第8話 ヒルズヴィレッジと相対す 友人はシオン

「 超ーリュクスな街に、

なんてスタイリッシュな

オフィスタワーなのーっ汗!」


ギャラリー『武々1B』の

スタッフであるシオンは、


真新しい 高層ビルの真下で、

ポカンと口を 開けて

佇んで いた。


新しいヒルズ街は、シオンが仕事をする本部とは全く違い、

真っ白い外観が 青い空に映えて

輝いてい見える。

まるで、摩天楼の貴公子みたいに

きらきらと 光っている

シンボリックなタワービルだ。


地下1階からの 地上57階建て。

屋上には 最新ヘリポート。


56階には展望フロアで

55階には会員制VIPラウンジ、

54階の高級レストランと 続き

49~53階が ブランドホテルで、

7~48階は オフィスゾーン。


「 ヒルズ極みまくりだわっ。」


そして、6階までには

プレミアムシネコン、

サロンホール、

カルチャースタジアムに、

チューターやコーチャーはじめ

シッターやヘルパーの

ディスパッチセンター。

加え

ビューティーパレスに、

ペットホームと充実しまくった

ライフゾーンとなっていた。


「 以上!ってなにー!これっ!

超メガオフィスタワー

じゃん!オフィスでこれって、

『ヒルズビレッジ』 周辺施設?

病院?レジデンス?って

一体、どんだけよーっ!」


シオンは 検索した

『ヒルズビレッジ』の

ページと、

目の前の ヒルズヴィレッジ現物を

何度も見比べて、つい叫んだ。


首都に 新しく開発された

ヒルズビレッジ。


ギャラリーオーナーの

『武久一』こと 『ハジメ』が、

ここに東日本のオフィスを

移転させてから、まだ1年。


北陸の本部スタッフである

シオンは、丁度顧客案内で

上京していたところに、

ヘルプ要請をオーナーである

ハジメから受けた。


そして今、

初めてヒルズビレッジを

目にしている。


「 おおー!他には、全室完全個室

の最高ホスピタリティーな

総合病院に、 都心緑地型の

数億円低層階レジデンスっ

て!? こんなとこ、

どんな人間が住むっつーの!」


はあーっ。っと、

豪快に ため息を飛ばして

再度 シオンは、

タワーの横にある 建物群を仰ぐ。


「 あー、とりあえず、ない!

この2つの建物は縁がない!

セレブすぎでしょ!

で、あと

あっちの施設は? 何なにー?

古き良き ジャパネスクを

世界に発信するプラットホーム

モール?気になるー。

テナントが入ってる感じー?


うわぉ!本格的日本庭園と

茶室があるルーフートップ

ガーデンって、素敵っ!

ここ 見てみたいなあー。」


田舎者と言われても

仕方ない、 挙動不審独り言を

若干ワクワクぎみに言いながら

シオンは、

ハジメから 言われている

タワーオフィスに

軽快に 入っていった。



近年、アートイベントが

全国的に開かれ、

ビエンナーレや、トリエンナーレといった 美術展覧会が 毎年、

どこかの地域で開催されている。


ギャラリー『武々1B』。


シオンが働く

ハジメのギャラリーは、

テナントを 構えているわけ

ではない。


ベースギャラリーを持たず、

全国のあらゆるスペースを

レンタルして、

期間限定のギャラリーを開く、

いわゆる

『旅するギャラリー』

なのである。


時には、

ラグジュアリーホテルの

ワンフロアー。

はては、

サーカステントでギャラリーを

開く事もある。


それに合わせて、

扱うモノも多岐にわたる。

純粋芸術品だけではないのだ。


そして、

その本部オフィスを

元、小京都と言われる地域に

構え、

全国の要所に アンテナルームを

置いている。


シオンは、

何機もある

新しくて、ネオフューチャーな

デザインの

オフィスエレベーターを待つ。


わざと

アンティークシステマチックな

エレベーター動力部分が


オープンになっているから、

エレベーターホールは


まるで巨大な時計の歯車が

回転してて、

銀河系を思ってしまう。


「 わーっ!!なんでオフィスの

低階フロアーなのって思った

らー

こーゆーことですかっっ!!」


思わずシオンが

声を上げたのは、


エレベーターが

開いたとたんの

ファーストビューが あまりに

豊かな緑の景色だったから。


目の前の

総 クリスタルガラス張りごしに

向かいの

ルーフトップガーデン!


素晴らしい 日本庭園の緑が

見事に 借景のごとく

広がっているのが

階まみえた。

都会の空に浮かぶ


バビロンの天空庭園。


「 シオン!!ようこそ!

ヒルズビレッジ

アンテナオフィス に!」


そう 声がして、

シオンが 目をやると、

そこには

リモートミーティングで お馴染み


東日本オフィスのスタッフ、

灰水色の瞳、ハーフアイを

揺らして

『ケイトウ』が 笑っている。


シオンは

ケイトウを 自分の胸に

バンバンとハグしながら

心に 思う。


『あのアザミちゃんと、仕事

するなんて思わなかったなあ』


かつての戦友アザミの

助っ人としてシオンは、

この日ヒルズタワーに足を

踏み入れた。

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