第7話◆王子side夏: 巻き上げる潮風は推理の予感か
「コレは、何と読むのだ?」
オレは
出されたBusiness card、
ー名刺を手をして、
目の前で ヒラヒラと笑う
アイボリーリネンスーツの男に
問うた。
夏の間中開催されていた
国際芸術祭もラストシーズン。
オレは、
Maikelからの招聘でアートゲスト
として参加する事になった。
が、
この男。
港のホテルで、
開け放たれた
スイートルームドアから
垣間見た
とんだguest menだと
オレは気が付いた。
「貴方ならぁ、何と読みますか
ねぇ。興味深いので、是非とも
思う読み方を~教えてください
ね~。ね?Emperor~?」
そうしてウインクをしてくる
タレた目は興味深げに、
オレを
覗いてくる。
海猫が 鳴く
波を越えて、
メガヨットなるクルーザーは
港を出港し、
今は
島を目指して 走っていた。
『 武
々
1
B 』
名刺に印字された文字だ。
オレのシャツが潮風にはためいて
鍛えられた脇腹が チラチラと
見え隠れする。
「オレのKaiserをEmperorと呼ぶ
貴様にDeclarationするが、オレ
は6th prince。Kingにはならん」
当然わかっていますよん。
という顔をして、
ハジメという男は
口を弓なりにする。
そうして、
褐色の肌に
体躯良く Vネックシャツを
着こなす
イケメン王子に 挑むようにして、
続けるのだ。
「ビジネス上のゲストネームです
から~お構い無くぅEmperor。
さて、貴国は英語と中国語の
両方が日常会話ですしぃ。
ぜひとも、読み方を 教えて
下さいよ~。ええ何とでも!」
オレは 整った顎に片手を
宛ながら答える。
「『ウーウーイーイー』。ハ!
まるでキナ臭い場所だな。
ギャラリスト探偵のaddressか」
間髪いれずに、
ハジメに応えて、肩をすくめる
ポーズをみせた。
「クック、emperor!なんとも
言えて妙な アンサーですねぇ。
イッツ!グレート!!
『Wu―wu―yiーyiー』ですかぁ
へえ~なかなか良いですねぇ」
そんな
オレの言葉の押収に
眉を上げてハジメは、
ウエービヘアを揺らし、
楽しそうに人差し指を
立てる。
「探偵のいる場所は、キナ臭い
って嫌味だが?まあ、いい」
解ったのは
掴み所のない相手が
このギャラリストだという事。
「酷いなあ~。仕事柄、お客様の
思考を把握する1つの基準です
よん。私が、戯れに付ける 略称
も、オ・モテ・ナ・シ!」
はい、合掌~。とハジメは
いちいちポーズをしながら
オレに、
「さすが 、頭に仮想軍司地図を
作る思考が、
軍を指揮するだけある」、とか
「あの脇腹はヒキョー」だとか
なんとか 、
呑気に
眼鏡の秘書?と話をしている。
オレは静かにハジメなる人物を
観察する。
「ギャラリスト探偵か、」
友人Maikelと、
オレが滞在していた
ホテルのラウンジで
合流してすぐに、
芸術が開催されている島へ
渡ったる為に
乗せられたのが、
ハジメのギャラリークルーザー
だった。
そして
紹介されたのが今
自分の目の前でワキャワキャ
している
ギャラリストなわけだ。
Maikelから招聘された
ボトルシップイリュージョンは
まだ後の日程で使う予定。
ギャラリーオーナーである
ハジメの cool秘書と
愉しげに話すMaikelを
オレは見て、
Maikelは『ウーウーイーイー』の
Regular customersらしいな。
そう認識した。
と、ふとオレは
「Sherlock、足に ケガか?」
ハジメの両足に視線を落とした。
「emperor!凄いなぁ。
ゲストからは初めて言われたよん
わかるぅ?両足骨折なんだよ~
レディを守って名誉の負傷さ、」
両足骨折?!
何をしたらそうなる!オマエ、
間抜けか。いや、
「sorry。Ladyに足を踏み抜かれた
のか?オレも I remember さ。」
アハハ!と爽やかに
オレは笑ってハジメの肩を
同志だなと、バンバン叩いた。
なんだ、コイツsympathyだぞ!
「ふ~ん。もしかしてぇ、
emperorって家庭的な
女性がいたら、すぐお嫁さんに
する派なんじゃない?親近~」
今度はハジメが オレの足を
フフンと 見てくる。
「オマエ、、Marriage hunterか。
まあ、いいが。そうだな 理想は
Homely woman であり、
Country mother なのかもな。
老若男女に慕われるPrincessだ」
そんなオレのセリフに
ハジメ
目の前の王子を
頭のテッペンから、足の先まで
サーチする。
「ビックリだよぉ emperor。
なかなか クレイバーなんだぁ」
クルーザーの甲板で 話を
楽しむゲスト達に、
もう1人のスタッフが
「みなさんっ、宜しければ 中国茶など 如何ですかー。水出しで、
淹れてますから。ヒンヤリと
美味ですよっ。さあ ブレイクを」
声をかけて
用意した デキャンタセットを、
運んできた。
「ああ、シオンくんありがとぉ。
じゃあ~emperor、あちらにぃ」
水出しで
キリッとした風味がの
爽やかな 茉莉花茶だ。
島風が、オレの黒髪でなびくと
ムスクの薫りと
茶の薫が交わって
より オリエンタルな風になる。
ハジメが その鼻腔を
擽る風に 目を細めた。
「Sherlockの言うとおりだ、
美味い。腕の良いWatsonだな」
オレが黒髪を掻き上げて
ニコッと白い歯で笑えば、
ギャラリースタッフの女性陣も
思わず見とれている。
「なんだよぉ、余裕縮尺今度は
イケメンemperorだぁ。」
ムカつくよね~!と ハジメが
オレに 八つ当たりをして、
口の端を ヒクヒクと
痙攣させた。
そんなハジメを フフンと
鼻で笑ってオレが
茶器を 戻す。
ハジメは、あからさまに
拗ねた顔で
「うん、帰っていいよ~♪」と
意味深げに笑って、
「マリッジハンターにはぁ、
我々の アドバイスなんて 必要
ないのでしょうねぇん。フフフ」
意味深な台詞で、
タレた目を 褐色の王子に
意地悪そうに見つめた。
「advice?、、オミトウシか?」
だから
オレも、
ギャラリー探偵と呼ばれる男、
ハジメを訝しげに睨らむ。
これが、
秋も近づく夏の終わり。
瀬戸内の海での
王子とギャラリストのやり取り
だった。
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