第6話◆王子side夏: 気がつけば何度目かの訪問
「イリュージョニスト・ケイ様
この度は当ホテルをご利用、
有り難うございます。こちらが
ホテルバトラーになります。」
「Nice to meet you
長くない滞在だが、世話になる」
Maikelが今回指定してきたのは、
この国で3年に1度行われる
国際芸術祭=トリエンナーレ。
東からの入国は国内式典で、
規制が厳しいが
西の瀬戸内海で 長年開催してきた
アートフェスティバルの
親善アーティストなら、
エコボトルシップとして
来日もしやすかったというわけだ
「このホテルも何度目だ?」
笑える。冗談じゃない。
こんなはずじゃないだろ?
どこまでunlucky loopなんだ?
オレは 国際芸術祭の
招聘アーティストとして
夜の 神戸、ラグジュアリーな
バスルームに 薔薇の花びらを
泡立てている。
濡れて 黒髪に短いウェーブが
かかる。
「、、、fireworksか。」
褐色の肌をジャグジーに 浸けて
眼下の港 景色を 見ていると、
埠頭の あたりで、急に 青い花火が
上がったのだ。
ちょうど前日、国王の生誕祭で
花火を打ち上げたオレには
「Blue fireworks、祈りだな」
御祓をするかのように、
普段からのmilitary trainingで
ついたほどよい筋肉の身体に
水を浴びて
祈りのポーズをする。
港に上がる 噴水のような青い花。 サプライズ花火なるものが
咲く神戸港。
港は、モノと ヒトと、
エネルギーの 集まる場所だ。
ここは
島国、日本の貿易の 出入り口。
山側の窓 からは
100万ドルの夜景が 広がり、
ジャグジーは 海側の窓。
船で、海外間の物流が
なされるが当たり前の
24時間稼働する港都市。
「もうボトルシップも到着か。」
ケイは、シャワーで濡れた髪を
用意されていたタオルで 乾かす。
ふと昔の古傷が疼く気がして
もう一度シャワーをかけて
足を見つめれば、
愛おしい違和感はなくなった。
「Last oneだ。」
そう独り言を 言って、バスから、バー カウンターに 裸で 出て、
ケイは、セラーを開ける。
タワーの形をしたペットボトル。
KOBEウォーターを見つけ
キャップを開けた。
「この、ポールアートクリスタル
ボトルを見るのもlastかもな。」
そうして、オレは
ペットボトルに 口を着け
改めて KOBEウォーターの
ボトルを 見つめた。
窓の外には、
観覧車の鮮やかな
イルミネーション。
かつて、
神戸港は世界トップクラスの
コンテナ港湾だったにも
かかわらず。
阪神・淡路大震災に見舞われる。
またたく 間に、
韓国・釜山港が トランシップ港に
代わってしまった。
「お陰でMaikelの港から、
問題なくコンテナ船でシップは
海運できた。ここからも、この国
なら、すぐに島へ出れるだろ。」
まだ、世界には
AIを使って 港湾の
ターミナル運営を している国は
存在しない。
『AIターミナル』
エコ化の流れで、
RORO船舶という、自走コンテナ
による国内輸送の活用も 積極的に
取り組まれている。
この港からなら、国内への
船舶動線は多い。
『ブーッブーッブーッ』
オレの電話が到着を告げた。
ラウンジでMaikelと落ち合う
予定が表示されるのを
ケイはチラリと確認して、
カジュアルなスーツを纏って
ドアを出た。
「あ、武久で~す。悪いけど、荷物まとめてくれるぅ?残りは~
船に運んでぇ。3分でフロント
降りたいなあ。ごめんね~。」
廊下にでると、そう多くない
スイートドアが並ぶ1つが
開け放たれて、慌ただしい。
「Hotel handmaidenか?」
ドアから 覗くと
部屋には、着替えや資料、
主が滞在した日数分だろう、
荷物が 散乱している。
「遅刻は不味いよねぇ~。」
と、鼻歌まじりの主の言葉が
クローゼットから聞こえて、
ケイは
I'm sorry 。とんだguestだと
ドアから離れて ラウンジに
向かった。
「Art festivalの間は もう一度
この西を探す。last chanceだ」
神戸港。
港を通って モノやエネルギーは
運ばれる。
港を人は通過する、日常物資も
とてつもなく 多い。
砂の中から、華の跡を探す旅を
続けて10年。その為に
国際ボランティアに席を置いて
文化交流と 世界を回った。
国に責務がある自分が動くには
名分がいる。
イリュージョニスト・ケイは
運命の鳥を連れて
最後の航海へ出た。
サヤ ナク ジュンパ カム。
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