でこぼこ地帯

そびえ立つ岩を二つ程移動し、フェイたちは一度地上へと降りる。


あれから虫の襲来は起きず、順調に移動できた。


だが、


「まだ後何回かこれを繰り返すのか……」


プラット曰く、老人が住んでいるのではないかと予想している場所までは後この移動方法を何度か繰り返す必要があるだろうとのこと。

仕方がないとはいえ、なかなか骨が折れる。


「ん?」


数時間ぶりに降りた地面の感触をしみじみと感じていたとき、視界の先に妙に地面が盛り上がっている部分があることに気づいた。


ーーあの盛り上がり方……。


何かが蛇行しながら突き進んだような跡。

もしかしてあれが土モグラの進んだ跡か?


地面を掘り進むモンスターなんてモグラ以外に思いつかない。


そんなモグラの跡と思われる痕跡を見て、フェイはあることを思いついた。


ーー確かリザの奴、あのモグラを食べたことがないって言ってたよな


それどころか、食べるのは嫌そうな反応をしていたはずだ。


ーー今日の飯として登場すれば食べないわけにもいかないだろう


食料として買い込んだものはあるが、「老人宅までどのくらいかかるかわからないからむやみに消費するのはよくない」とでも言って無理やり食わせよう。


謎の機嫌の悪さでパーティ内の空気をぶち壊されたこと、そして羽交い締めにされた際の恨みも合わせて仕返してやる。


ふつふつとこみ上げてきた暗い感情がフェイの思考を支配した。


まだその辺に土モグラがいるかも知れない。

フェイはきょろきょろと近くで生物の動く気配がないか探る。

なんで機嫌が悪いのか知らないが、あのすまし顔を歪ませる様を想像すると自然と口角が上がるというものだ。


そんなことを考えながらざりざりと砂を踏み進んでいると、


「フェイさん! 止まってください!」


ロープと杭を回収していたプラットがフェイの動きに気づいて大声で叫んだ。


「な、なんだよ。別に勝手にどこかへ行くわけじゃないぞ? ちょっとその辺にモグラを取りに……」


びくりと飛び上がったフェイは静かに振り向きながら適当な言い訳を並べ立てる。


悪巧みを言い咎められたようなバツの悪さからか、聞かれてもいないことをベラベラと話してしまった。


だがプラットはそんなフェイの心情など気づいた様子もなく、フェイの後ろを指差して、


「そこら一帯に見えるのは土モグラの跡です! 見えないだけで、そこら中空洞だらけになってるので足を取られますよ!」


ーー空洞?


視線をモグラ跡にやり、そして足元を見て、今踏み出しかけていた足をゆっくりと元に戻してじりじりと後退りする。


「見た感じはなんとも……」


目線を前に戻したところで、フェイは今しがた注意された場所を驚くほど悠々と歩いている大きな獣を見た。


大きな角を頭からはやし、黄緑色の体毛が風にたなびく獣だ。


そいつはなんてことないようにモグラ跡の上を走ったり、飛び跳ねている。


ーーやっぱり普通の地面なんじゃ……?


あの巨体が飛び跳ねても陥没しないのなら、フェイ一人くらいの体重が乗ったところで問題はないはず。

いささか懐疑的にその獣を見ていると、ひときわ大きく獣が跳躍した。

その跳躍はその巨体に反してひどく高い。

自分の頭上を通過していった虫を食べようとしたらしい。

自身の体長の二倍は高く跳びながら激しく首をしならせて、拳ほどの大きさの虫を捕食した。


あれだけ重そうな見た目をしている生き物がよくもあれだけ高く跳べるものだと関心しかけ……。


「いや、違うか」


そこでフェイは間違いに気づいた。

着地の瞬間、まるで木の葉でも落ちてきたかのように衝撃がまるでなかった。

つまり、あの獣は見た目よりもずっとのだ。


ーーだからモグラ跡の上でも……


危ない危ない。

プラットの静止があっても、あの獣を見て大丈夫じゃないかと判断していたら……。

陥没の深さがどこまでかわからないが、もしも全身が埋もれてしてしまえば生き埋めだ。

こんな何の変哲もないような場所に危険が潜んでいるとは。


安易に判断しては駄目だな、あんな獣に騙されるところだったと密かに肝を冷やすフェイ。


「フェイさん、戻ってください!」


またしてもプラットが何事か叫ぶ。

今度はなんだと彼女の視線を辿れば、


「またあいつらかっ」


一度見た覚えのある姿、形。

岩の上からこちらを見下ろすのは数匹のクモザルだ。


剣を抜き放ち、戦闘態勢になったところでぐらぐらと地面が揺れだす。


「うぉぉ!?」


まるで水中から何か大きな物体が飛び出してくるように、砂を押上げながら地面が盛り上がる。

しかしそれは先程見た土モグラの跡のような小さなものではない。

フェイの周囲まるごと持ち上げるような大規模な地形変化。

ずるりと伸び始めた地面に持ち上げられ、フェイを乗せたまま大きく成長する砂は勢いよく上空へ伸びていく。


フェイはそのまま空中へと押し出された。


「ーーっ」


突然の浮遊感。


天地がコロコロと回転する。


慌てて空中で姿勢を整え、周囲を見渡す。

見ればフェイが押し出された砂以外にもいくつも同じようなものが伸びている。


「おらっ」


とっさに抜いていた剣をその砂の塔に付きさして身体を固定。


ギャッギャと耳障りな声に視線をやれば、今フェイのいる砂柱よりやや低い岩の上。

そこにはわらわらと集まった複数の猿の群れがこちらに向けて歯をむき出しに威嚇していた。


「ギャァァッ」


間髪入れず、猿たちはそれぞれの個体が能力を使い地面を操り始める。

ぼこぼこと地面を隆起させ、奴らは森でも作るかのように注ぎ口に地面から砂や岩の樹を生やし、成長させていく。

いや、樹と言うには枝葉がまるで足りない。

幹だけが伸びるそれは柱と表現するほうが正しいか。


伸びる砂柱や岩柱は勝手気ままに伸び進み、すでにそびえ立っているものの横腹を突くように成長するものもある。


柱同士が激突するたびにずんと大きな揺れが起き、崩れたほうの柱が形を失い、落下していく。


「プラットとリザは……」


あの二人はどうなった。

崩れ落ちる柱から舞い上がる土煙で下のほうの視界が悪い。


いた。

土煙の中で動く人影が見えた。

あの服装は……リザか。


ならプラットは……。


「ご無事ですか!? お二人共!」


声がしたのは後方。


フェイとは別の岩の柱に拳を突き刺してぶら下がっていた。


「俺は平気だ!」


しかし今だ地上にいるリザは頭上から降ってくる土砂を躱すのに手一杯らしく、忙しなく駆け回っている。


下を向いていたその時、何故かフェイの頭上から音が聞こえた。


ーーでも上には何も……


今フェイは地上から伸びた砂柱の途中、猿どもが蔓延る岩上よりも高い場所にいる。

この上にあるものなど、真っ青な空と雲くらいのもの……。

しかしゴロゴロと何かが転がるような音は消えず、むしろこちらに近づいてくるような。


上を見上げていると丸く、大きな影が映った。


瞬く間にそれはフェイへと接近し、顔のすぐそばを通り抜けて地上へと落下していった。


「何だっ!?」


落ちていった影は勢いよく地面へと激突した。

石や岩の破片ではない。

見ればそれは丸い形をしたモンスターだ。


この高さからもろに地面に落ちたというのにその身体は潰れることなく、落下先の地面でモゾモゾと動いた方と思えばなんのことはなしに歩き出した。

外皮が随分と丈夫らしい。

弱った素振りも見せず、平然としている。


何故あのモンスターは上から降ってきたのか……。

どう見ても飛んだり跳ねたりできるようなタイプのモンスターではない。


ーーまだ音がっ


またさっきと同じゴロゴロと転がる音。

しがみついている砂柱の上、その頂上付近から今まさに先程と同じモンスターが落下するのを見た。


身を小さく屈め、降ってくるモンスターに当たらないように縮こまる。


今あのモンスターが出てきたのは砂の中。


ーーそうか、土の中にいた彼らがその砂ごと持ち上げられて……


地上にいたフェイと同じように上へと運ばれ、そして砂の中をかき分けるつもりで空中に飛び出して落ちてきたのだろう。


あるいはフェイと同じく地上に出ていたか。


どちらにしても、危険なことには何も変わらない。

ゴロゴロと次々に砂を散らしながら上から降ってくるモンスター。


落石のような身体を縮こませ続けることで回避。

十を超えるそれをしのいだところで、頭上には穴だらけになった砂柱だけが残った。


「っ」


ひとまずやり過ごしたと息をつく間もなく、グラグラと砂柱が揺れる。

下を見れば別の場所から伸びてきた岩柱が砂柱の根元をへし折っていた。


為す術なく巨大なそれが倒れる。

衝撃に地面が揺れた。


崩れた砂柱は猿どもの制御下を外れ、ただの砂へと戻っている。


すんでのところで大きく跳躍し、難を逃れたフェイは身体についた土埃を払いつつ土煙に満ちた地上に眉をひそめた。


ーーとんでもねぇな、全く


今まで当たり前に足元にあった地面そのものに襲われているような、そんな感覚。

自然を相手に戦うと考えれば人間に勝機はどれだけ残されているか。


ーーあの猿どもを早く片付けなきゃな


しかし実際の相手はクモザルの群れ。

自然じゃない。


フェイが落ちたを見たのか、岩柱の頭上からフェイを心配する声が聞こえる。

大丈夫だと答えるように、片手を上げる。


「ひとまず、猿たちを狙いましょう。このままじゃキリがありませんっ!」


プラットの声。


この縦横無尽に変化する地面に呑まれたままではいつやられるかわからない。


フェイは片手で口元を覆い、土煙を吸い込まないようにして駆け出した。


ガラガラと崩れた岩柱の近くで音がしたので近寄ると、丁度リザが埋もれた中から這い出してくるところだった。


「大丈夫か?」


「なんともない、あの女は?」


あの女って……。


「プラットは今、上だ。岩の側面につかまってる」


視線をやると伸びた柱の側面を走り回るクモザルたちの姿。


「馬鹿な猿たちがわざわざこっちまできてくれたみたいよ。早いとこ殺しましょ?」


どうやら土まみれになったことが気に触ったらしい。

静かに漏れ出る殺気から怒っているのが伝わってきた。


「プラットには当てないようにな」


言われなくとも、と鼻を鳴らすリザが懐から取り出すのは丸い金属のような球体。

手のひらにすっぽりと収まる大きさを狙いを定めるように掲げると発光を始める。


「で、俺はっ」


フェイはまず猿に接近するところから始めなくてはならない。

比較的平らな部分を疾走し、猿たちへの距離を詰める。


ーーこの感触……


踏みしめている地面はまるで空の箱を上から踏んでいるような奇妙な感覚。


「これがモグラに掘られた地面か」


さっき見ていた地面の殆どは猿たちによって操られ空への柱と化したと思っていたが、どうやらまだ残っていたらしい。

幸い比較的空洞の少ない部分だったらしく足を踏み込む際に想定より深く沈む程度で済んだ。


「ん?」


駆けている最中、地面を蹴るたびにその衝撃でぽんぽんと宙を舞うナニカがいることに気づいた。


それはまるで綿埃のようにふわふわとした見た目で、少し灰色がかった色をしている。


「邪魔くせぇ」


踏み込むたびに顔の高さまで舞い上がるそれは視界のあちこちに点在していた。

空中に滞在するそれらを吸い込みそうになり、フェイは振りかぶった剣を軽く薙いだ。


その風圧により、舞い上がった埃たちはどこかへ散っていくはずだった。


だが、


「っ!?」


感触があった。

何か物に当たった感触が。


しかしそれはおかしい。

フェイは埃を振り払うつもりで剣を薙いだ。

何の抵抗もなく、剣が空気を押しのける。

ただ、それだけのはずが。


弾き飛ばした埃はバラバラに飛んでいく。

それらは振った剣の勢いそのままの速度で周りに生えた柱にぶつかり、


その埃がこちらへ戻ってくるのを見て、フェイは即座に悟った。

あれも何らかのモンスターなのだと。


「フェイさん、戦っちゃいけません! それは衝撃を加えると硬質化するーー」


事態に気付いたプラットが叫ぶ。


しかしその忠告は少し遅かった。

すでに弾き飛ばした埃たちは四方八方をでたらめに跳ね回っている。

フェイが弾き飛ばしたのはせいぜい五匹程度だったはずなのだが、奴らは跳ね返った際に別の仲間に衝突したらしく周囲はモンスターの弾丸が飛び交う地獄と化した。


「そのモンスターは私が処理しますから、フェイさんはとにかく猿だけ狙ってください!」


ーーそう言われてもな……


猿どもが作り出した柱はもちろん、地面に落ちた岩の破片なんかにも当たって跳ね返るせいでほとんど三百六十度、すべての方向からモンスターが飛んでくる。


「っと……」


そのすべてを避けながら、足場の悪いこの地帯を疾走するのは難易度が高い。


前方から飛んできた埃を屈んで避け、次に横から飛んでくるのを跳んで避ける。


「あっ」


着地と同時に足が深々と地面に埋まる。

陥没した地面を踏み抜いてしまった。


動き続けていたフェイが止まった瞬間、示し合わせたようにあちこちから襲来する埃。

前方、左斜め、上からも接近。


「このっ」


上体をぐりぐりと大きく動かし、足を使わず、なんとかそのすべてを回避ーー。


「くっ」


背中から跳んできていた埃が身体に衝突。

大きな石を至近距離から思い切り投げつけられたような、そんな衝撃だった。


ーー頭に当たったらまずい


続けざま、また背後から二つが背なかに当たり、わずかに肉にめり込んで跳ね返っていく。

力任せに足を引き抜き、軽く振って土を落としそのまま疾走。


止まっていれば良い的だ。

少しでも動き続けなければ……。

しかし気づけば跳び回る埃の数はさらに数を増し、身体に食い込む数もまたそれに比例して増えていく。


きっと服をめくれば身体中に青あざができているだろう。


「っぐぅ」


脇腹に突き刺さった埃が一瞬フェイの呼吸を止め、声が押し漏れる。


膝はつかない。

止まれば今以上にこの弾丸の餌食になる。


足を止めず、また走り出すフェイをまるであざ笑うかのように頭上からギャッギャと不愉快な鳴き声が聞こえる。


前から弾丸。

そして今度は再び地面も揺れだした。

またかよ、そんなことを思ってる間にもすでに地面は揺らいでいる。


まず跳んできた埃を斬り捨てるつもりで一閃。

しかし狙いとは異なり、刃先に当たっただけで埃は跳ね返り、斬り捨てる前に跳んでいってしまう。


だが気を取られている暇はない。

すぐ意識を移し、蠢く地面の動きを読む。

水だったらたぷんたぷんと音がしそうなものだが、動いているのは地面。

ざりざりとあまり聞き馴染みのない音と共に、波と化した地面がフェイを飲み込むように上から覆いかぶさってくる。


跳躍、は間に合わない。

フェイは腰のあたりに剣を構えた。


ぐらぐらと足元が揺れているせいで妙に踏ん張りが効かない。

が、


「はぁっ!」


これくらい切り裂けないで何が勇者か。


振り抜いた剣閃は土の波を吹き飛ばし、斬りとばした土砂は勢いを失いばらばらと落下した。


しかしこれでは猿に近づくどころの話ではない。

土の波を切り払ったところでまた新たな波と化し、フェイを呑み込まんとしている。

地面は流動的に蠢き、絶えず形を変え、フェイを襲ってくる。


逃げようにも相手は地面。どこへいこうとその魔の手から逃れることができない。


ならばと空へ伸びた柱に飛び移り、猿を狙おうとすれば飛び乗った柱はすぐさまその形を崩し、崩壊してしまった。


小癪な猿どもだ。

初めに遭遇したときよりも大きな群れな事もあってか、地形の変化の具合も大きければ立ち去る様子もない。

自分たちの縄張りを荒らす不届き者を仕留めるまで、攻撃を辞めるつもりはないようだ。


そうして手をこまねいているフェイの視界に、眩しく光る何かが横切った。


光はフェイの頭上を跳び、柱をぐるぐると走り回る猿たちの足元へ着弾。

崩れ落ちる柱とともに足場を失った猿たちが空中へと放り出される。


「ほら、今のうちよ」


言いつつ、次の攻撃を構えるリザ。

光弾は正確に飛び、猿どもが走り回る足場を破壊しまくっている。


さすがは王直々に選出された人材と言うべきか、こういうときのあいつは頼りになる。


ーーあとはもう少し愛想が良ければいうことなし……


何故かリザに睨まれた気がして、慌てて落下中の猿どもへ駆け寄る。


猿たちは器用に着地しているようだが、それでも落下の衝撃を殺しきれていない。


「さて」


見えるのは五匹、どれからいくか。


猿共がこちらに気づく。


ぎゃっぎゃと少しくぐもった鳴き声。

また地面を操ろうとしたのだろうが、


「ほい、おしまい」


高速で駆けたフェイの動きに反応すらできず、血しぶきを上げながら五匹分の身体がずり落ちた。


この距離まで近づけさえすれば苦戦するような相手ではない。

ぶん、と血を払い次の猿へ狙いをつける。


リザが足場を崩し、フェイが近づき、斬る。


リザは凄い形相で光弾を次々に打ち出し、駆ける猿どもの脚を吹き飛ばす。

正確無比な光弾は次弾までの間も短い。


猿達も危機感を覚えたのか、フェイよりもリザの方に狙いをつけその足場を操るも、彼女はその気になれば近接戦も容易くこなす。


当然そうくると予想していたリザは地面が揺らごうと動揺することなく、今自分を狙った猿目掛けて即座に光弾を飛ばす。


猿共もすぐ目の前に光弾が飛んで来れば地面を操っていられないらしい。

ぎゅっぎゅっと情けない鳴き声を上げて逃げ惑う。


しかしこの猿の群れの数だ、中にはリザの手が回らない猿もいる。

今もこそこそと岩柱の影に隠れてリザを攻撃しようとしている猿が、小さく勝ち誇ったように口を開けた。


「そうは、させねぇよっと!」


そのやり残しをフェイが素早く狩っていく。

地面を操る能力は確かに強力だ。

しかし猿達自身に警戒すべき点はない。


地面を操られる前に攻撃さえ出来ればこちらの勝ちだ。


さらに数匹の猿を狩ったところで、跳ね回る埃の弾丸が少なくなったことに気づく。


同時に視界を横切ったプラットが飛んでくる埃の弾丸を手のひらで受け止め、掴み取る。

流れるように小瓶へ閉じ込める早技。


あのモンスターは身体のどこかにぶつかった瞬間に別方向に跳んでいってしまうのに、どうやって受け止めているのか……。


相当な技術が必要なはず。


「任せてくださいと言うだけあるな……」


プラットもリザも良い働きをしている。


ここは負けていられない。


「リザの手を借りなくてもやれるって所見せとかねぇとな」


援護がなくともあの猿くらい狩って見せねば。


くだらない男の意地。


だがその意地くらい簡単に通して見せねば魔王を倒すなど口にする資格はない。


ぎゅっと足場を踏み固めてから大きく跳ぶ。


巨大な岩柱まで跳んで着地。


タート国の時のように壁を蹴るイメージで着地してすぐに別の柱へと跳ぶ。


狙いは砂柱。


そして、その側面を動き回る猿どもではなく、その柱自体に狙いを定めて一閃。


太すぎる柱、岩の柱は両断が難しくても、材質が砂まじりの柱なら全開の一撃ならぶっ壊せる。


「あぁぁぁ!」


柱を切り崩し、ずり落ちた柱から猿共が無様に地上へ落ちていく。


フェイは崩れ落ちる柱に足をつけ、蹴飛ばす。

勢いよく地面へぶつかる直前、くるりと回転し着地。

じんじんと落下の衝撃が足を襲うが、構わない。


落ちてくる猿を眺めながら、剣を構える。


そうして猿が着地する瞬間を狙って、一閃。

蜘蛛のように生えそろった足を全て巻き込みながら、その胴を両断した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る