捜索

その日、私は浮かれていた。

ここ数週間、全くお客さんが取れなかった。

朝から晩まで声を掛けまくっていたがでこぼこ地帯を抜ける人は誰一人おらず、空振りが続いていた。


数ヶ月前にそこそこ大所帯の商人の護衛を終えたときの貯蓄はまだあったが、これほど客足が途絶える期間が長かったのは初めてだったから自分でも気づかない内に焦っていたんだと思う。


そんな時にフェイさん達に遭った。


どうやら旅人さんらしく、誰かからでこぼこ地帯を抜けたいなら案内役を付けたほうが良いとアドバイスされたらしい。


当然断るわけもなく、私は久方ぶりにやってきたお客さんに張り切った。


リザさんはどうやら私がパーティに入るのが気に入らなかったらしく、それはそれは厳しい視線をぶつけられてしまったが。


ともあれ私は彼らの案内役をすることになった。


なにやら予知の能力を持った老人に逢いたいのだとか。


いつだったかそんな噂を聞いたような気もするが、これまでのお客さんの中でそんなことを言い出した人はいなかったものだから、老人の家がある場所なんて知らなかった。


だがこのでこぼこ地帯に住んでいると言うならある程度の場所は検討がつく。


問題なく、その老人の元までたどり着けると思った。


そして私はいつもより気合を入れて、この地帯にはどんなモンスターがいるのか。

どんなとこに気をつけるべきかなんてことをペラペラと話した。

彼らは本当にこの辺りの情報を何も知らなかったらしく、クモザルや他のモンスター達の洗礼にやや面食らっていたようだった。


しかし幸いにも二人共こちらが心配するのがおこがましいほど戦闘には長けているようで、これまで依頼を受けていたお客さんの中でも間違いなく最も強い人達だった。


戦闘慣れしていない商人達なんかは、モンスターに襲われれば取り乱し、ぎゃーぎゃーと喚き立て。


あろうことか私の側から離れて自分だけその場から逃れようとしてしまう臆病な者もいる。


そんな素人連中に比べれば今回のお客さんのどんなに楽なことか。


こちらが守りきるまでもなく、難なくクモザルを追い払う。

こちらが何を言わなくてもモンスターの襲撃に対応してくれる。


今回の仕事は楽に済みそうだ。

そう、思ってしまった。


仕事をするにあたって決して近寄っては行けない場所がこの地帯にはある。

それが大樹から少し離れた場所に作れられた集落だ。


ほとんど人が近寄らない、この絶望的なまでに暮らし難いでこぼこ地帯に居を構える変わった部族達。


彼らは身内以外への敵対心が強く、今までも迂闊に彼らの縄張りに入るとトラブルになった。


怒鳴り声を上げながら罵声を飛ばされるなんてのはマシな方で、お客さんに危害を加えられそうに鳴ったこともあった。


彼らの縄張りにはクモザルが近寄らない事。


クモザルの動きを見ていれば必然的に集落付近には近づくことがないとわかってからは彼らとトラブルになることはなくなった。


当然、今日もいつもと同じように周囲の気配に気を配り、クモザルの動きを目で捉え続けていた。


その思い込みが、まさかこんな裏目に出るなんて……。


クモザル達は何故か部族の集落がある大樹近くを闊歩していた。


これまで一度たりともクモザル達が彼らの縄張りに近づいたところなんて見たことがなかったというのに。


猿たちの動きをルートに組み込む私も当然、同じように大樹の近くを通ってしまった。


絶対に近寄らないようにしていた部族たちの縄張りに、自分から入り込んでしまった。


異変に気づいた時、私はひどく混乱していた。


何故今自分たちはこの場所にいるのか。


道を間違えた、しかしそれなら何故クモザル達がここにいるのか。


冷や汗が一つ垂れ、背筋に嫌な寒気が走った。


今日は何かがおかしい。


普段このでこぼこ地帯を仕事場にしているからこそ、その異常性に困惑した。


そして、その頃にはもうすべてが遅かった。


いつの間にか接近していた部族達に私はあっという間に拘束された。


とんでもない失態だ。


お客さんを守らなくては行けない私が、逆に捕まった上に人質に取られるなんて。


あろうことかリザさんが私の代わりになることで、私は開放された。


そのまま見捨てられても仕方ない場面だったというのに……。


いつも使うルートを使わず、岩上用のルートを使ったのも今思えば失敗だった。


あれのせいでいつもの感覚が少し狂っていたのかもしれない。


そうでなくとも、猿たちが普段いるはずのない場所から襲ってきている事がわかったかもしれない。


それなのに。


後悔が押し寄せる。


今はただ、一刻も早くリザさんを開放しないと……。


ーー


捜索を開始する前に、まずプラットが同行する二人の男に向けて質問を始めた。


「どこで攫われたのかは、わからないんですか」


「わからない。狩りにでかけたまま戻ってこないのだ」


「じゃあ攫われたかどうかはわからないんじゃ」


「我らはこの一体のモンスターに遅れを取ることはない、猿たちの地形変化にも対応できる。何か予期せぬ出来事に巻き込まれた以外にありえない」


確信めいた物言いだった。


この発言がどの程度信憑性があるのかは知らない。

だがこの自信満々な口調を信じるのであれば事故の線はないということ。


「ひとまず手がかりを探しましょう。その人達が暮らしていいるのはあなた達と同じ場所なんですよね?」


「あぁ」


「闇雲にこの広い一帯を探すには人数が足りません。攫われた人の痕跡が何かないか探しましょう」


仮に誘拐ではなく何かの事故だったとして、彼らの行動をたどることで何か情報が得られるかも知れない。

そんなプラットの言で男たちの集落を目指すことになった。


首肯する男たちを先頭に一行は早足で移動する。


「あの、申し訳ないです。私のせいでリザさんが……」


移動の最中、フェイの隣にならんだプラットが口を開く。


「別にあんたのせいじゃない」


「でも私がルートを間違えなければ……」


さっきの表情の通り、やはり責任を感じてしまっているらしい。

だがどこに問題があるかと考えればこの蛮族共が悪いし、そもそもの原因まで遡ればこいつらの仲間を攫った奴が悪い。

だからプラットが気に病む必要はないのだ。


「人質の代わりを申し出たのはあいつだし、ささっと誘拐犯を捕まえればちょっと寄り道したのと何も変わらないって」


「はい……」


「何だよ、そんなに落ち込んだって仕方ないだろ」


俯きがちに落ち込んでいる様子のプラットになるべく軽い調子で話しかける。


「今までお客さんをこんな事態に巻き込むなんて一度もなかったんです。モンスター達の様子もいつもと違って……、今日は何か変な感じで」


変な感じ……。

きっといつもこの地帯を中心に仕事をしている彼女ならではの異変。

それも相まってこんな事態に鳴ってしまったのかもしれない。


「そういえば何か言ってたな」


「それでも私がもっとしっかりしてればなんとかできたはずなのに」


気落ちするプラット。

思いがけない事態にかなり動揺してしまっていて、どう励ましてもあまり届いていないようだ。


そんなプラットの姿を見て、


「ひゃっ」


フェイは背中を一発パンと叩く。


「とりあえず、落ち込むのは後だ。今そんなことばっか考えてても進まねぇ」


フェイは内に内にと向かっていたプラットの意識がこちらに向いたのを確認して続ける。


「あいつがあんたの代わりに人質になったのは、誘拐犯を速攻で捕まえるのにあんたの知識と経験が必要だと判断したからだ。なのにあんたがそんな様子じゃあいつが代わりになった意味がない」


やや言葉は厳しいがありのまま、事実を告げる。


「俺もあんたが頼りだ。失敗を気にしちまうなら今はあいつを助けるために全力を尽くしてくれ」


フェイから言えるのはこれくらい。

慰めでもなんでもなく、今一番この状況を打破できる可能性が高いのはプラットだけなのだ。


そう言うとようやくプラットは俯いていた顔を上げ、力強く頷いた。


集落はピリピリと殺気立っていた。

盛った土を固めた家らしき建造物から部族の人間が時折顔をのぞかせる。

誰も彼もがよそ者のフェイ達に向け厳しい視線を向け、何をしにきたと威嚇でもするように睨みつけていた。


「手当り次第周りましょう」


男たちの案内で彼らが過ごす場を順に回っていく。

初めに訪れたのはこのでこぼこ地帯においては珍しい、平らな地面が一面に広がる場所。


「ここは?」


「畑だ」


ーー畑……


この大地で作物が育つのかと思ったが、実際に耕された畑には細い草が伸びている。

しかし地面は水分の欠片も感じないカラカラの砂だ。


「なんでこれで育つんだ?」


「この植物は水をやらなくても育つ」


ならどうやって育つのかと思えば、風にさらしておくことで育つのだという。

風に吹かれるだけで育つ特殊な植物。

猿たちが寄り付かないというこの集落ではこの植物を大量に育てているらしい。


「こっちの畑はすごい茂ってるな」


目線を移せば先の植物の畑よりずっと狭いがその何倍もの育ち方をしている草が。


「それはハヤグサだ」


このハヤグサは水分を与えると急成長するらしい。

枯れるのが早いため成長させたらすぐ収穫して食べるのだとか。

そばに置いてあった重そうな石の容器に水を入れておき、それをぶっかけて急成長させるらしい。


男たちは言葉数は少ないがどんな質問をしてもすぐに答えた。

説明の足りないところはプラットが補いながらフェイ達は集落周りを調べていく。


しかし痕跡らしいものは何もなく、攫われた人を見かけたものもいない。


「次、行きましょう」


プラットは早々に見切りを付け、集落を後にする。


次に訪れたのは水飲み場。

集落から少し距離のある巨大な樹の生える場所。


「さっきプラットが見てたのはこの樹か」


「私はこの樹を目印にルートをとっています。この樹だけは唯一猿たちの被害を受けず、常にこうしてここにあるので」


樹の根元には人が何十人と泳げそうな水溜りがあった。


「こんな水場があるのか……」


視界の端にちらほらと水を飲みに来ているモンスターの姿もある。


「この辺りには池亀と呼ばれるモンスターがいてですね、降った雨を身体に蓄積し続け、その量が一定値に達するとこんな風に一気にぶちまけるんです」


「こんな風にってことは……、この小さい湖みたいな量の水はそのモンスターから出たってことか?」


一体どれだけの期間の雨水を溜め込んだらこんな水溜りができるのか。

見たところ水はかなり透き通っていてきれいな水だった。

とてもモンスターから出たとか、元は雨水とは思えない水質だ。


「身体に貯めた雨水は池亀がある程度濾過しますからね、普通に飲めますよ」


「なるほどな……」


周りに感じる生物の気配がこの樹の周辺だけやたらと濃い。


だが、


ーークモザルは、いないみたいだな


あの猿達の姿はどこにも見えない。

縄張り意識の強い猿だという話だが、何故この辺りにだけ出没しないのか。


そのことを聞くと、


「クモザルたちは集落の人たちとの縄張り争いに負けたんです。だからあの集落付近や、集落の人間が頻出するこの樹の近くには猿たちは近寄ろうとしません」


だから集落に近寄るはずがないと……。


それならあの部族はどれくらい前からあそこに住みだしたのだろうか。

集落には割と年を重ねた老人の姿もあった。


もしかしたら予知の老人があの集落にいる可能性はないだろうか。

事が終わったら聞いてみるのが良さそうだ。


「しかし、ここにも特にこれといった跡はありませんね」


周囲を見回っていた男たちが戻ってくるも、やはり手がかりは何もない。

誰かが連れ去られた痕跡はもちろん、戦闘の名残や狩られたモンスターの死体もない。

ここを通りかかったのすらわからない。


「あなたたちはいつもどこへいって狩りをするのですか?」


プラットが男たちに尋ねる。


「色々だ」


「色々?」


「獲物が取れそうならどこへでも行くし、各々好きな狩り場を見つけ、狩る」


つまり個人個人で狩りに行く場所は異なると。


「ただ集落の者共通の狩り場はある」


「ならそこに行きましょう。攫われた彼らが何か残しているとすれば一番可能性が高いのは狩り場。

集落周りには何もありませんでしたし、やはり狩りの最中に何かあったのだと思います」


案内された狩り場は特段変わったところのない場所だった。

猿たちの地形変化の名残がある大きな岩が盛り上がり、凹凸のある地形。

まるで何かの遺跡のように、猿達が生み出したと思われる岩の柱が転々とそびえ立っている。


「ここが……?」


岩と岩との段差があちこちにあることでパッと見では動きにくそうな場所だ。


「我らはこの場所で獣たちを狩り、狩りを通して戦闘能力を身につける」


曰く、部族は獣の動き、反応速度、それらすべえに対応できるようになるまで獣狩りを続けるのだとか。


「ではこの辺りを探しましょう。何か不審なもの、血痕、その他気になったものすべて報告してください」


プラットが言うや否や男たちはこの足場の悪さにも関わらずまるで獣のようにひょいひょいと跳びはねて走り回る。

その動き方には先程言っていた獣狩りを通して身につけたという能力の片鱗を感じる。

男たちは岩柱も問題なくよじ登っていく。

その速度はフェイ達など比較にならないほど。

発達した足の指でしっかりと岩肌の角を掴み、両の手を素早く動かしてすいすいと岩柱を登る。


まさに猿のそれだ。


道具がなくとも自在に動けるように、このでこぼこ地帯に適応し身体が発達していったのだろう。


「じゃあ俺はこっちの方を」


フェイは男たちが向かったのと別の方を中心に探す。

死角になる場所を潰しつつ、丁寧に丁寧に歩き回る。


そうしてしばしの間捜索を続けた。


足場は悪いが視界は開けている場所だ、何かしらあるのではないかと思ったが……。


「ないですね……」


一番可能性を感じていた場所にも関わらず、手がかりがない。

血痕や、モンスターの死体はあったもののそれらは自然にモンスター同士が争って死んでいっただけのようだった。


「こっちも何もなかった」


どうやら男たちも結果は同じようだ。


「……そうなると次はもう手分けして虱潰しに、いやそれだとーー」


空振りが続いたことでプラットも少し考え込んでいる。

次に向かう場所はどうしたものかと。


「おい、どうするんだ。次は」


「早くしないと手遅れになるかもしれないんだぞ」


手がかりの見つからない現状に男たちが苛立ち始めた。


「うるせぇな、それを今考えてるんだろ」


今にもプラットに突っかかって来そうな男たちへ牽制の意を込めて、剣の柄を握りながら声を出す。


「反抗するつもりか? お前たちの仲間はこちらが捕らえているのを忘れたか」


「はっ、今お前たちを斬り捨てたところでさっきの奴らには伝わらねぇ。モンスターにやられたことにすりゃいい」


「我らに勝てるとでも?」


「楽勝だ」


互いに獲物を握りつつじりじりと間合いを測る。


「やめましょうフェイさん今は人手がないと……」


一触即発の気配にプラットが静止に入る。


「……」


依然として男達を睨みつけながらフェイは剣から手を離す。


男たちもフェイが手を離したのを見て構えを解いた。


「争っても仕方ありません、今はとにかく手分けしてひたすら探し回るしか……」


プラットが冷静に両者をなだめている最中。


ドン、と鈍い音がして何かが地面に突き刺さった。


「……?」


フェイは何が起きたのかわからず、唐突に後退りした男たちを見ていた。

視線を男たちが今さっきまでいた場所に移す。


「鳥……?」


音がしたその場所には大きな鳥がピンと真っ直ぐに、一本の槍のような姿で嘴から地面に突き刺さっていた。


その鋭利な嘴は硬い岩を物ともせず深々とえぐっている。


「っ!」


男たちはその鳥を見るや否や真上を見上げ、


「ヤリドリだっ!」


遅れてフェイも上を見上げる。


いつの間に集まっていたのか、フェイたちの真上。

青い空を悠々と飛び回る薄い黄色の身体。

ところどころに浮かび上がる黒い斑点模様の巨大な鳥たちが明らかにフェイたちを意識して旋回している。


「どこか隠れられるところにっ」


プラットが叫ぶと共に皆一斉に散開する。

その合図と共にヤリドリたちも一斉に地上へ急降下。

広げた翼を畳み、身体を真っ直ぐに伸ばす。


「うぉぉぁぁぁ!?」


頭上から槍と化した鳥たちがフェイたちの身体を貫かんと降り注ぐ。

迎撃は間に合わない。

空を見上げながらは走れず、ただ背中から刺されないことを祈りながら全力で駆ける。


まるで豪雨の様に振ってくる鳥の群れ。

前を向き、走り抜けた場所に大きな気配が突き刺さるのを背中に感じながらひた走る。


わずか数秒の出来事。


突然の猛威に対し、命からがら逃れることに成功したフェイ達は振り返った光景を見て胸をなでおろした。


「あ、危なかった……」


「怪我は?」


「大丈夫です、掠ってもいません」


道標のように岩盤に突き刺さる鳥達と、その破壊力に背筋を寒くしながら互いの無事を確認し合う。


軽く周囲を見て、獣の数が少なかったことで油断していた。


あと少し反応が遅れれば誰かしら串刺しになっていたのは間違いない。


「こいつら……」


剣を抜き、突き刺さっている鳥たちを叩き斬ろうと歩き出すフェイをプラットが呼び止める。


「大丈夫です、ヤリドリはこうなってしまえば嘴を抜くのに二日はかかりますから、このまま放って置きましょう」


「二日?」


見れば突き刺さった鳥たちはわずかに身体を振動させているものの、刺さった嘴が抜けずにいる。


「今はこの鳥たちは後回しです」


「……そうだな」


まさかの襲撃に動転していた気持ちを落ち着かせる。


そうだ、今優先すべきは攫われた部族の捜索。


一匹一匹鳥を仕留めてまわっている時間がもったいない。


改めて見ればなんとも間抜けな姿に、少し落ち着きを取り戻す。


「しかし結局どうする? 皆で手分けして探すか?」


男たちも無事ではあったようだが、ますます気が立って興奮状態にある。

このままではいつ胸ぐらを掴みかかってくるかわかったものじゃない……。


「……あまり取りたくはなかったのですが、こうなるともうそれくらいしか」


「そうだな……」


一人ずつでの行動は流石に危険だと、二人行動で捜索し、手がかりを見つけた側の者は集落へと戻る。


「連絡手段はどうしましょうか」


「あいにく俺はその類の魔道具はない」


「なら面倒ですが数時間に一度集落に戻りますか?」


「それだと移動範囲がな」


数時間に一度集落へと戻っていたのでは効率が悪いなんてものじゃない。

長期戦を考えて半日で戻るか……。


「おい!」


男たちが呼んでいる。

何か見つけたのだろうか。


「何だよ」


「音だ、今遠くの方から何か音が聞こえた」


ーー音?


「聞こえたか?」


「いえ……、何も」


プラットに聞くも彼女も何も聞こえなかったらしい。


するとわずかに地面が振動し、身体が小刻みに揺れる。


「クモザルどもが騒いでいる」


男二人が同じ方向を見つめながら、耳に意識を傾ける。

プラットは少し考え込んだ後、


「もしかしたら誘拐犯がクモザルの縄張りに入ったのかも知れません。とりあえず見に行ってみましょう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る