転生事故調査官(仮)

@ststs-811

第1話 空を飛ぶ船

 ——その日は雲ひとつない晴天だった。

 風も穏やかで、晴れ渡る空。まさに“空を旅するのにぴったり”な1日だった。


 この国、コントレイルでは航空業が盛んで、毎日さまざまな乗り物が空を飛んでいる。飛行船もそのひとつだ。大きな風船の中に水素やヘリウムのガスを充満させ空に浮かべるもの——というのが飛行船に対しての私の認識であった。

 ではそうだったからだ。だが、実際に乗ったことも見たこともなかった。私が生きた時代にはもうとっくに廃止されていたのだ。

 だから、本物が飛んでいるのを見た時は感動した。果てしない空を悠然と進む巨大な船は、人々を魅了するに足りえるものだと実感を伴って理解した。仕組みは少し違うようだったが、そんなことは些事だった。


「落ちなければ、だけれど。」

残骸の前でひとりごちる。

安穏とした休日の午後は、耳障りな爆発音で終わりを迎えたのだ。

 

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