第34話 これって覚醒って奴じゃね!?

「「「はぁ……はぁ……」」」


 あれから僕達は逃げる事が出来ずにいる。

 僕達は連続で動き続けて息切れが酷い……。


 精霊さんも援護してくれて4人がかりだというのに、それでも互角に戦うのが精一杯だ。


 何より逃げる隙が全くない。逃げようとすれば間違いなくやられる。


 何かがおかしい。


 夢と違う……ここまでこいつは強くなかったはず……僕が介入した事によって未来が変わっているのか?


 レラと互角に撃ち合えているのもおかしい。さっきまでレラの攻撃は当たっていたし、難なくレラは避けていたが──


 今は僕がフォローしないと攻撃が当たっている場面が多い。単純に疲労だけじゃない……。



 それに使ってくる属性魔法は火、風、水、土まで使ってくるし、剣と合わせて来るから読みにくい。


 ──!? そうか。剣のか?!


『鑑定』──


 ──やっぱり。


 スキルが数え切れないぐらいある。



 これは──使


 拙いな……このままだと押し切られる予感しかしない。



 母さん達の所にはリリアさん、エレノアさんもいるし、夢のような事は直ぐにはならないと思うし──戦力が集中している外の方が安全かもしれない。


『主……魔力が足りません……』


 主? 精霊さんの主はエレノアさんじゃないの?


 というか、魔力切れか……回復させてあげたいけど難しそうだ。やっぱりヤバいな。


「精霊さん──2人を連れてエレノアさんの元へ行ってくれませんか?」


『……わかりました。私の事はシルフィとお呼び下さい。主は?』


「僕は残ります──1人の方が時間稼ぎがしやすいですしね」


「「ダメっ!」」


 そんな僕達の会話に間髪入れずに2人が入ってくる。


「いや、でも僕1人なら逃げれる確率高いんだよね──よっと、ほらっ?」


 僕は向かってくる男に盾を5枚出して囲んで足止めする。


「「…………ならロイ(君)も……」」


 そう2人は言ってくれるが──


「おらぁぁぁっ!」


 パリンっと盾が破壊される。


「見た通り──無理かな。1人なら隙を見つけて逃げられる。それに──ちっ、『挑発』──シルフィさん、お願いしますっ!」


 男は夢の時のようにゾンビのような異形の化物を出して囲み出して来たので『挑発』を使って意識をこちらへ向ける。


 その間にシルフィさんに逃げるように促す──


『了解──』


 離脱時に男は飛ぶ斬撃を放ってきたので、四角い盾5枚を【直感】に従い並べて防御する。


 シルフィさんは2人を抱えて離脱する。


「「ロイ(君)っ!?」」


 3人を見送り、1人呟く──


「僕は2人がだ。後で無事にまた会おうね?」


 聞こえていないのはわかっているけど、なんとなく口に出して自分自身を奮起させる。


「お別れは済んだか?」


 そう言う男は追いかけるつもりは無いようだ。


「まぁね。よく、見逃したね?」


「別にあいつらはついでに殺せれば良かったからな。お前さえいれば問題なんかねぇよ。お前だけは逃がさねぇけどな」


 既に完全に囲まれてるから逃げれないけどね……。


「僕に何の用?」


「さてね。俺はお前を連れて行くだけだ。──【鮮血姫】のとこへな?」


 ──!?


「誰それ?!」


 知らない人だよそれ!


「……元勇者で今は魔王の鮮血姫を知らないのか?」


 魔王がいるのは知ってるけど、詳しく聞いてないよ!


 そもそも何でそんな大物が僕に用があるのさ!?


「…………」


「知らねぇのも無理ねぇか……公に出来ねぇから伏せられているからな。まぁ、俺ももう人に未練はねぇ。お前を連れていきゃー配下にしてもらえるからな。少しでもこの間の鬱憤を晴らすッ!」


「さっさとお前をなんとかして僕は行くッ!」


 全方位に盾を出現させて結界のように展開させて化け物共と男を周りに被害が出ないように内と外から囲む──


「くっくっく、そうでなくっちゃなっ! 少しでも足掻いてくれや。五体満足で連れて来いとは言われていない。後はしばらくここで遊んでいけばいい──お前の大事な奴らが死ぬまでな? さぁ、始めよう」



 男は剣を、僕は盾を構えるが──




 ……どうしよ?


 格好良く言ったものの僕には攻撃手段が無い……夢だと大先生も効果がなかったからな……もしかして魂の数だけ意識があるのか?


 こんな事ならユラさんから魔法教えてもらったら良かったな。盾で殴ってもな……こんな化け物に効果があるとは思えない。


 切に攻撃手段が欲しいッ!



 目の前のなら最悪逃げる事ぐらいは出来るはずなんだけど──


 今は異形の化物がたくさん僕を囲んでいるから凄くホラーだし、隙が無い。


 ゾンビに囲まれているみたいな錯覚を起こすな……しかも、こいつら夢じゃ結構強かったんだよな……。


 正直、一斉に攻撃されたら防ぎ切る自信が全く無い!


 こんな状況にならないように夢じゃ常に動き回っていた気がする……。


 本当どうしよ?


 近寄って欲しくないから魔力ガン込めで大量に強度の高い盾をたくさん出してるんだけど──


 ぎりぎり音がなってるし、そのうち突破されるかも……。



 この傍観してるゾンビの親玉を閉じ込めるか?


 いや、直ぐに壊れる未来しか見えないな。盾自体は強度を無視すれば何枚でも出せそうなんだけどな……。


『感度操作』が封じられてる以上はどうしようもないな……。


 感度か……。


 この盾が動かせればなぁ……そもそも、好きな場所に出せるんだし出来るんじゃなかろうか?


 試してみる価値はあるかも──


 僕は更に目の前に盾を出現させて動かすように念じてみる──


 すると少し動いた気がした。


 難しい……複数を動かすのは5枚が限度かな。頭がガンガンする。


 でも、しばらくするとスムーズに動かせた。


 前世の漫画とかにあったファンネルみたいだな!


 これならまだいけるかも?



「しゃらくせぇぇぇぇっ」


 男が叫ぶと同時に内側の盾を破る音が聞こえてきた。



「さぁ、かかってこいッ!」


 僕は5枚の盾を浮遊させながら言い放つ。



「お前この状況がわからねぇのか?」


 わかってるさ。だけど、僕はこの腕輪の可能性に気付いた。これなら打破出来るはず──


「──これぐらいで泣き言を言ってたら、母さんに怒られるしね?」


「ふんっ、その内お前の大事な奴らは死ぬ。お前は絶望して俺を喜ばせたらいいんだよっ! 分身体──やれっ!」


「──【盾の舞シールドダンス】──」


 襲いかかる異形の化物の攻撃を浮遊させている半透明の五角形の盾5枚で防いでいく──



 さぁ、僕の盾使いとしての真骨頂を見せてやるッ!

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