第2話 「すべての始まり、彼との出会い」



 思い返せば、すべての始まりは彼との出会いからだった。

 村娘だった私は魔物によって故郷を滅ばされ、孤児院に預けられた。

 暗く、消極的だった私には友達はできなかった。

 元から異様な雰囲気をもつ私を、子供たちは近寄りがたい存在として扱っていた。

 家族のように扱えとシスターなる人は皆に注意していたが、一年経過しても改善はしなかった。


 それが嫌で私は、14歳になると私は孤児院から逃げた。

 孤児院に食料を届けにきた馬車に乗り込み。

 小柄を生かし空っぽになった箱の中に隠れた。

 明日になったら行方不明として捜索されるだろう。

 ならば逃げるのなら遠く。

 遠くへとだ。


 さらに一年が経過。

 15歳になった私はいろいろな国を転々としながら旅を続けた。

 魔王軍との戦争で貧しい国は多かったけれど、常に生きることを考えていた私にはあまり問題はなかった。


 戦う手段も我流だ。

 子供で、女の子なのに力には自信があった。

 華奢だからといって近づいてくる馬鹿な大人は全員叩きのめした。

 可愛いだとか、か弱いとか、よく言われていたけれど、当時の私には意味の分からない言葉だった。親にしか言われたことのないので、私を子供かなんかと思っているのか。

 むかつくので、容姿を褒めてくる奴らも全員叩きのめした、徹底的に。


 それから月日が流れ。

 私は冒険者という職の存在を知った。

 冒険者が職業?

 私のような自由気ままに旅をする者を指す呼び方ではないのか。

 と初めは不思議に思った。


 しかしギルドなる場所で依頼を受け、依頼を達成すれば報酬が貰えるらしい。

 食いつかないはずがなかった。

 野性的な生活を送っていた私には金が必要だ、外ばかりではなく宿のフカフカのベッドに眠りたい。


 そのためギルドへと行き、私は冒険者としての登録手続きを行った。

 初めて訪れた冒険者ギルドには人が多く、賑わっていた。

 人間不信で、会話の下手な私にはあまり居たくのない空間だった。

 それでもお金の欲しい私は挙動不審になりながらも掲示板で依頼を探した。

 そして私のランクに合った一番高い報酬の依頼を手に私は受付に戻った。

 聞いたことのない名前の魔物を数十匹討伐する依頼だ。


 受付嬢は目を丸くして私を見た。

 他に仲間はいないかと尋ねてきた。

 人との接点を極力避けている私は、至極当然のように居ないと答える。

 どうやら仲間がいなければ受注のできない依頼だったらしい。

 なので受けることができない、他の依頼を推奨された。


 だけど私は一度目にした依頼を諦めることが出来なかった、頭の固い女なのだ。

 しかし口にはしない、できない。

 そんな時だ。


「その依頼、僕も同行するよ」


 傍らまで近づいてきたのは穏やかそうな茶髪の好青年だ。私よりは背丈は高いが顔がとても幼く、歳が近いような気がした。

 いつもは他人を遠ざけたいという気持ちも、初対面のはずの彼には一切湧いてこなかった。


 ジークルーン・ファンガリ。

 右と左も分からない私に声をかけた、運命の青年の名前である。

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