第13話 魔術師降臨

エントランスホールに静かに佇む

白く クリスタルに光かるような

ペットボトルシップ。


壁一面大型100インチLEDモニター

サイネージが8枚並んで

映し出される映像は


波の揺らぎ、豊かな海、

その波形はまるで、

水中で ペットボトルシップが

誕生を待つように見えて、

息を飲む。


聞こえてくる鼓動、の音と

海鳥の声が 合図とばかりに、

ペットボトルシップの船体


サーーーーー

アウトラインをなぞるように

メカニカルな電子ラインが

ほとばしった。


プロジェクションマッピング!


海中のボトルシップは

七色の骨格を持って

輝きを放ち

闇に形を浮かびあがらせる。


突然 ボリュームONされるBGM。


船の床面に、

四角く切り取られた海が投影。


走るような映像が

動きはじめると、

まさに、ボトルシップが

漕ぎ滑るかに見えて 不思議だ。


投影される水面は

朝の光が煌めく海面、から

飛び魚が 群れなす 昼の海。


そして星降る夜海へなれば、

たちまち

シップの内側から 光の粒子が

吹き出し、船中に充満する。


みる間に

七色の光の羽がシップに

ぐんぐん生え広がって!!


『バシュッ!!』


炸裂する破裂音とスモーク!!


白銀の煙から

1人の白タキシード姿の男が


『ダン』


と、踊り飛んで

一瞬で、

花弁のよう舞い降りた。


呆気にとられているギャラリー。


回りのモニターが

リズムを刻んで

ボーダーにライン点滅をする中、


美しくダンスをするように

その男、マジシャンは、

鮮やかな手つきで

次々にカードを生み出だした!


カードシューティングして

『ヒュンヒュン』と華麗に飛ばされた

無数のカードは、

下に落ちる前に、

『バササッ』

真っ白い鳥にメタモルフォーゼ

して羽ばたいていくのだから

信じられない!


エントランスを周遊したらば、

その鳥達は すぐさま

マジシャンのシルクハットに

すーっと戻って

消えてしまう始末。


そうすれば

ギャラリーは 気がつくのだ。


ボトルシップから、デジタルに

マッピングされた花々が溢れて

伸び出してくると、


今度は 並んだらモニターに、

家電製品や、車、動物、魚が、

星座のように 浮かび


企業のブランドネームが

次第に映し出されていく。


『パチン!!』


マジシャンが、高らかに

指を鳴らせば

スモークから、企業のフロントCEOが出現して、

手を広げて観客に応える。


観客のボルテージは

最高潮に膨らんで

盛大な拍手が巻き起こった。

最高ーだった!


マジシャンは、バッと

白マントを大きく広げ纏ったかと

思うと、そのままマントが

ハラリ、床に落ちた。


もう

マジシャンは 煙と消えて、

同時に白い鳥達が

ピースシンボルのように

いっせいに飛び舞い、

後には

ステージに、CEOが

ライティング台の前に立つ。


そして、

司会が改めてペットボトルシップや、

企業紹介をして

CEOが新しい生活と

時代の到来を、

自社企業は

エコロジーエネルギーの生産で

新展開し、この世界の海原を

泳ぎ行くという旨を

華々しくマイクで

プレゼンテーションした。


完璧だったよ。


わたしは目を見張って

固まる。


エントランスに常設している

特大サイネージモニターと、

ペットボトルシップ用に、

プログラムされたイリュージョン

プロジェクションマッピング。


マジックファイヤーと

スモーク。


それらが

1人のマジシャンの手で紡がれ

レセプションは 想像を越えた

エコロジカルショータイムに

なったの。


その奇跡みたいな

瞬間を目の当たりにして、

アサミ達バンケットホール

スタッフ達も唖然としている。


この何時間か前に 一体

誰が想像できた?!


取材陣達のどよめきは、

最後には

スタンディングオーベーション。


企業への質疑応答は、

急遽、ペットボトルシップ周りに

記者を集められる。

このレセプションに

食い付いたのだ!

夕方のメディアは、一色になる。


カメラフラッシュが

辺りを発光するさまは

さながら

芸能人の囲み取材で、

フロントCEOが

その待遇に

満足たまらんと 破顔してるわ。


これは、、これは、成功よ!!


取材陣だって どれくらい、

来るか分からないと、

ダレンが

エコエネルギー研究をしている

大学生達に ツテを辿って、

声をかけてくれたりもしたの。


100席の椅子も埋まって、

タワーに入ってるオフィスにも、

ケイトウが

フライヤーをばら蒔いて

アナウンスしてくれた お陰で

立ち見のタワー勤務先社員で

その椅子席を囲んでもいる。


もう、これは!これは!


「大成功じゃない!やったわ!」


ミズキ先輩が喜びにうち震える。


わたしは、その声に、

腰が抜けるようになって

壁に寄りかかった。


怒涛だ、怒涛だったよ。


タワーオフィスの

ロビーエントランスホールは

3階までが吹き抜けで、

正面には、クロスした

クリスタルエスカレーターが

設置している。


吹き抜けを 囲むように、

下のフロアーを覗く手摺から

わたし達は、

レセプションを確認していた。


「さあ、各部に無理を言った

お礼参りに行って!!

タムラさんは、備品搬出ある

でしょ!完全終了したら、

外部ヘルプに指示よろしく。」


ミズキ先輩は、こっちにも

激を飛ばして 自分も動く。


『あ、私達、広報さん達とこ

行ってきまーす。それであの』


同僚お嬢さん達もさ、

ちゃっかり上で、お目当てを

サーチしたんだろうね。


さてとね、囲みの次に取材陣の

写真撮りが はけるのを、

もう少しここから、

待つかな。


腕時計と、タイムテーブル表を

見比べて、

何とか夕方のメディア編集に

ギリギリ間にあうかなって

考えてると、


『バササッ』


出し抜けにそれは

わたしの肩に、降りてきた。

おもむろに

それを見るとね、


『キュイッ!』


可愛いい!インコよ!

真っ白いオカメインコなの!


わたしの肩に、チョコッと

留まって 頭を傾げてね。


うわ。頭の跳ねた毛!!

しかも 人に、人に慣れてる。

つい、指で インコちゃんの

頭の後ろを なぜてあげる。


さっきのショーの鳥?

鳩じゃないんだね。


あー、スリスリしてくるっ。

萌えたまらん!思わず、

片手で、緩む口を押さえて

しまったのよ。と、


『キューーーーイ、キューーーーーイ』


真っ白いオカメインコちゃんが

高くて長い鳴き声を上げた。


なんだろう?


鳴き声を不思議に思った時、


フワリと肩に 感触を感じて、

その わたしの 耳元に、


「ーー捕まえた。」


深い響く声が、、、、、


!!!!!

そのセリフに、わたしは

身体が硬直する。


ぎぎぎぎって、音がしそうな

固さで、体を声の方に向ける。


とうとう、父親を追いかける

者に捕まったのだろうか。


瞳の大きさを変える

コンタクトが落っこちそうに

目を開いたまま、

振り返るわたしの視線は、


思っていたような人物を

捉えてはいなかった。


そこには、

わたしの肩から 両手で

確保した インコちゃんを

胸元に仕舞う

日焼けした 白いタキシードの

美青年がいただけで。


「あ、貴方の鳥でしたか。

すいません。勝手にさわって。」


機械的に わたしは、

当たり障り無い事を 相手に

投げていたよ。


追っ手じゃなかった。


それだけで、安心してしまった。

その後に


目の前の美青年が、


凄く綺麗な白い歯をニカッて

見せながら、


明らかに、

胸元から出せそうにない

荷物をわたしに

差し出すまで。


「ー You are my life saver ー」


押し付けられるように

渡された

ランニングポーチにはね

ご丁寧に、

洗われた水筒も

ちゃんとセットされていたのよ。


確かさ、

『マジシャン』って

『魔術師』を演じる者。


貴方ね、

髪と髭で騙したの?


ああ、わたしも人の事ね、

言えないんだった。

こうして

ここに褐色の魔術師は降臨した。

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