第2話 現場

「どういう状況?」

その場にいた同僚——エルロン・ファイスに声をかける。この世界に来て初めて知り合った事故調査官が彼だった。

「街の上空を飛行中のプリズム号が突如爆発し、炎上——この有様です」

暗い顔で応える。何度も事故の調査をしている彼だが、現場の惨状には慣れないようだ。焼けた革や肉のにおいが辺りに充満していて私も気分が悪くなる。

「目撃者は?」

「あっちに数名。街の住人が炎上の瞬間を見ていたようで。話を聞いてきてもらえます?」

「了解」

 こういった事故で、目撃者の証言は重要だ。鵜呑みにはできないが……。

「失礼、炎上を目撃された方ですか?」

青い顔をした婦人に声をかける。そわそわと落ち着きのない様子で、しきりに空と残骸を見ている。

「そ、そうです。あの、飛行船、プリズム号が、いきなり……ば、爆発して……」

「落ち着いて。ゆっくりお話ししていただければいいので。」

震える手を必死に抑えて口を開く。


「お昼ご飯を食べようと……街のレストランに向かっている時、北西の……街のホールのあたりからプリズム号が飛んでくるのが見えたんです。」

北西の方にはこの国で一番大きな空港、コントレイル国際飛行場がある。そこまで距離は離れていないので、離陸して時間は経っていなさそうだ。

「しばらく眺めていると……い、いきなり大きな爆発音がして、プリズム号が火に包まれたんです。そのまま落ちていって……慌てて他の人と一緒にここまで来たんですけど……生きてる人は……その……」

婦人の目に涙が溢れ、押し黙る。今日はこれ以上話は聞けなさそうだ。

しかし、これだけの情報があれば充分だろう。私は証言をメモし終えると残骸を調べているエルロンの方へ向かった。


「燃えたのは間違いなさそうです」

焼け焦げた残骸がそれを物語っていた。火は消し止められたが、未だ燻っている部分もある。

「目撃証言では爆発音がしたってことだったけど、爆発物は?見つかりそう?」

「今のところはなんとも。残骸を検査して、マナが残っているかどうかを調べないと。」

この世界では魔法、のようなものがあり、使用する際にはエネルギーとして特定のマナが使われる。爆破などがあった場合には、そのマナが残存している場合が多いのだ。

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転生事故調査官(仮) @ststs-811

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