる。それと同時に矢が接触する。
矢は障害物がなかったかのようにどんどん貫いて行く──
うん、勢いは削げているけど確実にこっちにまで来るな。
本当は弾きたい。だけどこんな宿屋内で魔力の篭った矢を弾いたら被害が大きいかもしれない。
腕の盾に魔力を込めれるだけ込めておく──
最後の一枚が貫通したと同時に僕は腕の盾を前に出すが、それすらも貫いて来た。
そして、矢は僕に当たる寸前で止める事に成功する。
「ふぅ……──って、まだ?! 横かっ!? ──【
横から剣を横薙ぎに斬ろうとしている女の子が迫る。
中々速い──
だけど、その程度ならなんとでもなるッ!
「きゃっ」
僕は盾を使ってぶん殴る事に成功し、女の子をそのまま部屋の壁までぶっ飛ばす事に成功する。
シーンッ、としばらく沈黙した後にパチパチッ、と王女様が拍手をしてきた。
どうやら茶番は終わりのようだ。
被害は壁だけで済んでホッとしたよ。少し穴が空いてる気がするけど王女様なら修理代ぐらい大丈夫だろう。
「えっと、とりあえず終わりで良いですか?」
「さすがですわ! 噂通りです! 本当に盾を使わせたら右に出る者はいないとアレクが言っていた通りですわ!」
いやいや、ちょっと特殊な盾の使い方してるけど師匠とかの方が全然凄いと思うよ?
あの技術だけはスキルレベルが上がっても中々真似できないからね……スキルレベルっていったいなんなんだろ?
確かに盾の扱い方は上手くなっているんだけど、同じスキルレベルでも絶対に技量が同じじゃない気がする。経験の差もあるんだろうな……。
「うぅ……まさか盾をあのように使うとは……」
盾で吹っ飛ばした女の子が起き上がるとアレクさんが近寄っていく。
「全く、情けない……しっかり相手を見よといつも言っておろう……」
「お爺ちゃん……あんなの無理よ……盾の形状した物が鈍器のように四方から迫ってくるのよ?」
ん? お爺ちゃん??
「それでこの茶番は何なんですか?」
「いやはや、どうしてもユフィー様が英雄の力を見たいと言いましてな! 見た通り──やんちゃな姫様でして……わしは止めたのですが、王命と言われては流石に断られず……申し訳ない!」
アレクさんは謝ってはいるが全然悪いと思ってない顔だ……。
「英雄? 確かに僕達も戦いに参加はしましたけど、あれは『聖天』の皆や母さんが頑張った結果じゃないですか」
「何を言いますか! あれはロイド君がいなければ被害が大きかったと伺っておりますぞ! それに領主邸で見せてくれた力は紛れも無い実力でしょう。将来は間違いなく名を轟かせる事間違いなしですぞ!」
持ち上げすぎじゃね!?
「アレクさん……報告するって言ってましたけど──なんて報告したんですか?」
「もちろん──将来有望な英雄候補と報告しておりますなッ! 特にユフィー様は『双聖壁』の大ファンでしてな。その息子であるロイド君の活躍を聞いて学園に入学を決めるぐらい興味津々ですぞ! それにユフィー様も武にも長けておられるお方ですからな! はっはっは」
こんの爺い、何て事報告してくれてやがるんですかねぇ!?
英雄候補って何さ!?
「はぁ……それでもう僕らは部屋に行っていいんですか? 顔合わせは済みましたよね?」
正直、早くここから去りたい……。
「──先程は失礼しました。私は第3王女のユフィーと申します。こちらはアレクの孫娘であるサラです。この度は国をお守り頂きありがとうございました。学園でも顔を合わせる事があると思いますのでよろしくお願い致します」
王女様は先程の謝罪と以前の
先程のお転婆な感じとは違い、今は品がある感じだ。王族という感じがする……。
というか、やはりサラさんはアレクさんの身内か。
「僕はロイドといいます──」
僕に続いてレラ、フィア、ユーリ、ロロも自己紹介をする。
フィアはシャーリーさんと国に訪問した事があるみたいでユフィー様とも知り合いのようだった。
それからは女子トークが始まって空気が和んでいく。
しばらく時間が経ち、落ち着いたので話に介入する。
「さて、顔合わせ以外に何かあるんですよね?」
僕は本題に入る事にした。
アレクさんの言った事も本当だろうけど、まだ何かあると【直感】先生が告げている。
「……なるほど……勘が鋭いですわね。報告通りです。これは期待が出来そうです。実は──私……婚約してるんです」
「…………それが何か?」
王侯貴族は産まれた時に婚約者を決められる事もあるらしいし、政略結婚も普通にあるから別におかしい事じゃないと聞いている。
ラノベとかじゃ、学園で婚約者を見つける事が多いってのはいくらでもあったし、実際この世界でも貴族院などでは婚約者探しがメインの人も多いらしい。
ここから導かれる答えとしては──
おそらく、意中の男性がいてその人を射止める為に協力してほしいのではないかと予想する。
「──婚約破棄する為に協力してほしいんです!」
予想は的中だ。
「えっと、好きな男性がいるとかですか?」
「いいえ! 私は好きな殿方と結ばれたいのですッ! なので好きな殿方が出来るまで婚約者のフリをして下さいませッ!」
この時、僕の時は完全に止まった──
待て待て、意味が全くわからないぞ?
好きな人はいないけど、好きな人を作るまで婚約者がいるのに婚約者のフリをしろってか!?
何でまだ学園に入学すらしてないのにこんなに意味のわからないトラブルばっかりくるのかなぁ??!!
この後、更に僕は困惑した──
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