案内役


「ここが、例の広場らしいけど」


フェイたちがやってきたのは昨日の聞き込みで聞いた案内役がいるという広場。

広場と言っても何か目印があるわけではなく、ただ少し動き回れるくらいの空間が広がっているだけの場所だ。


「確かゴタゴタした荷物を抱えた、短髪の……」


キョロキョロと辺りを見渡しながら、教えてもらった特徴を口に出していると、


「あのヒトじゃない?」


リザが指し示す先には、辺りを通る人たちへと熱心に声を掛ける女性の姿があった。


「セントに向かう方いますかー? でこぼこ地帯を抜けられるなら私、プラットが安全に送り届けさせていただきますよー」


やや黄色がかった緑色の短髪。

背なかには身体よりも大きな背嚢。

あちこちに何らかの用途に使うであろう道具が吊るさっており、女性が動くたびにガタガタと音を鳴らしている。


確かに聞いていた特徴と一致する。


「あの」


「はい、なんでしょう? ご依頼です……か?」


話しかけた瞬間、ぐるりと勢いよく顔を向けてくるものだから、少し面食らってしまった。

しかし驚いているフェイと同じように顔を向けてきた相手もまたフェイの顔を見て固まっているようだった。


「えっと? もしもーし」


「あ、すいません。じろじろと失礼を……」


顔の前でぶんぶんと手を振ってみると、女性は慌てたように正気を取り戻した。


「依頼、したいんだけどその前に。あなたがプラットさん、でいいんだよな?」


「はい! 私がここらでは名の通ったプラット・ドール本人です。間違いないですよ」


とん、とん、とん、と握りこぶしを喉の下あたりで叩きながらプラットは言う。


そしてそのまま目線を動かすと、


「そちら、お連れの方ですか?」


ちらとリザの方へと視線を向けたプラットだったがリザは向けられた視線など知らないとばかりに明後日の方向をみている。


ーーなんか今日は機嫌悪い……?


「あーっと、あんまり気にしないで、少し気難しいだけだから」


薄々思っていたがこの女、俺以外の人間に対しても愛想が良くない。


勇者の連れとして、もう少し周りの人間にも気を配ってほしいものだ。


もっと言えば俺にも。


フェイはそんなくだらないことを考えつつ、


「それで依頼したい内容なんだけど、俺たち二人をでこぼこ地帯に住んでる老人の家まで案内してほしい」


気を取り直すように今回の依頼の目的を告げた。


だが、


「老人の家、ですか……?」


プラットの反応はあまり芳しくなかった。

あまりピンと来ていない様子で不思議そうな表情を浮かべている。


「昨日、街の人から聞いてさ。なんでも予知の能力が使える爺さんがあそこに住んでるらしいって話で」


「予知の、おじいさんですか……」


首を傾げるプラットはやはり老人の情報をしらないようだった。


てっきりこの辺りの案内役をやってるなら知っていると思ったが。


もしかしたらあまり有名ではないのか?


地元の爺さんくらいの世代の人間しか知らないような話で、若い人間には知られていないとか……


だとしたら少々当てが外れたなと思っていると、ぐっと右手を強く引っぱられた。


「知らないならわざわざ金を払ってまで案内してもらうことなんてない。私達だけでいいわよ」


リザはそういってぐいぐいと袖を引っ張ってくる。


「待て待て、決めつけるのが早いって」


「早いも何も今話してたでしょ。案内役って言っても目的地がわからないならその人に用はないじゃない」


妙に刺々しい口調のリザの態度は気になるものの、言い分は確かにその通りだった。


「その老人宅はわからないですが、でこぼこ地帯に人が住むんだとしたらおおよその場所は予想できます」


「え、本当に?」


二人の言い争いに割って入ってきたプラットが言う。


「はい。伊達に長年ここの案内役をやってませんよ、任せておいてください。お連れさんにもきっと満足いただけるよう私頑張らせていただきますから」


プラットはリザの刺々しい態度にも臆することなく、そう言い切った。


自身満々な物言いは見栄や嘘で出たものとは違う雰囲気を感じる。


「なら頼もうかな。俺たちはこの周辺の地形にも詳しくないし、危険なモンスターとかの情報も共有してくれると助かる」


「わかりました」


準備はできているからとさっそく出発することに決めた俺たちは、勝手に話を決められて不満げなリザをなんとか宥め、予知ができる老人が住むというでこぼこ地帯へと向かって街を出た。


ーーーー


「ここが……」


『でこぼこ地帯』


一度入れば、下手をすれば帰ってこられないこともあると噂される危険地帯。


フェイとリザ、そして案内役のプラットを連れた一行はするりとその場所へと足を踏み入れた。


まず抱いた感想は、砂、岩。

地面は硬い部分もあれば、柔らかな砂の状態になっているところまでさまざまで、まるで樹のように伸びる岩々があちこちにそびえ立っている。


ちらと見ればその長い岩の周りをちょろちょろと動く生き物の姿。

あまり木々がなく、荒れ果てているように見える大地ではあるが、そこそこに生物たちの気配は見受けられた。


「私が先導しますので、お二人は私の後へついてきてください」


プラットがそう言って一行の先頭へ。


「ここの地帯にいるモンスターはーー」


プラットが口を開き、生息するモンスター達についての説明を始めようとした瞬間、


「来ますっ、足元、注意してください!」


プラットの声が飛ぶ。

見れば足元が隆起し、その盛り上がりは瞬く間に顔のあたりまで近づいてくる。


「っ」


すんでのところで巻き込まれそうになったのを何とかフェイは回避する。

盛り上がった地面は月日の流れた大樹のように大きく成長していき、フェイが見上げるほどまで伸びていった。


それは、周りのあちこちにある岩々と同じような形状。


「クモザルです!」


見れば今伸びていった岩の柱の先端部分に飛び乗るモンスターの姿が。


「この地域一帯の地形変化の原因、それがあのモンスターです」


六本ある足を器用に動かし、まるでクモのように移動する姿は少し気持ちが悪い。

猿がギャッギャと汚い鳴き声を発すると再びフェイたちの足元が揺らぐ。


「重心に気を付けて、足を地面に取られないようにしてください!」


ぐらぐらとまるで揺れる波の上を歩ているような感覚。

転ばないように腰を落とし、バランスを取っていると再び先のような盛り上がった地面が今度はフェイたちへ向け、横向きに伸びてくる。


材質は砂だ。


満足に動けない中、砂の柱が目の前へと迫ってくる。


「ちっ」


視線を向ける。


先の柱にさらに数匹のクモザル。

奴らはギャッギャとこちらを威嚇するように鳴き声を上げ、敵意全開で怒りを露わにしていた。


ーー舐めんな猿ども


フェイはゆっくりと伸びてくる砂の柱を切り裂くと、その砂の塊をむんずと掴み、


「これでも食ってろ!」


腕を振り回して威嚇している猿ども目掛け投擲した。


砂塊はまっすぐ、ボロボロと周りの砂を崩壊させながら飛んでいき、一匹の猿の足へと着弾。


しかしやはり材質が砂だからか、足をへし折る程の威力は出なかった。


それでも今の一撃が効いたのか猿どもは野太いうめき声をあげてすごすごと立ち去っていった。


「このでこぼこ地帯で厄介なモンスターが今の猿、クモザルです。あいつらは地面に干渉する能力を持っているので、遠くからでもああやって地面をこねくり回してくるんです」


プラットは去っていった猿どもの方を見ながらそう言った後、


「それにしても、あんなにあっさりと猿たちを追い返すなんて」


「あぁ、まぁこれくらいはね」


思ってもなかった素直な反応が少し照れくさく、余裕ぶった態度をとってしまった。

これがリザ相手なら、きっと全然大したことはないと言い放つか、そもそも何も言ってこないに違いない。


ーーていうか、本当、何の反応もないし……


今の襲撃でもリザは一人何も起こっていないような、涼しい顔をして佇んでいた。

知らない人が見れば、凛としているとかなんとか好意的に見れるんだろうが、フェイからすれば今のリザはただ気乗りしない相手と行動しているから機嫌が悪い。


ただそれだけに見える。


「これなら、少し厳しいルートを取っても大丈夫かもしれませんね……」


そう呟いたプラットはその巨大な背嚢をごそごそとあさり始めた。


取り出したのは肘から指先程度の長さの鉄杭。

さほど太くはなく、片手で握れる程度の太さだ。

プラットはその鉄杭を次々に背嚢から出していく。


そして取り出したロープを杭に結ぶと、


「よいしょっ!」


ものすごい勢いで振りかぶられた鉄杭は風を切りながら吹っ飛び、そびえ立つ岩に深々と突き刺さった。

そしてそのロープをするすると登っていく。


「それでは、付いてきてください」


突き刺した杭の部分まで登ったプラットがフェイたちへ呼びかけてくる。

流石はこの地帯を専門に案内するだけあって、これくらいの芸当はお手の物というわけか。


やや面食らいつつもフェイもプラットのあとに続く。

登った岩の上、というか岩肌の真っ只中は足場がなく、一本のロープにしがみつく以外に身体を支える術がない。


「ちょっと待っててくださいね」


言ってすぐプラットが岩に向かって蹴りを繰り出した。

恐ろしいことにそのつま先は硬い岩肌を貫き、ポッカリと足の形をした穴が出来上がった。

がん、がん、と数度岩を蹴りつけ四つの穴を作ったプラットは、


「ここを足場にして少し待っていてください」


フェイが登り、リザがむすっとした顔をしながらロープを登ってくると、プラットはロープを手繰り寄せ、垂れ下がっていたロープの先端を口に咥えた。

プラットはそのまま手に持った別の鉄杭を岩肌に突き刺しながら、軽快な動きで横へ移動していく。


ーーさっきの猿みたいだ


杭に結ばれたロープが今度は横に引っ張られ、岩に一本の線を引く。

フェイとリザの二人はプラットの作った穴に足を引っ掛けながら、横に伸びていくロープを離さないように握りしめる。


ピンとロープが伸びきると、


「固定しました、ロープを伝ってこっちまでどうぞ」


「固定しましたって……」


確かにロープは全くたるまず、一直線に貼られているが。


ーー落ちないか? これ


どうやらまた向こう側で足場用の穴を作っている様子のプラットを見つつ、恐る恐る下を見るフェイ。


「大丈夫です、もし落ちても私が助けますから!」


こちらの思考を読んだような声掛け。


「適当言ってねぇだろうな……」


ボソっと本音が漏れる。


気持ち強めにロープを握りしめ、足場から一歩先へ踏み出す。


「うぉぉ」


つま先を岩に押し付け、体重でたわむロープにしがみつく。


まだ不安が残るが、すぐに落下するほどやわでもないらしい。


そのままじりじりと蟹のように動きながら、無事にプラットの元までたどり着く。

そっと穴に足をかけて、


ーー今度は手の穴もある……


用意されていた手用の穴に手を突っ込んで身体を固定した。


「狭いから、ちょっと寄って」


気づけばすぐ隣にリザが。

もう渡ってきたのか。


ーー恐怖心とかないのかよ、こいつ


「渡れましたね、それじゃっ」


プラットがぐっとロープを引っ張るとあれだけ深く岩にぶっ刺した鉄杭が嘘のようにすっぽ抜ける。

そのまま宙を舞った鉄杭を一瞬で引き寄せた。


「っ……」


さっきから思っていたが……。


ーー見た目の割に、めちゃくちゃ怪力じゃねぇかこの女


「今の手順で、進んでいきますね」


事も無げに次の杭を打ちに移動を始めるプラット。


それから、同じ手順を繰り返す。

一度に進めるのはロープ分の長さ、フェイ達もだんだんと慣れてきたことでその進行速度も上がっては来たがわざわざこんなことをしなくても下の道を行けばいいだけのような気がする。


そんなことを思いふと下を、フェイたちが岩を登り始めた場所を見る。


そこは先程までとはまるで別の場所のように変形していた。

地面は大きく盛り上がり、ぐねぐねと歪み、道とは呼べぬものになっていた。


ーーなる、ほど


さっきまでの道を行こうとすれば、あの見るだけで進むのが大変そうなルートを取らなければならなかったわけだ。

高い位置から見たことでそのルートの先の方まで眺めることができた。


危なくはないが、時間がかかりすぎる。


登ったり下ったりと忙しなく、体力を使いそうな割に全然前へ進めない。


そんな調子で岩伝いの移動を繰り返している中、プラットがこの一帯にいるモンスター達について説明してくれた。


「一番気をつけなくてはいけないのはやはりさっき私達を襲ってきたクモザルです。奴らは縄張り意識が強く、この一帯のほとんどどこにでも姿を見せるので目があったらすぐ戦闘になると思ってください」


「さっきもいきなりだったよな」


こちらの姿を見るやいなやすぐ攻撃してきた。


「このでこぼこ地帯で起きる地形変化の主な原因は奴らで、個体ごとに操る地形の規模は異なります。基本的には身体の大きなクモザルほど地形変化の規模も大きいのですが、稀に小さい個体でも大規模に変化させてくるものもいるので油断は禁物ですね」


まぁ、基本見つけたら戦闘。

すぐ追い払うと覚えておけば良いか。


「次に、土モグラ」


「あー、それ街の屋台で食べたな」


「美味しかったでしょう? 私の好物なんです」


「そうか? なんか噛んだ後の臭みがなぁ」


「それは単に食べ慣れていないだけです。慣れれば二、三匹ぺろりといけちゃいますよ」


相変わらずひょいひょいと身軽に移動するプラット。

あの肉が好みとはなかなか……。

最初の印象よりももしかしたらずっとたくましい女なのかもしれない。


「リザは? 街を歩いてるときに食べなかったか?」


「さぁ、そんなもの見なかったわ。見てたとしても食べてないでしょうけど」


「じゃあ捕まえたら最初にお前にやるよ、屋台では串焼きにしてた」


リザはきっとこちらを一睨みして、


「移動してる途中にロープが揺れないといいわね」


「おい、やめろよ。それやったらお前に飛びつくからな」


こいつなら平然とした顔でやるに違いない。

なんだか今は機嫌が悪いみたいだし、躊躇なくやる、絶対やる。


「お二人共仲が良いですね、私はいつも一人仕事なので羨ましいです」


これは果たして仲が良い内に入るのか? いささか疑問なところだが。


「いつも一人か? 誰か仲間は?」


「いえ」


完全に一人でやってるのか。


「客は何人まで取るんだ? 」


この危険地帯、通るだけでも一苦労。

それに加えて客の面倒まで見なくてはならないのだ。

この複雑なルートは通らないにしても、下の道を大所帯で進むなんて考えただけで頭が痛くなる。


「そうですね、今までで一番多かったのは十五人程ですかね。商人の方でしたら荷の量次第で……」


「十五って、そんなに引き連れてこの地帯を抜けられるのか?」


「ええ。ですからお二人も安心いただいて大丈夫ですよ」


一体どんな方法でそんな規模の人間を案内しているのか。

自信満々な表情を見るに見栄を張っているわけでもなさそうだ。


「それで、土モグラの話でしたね。彼らの注意点はーー」


話を戻し、プラットが改めて説明を始めようとしたときだった。


「んっ? 何だ、虫が……」


すっかり慣れたロープ移動の途中、周りに白い色の昆虫が近寄ってきた。

奴らは様子を伺うように、少しの間フェイの近くを飛び回るとほぼ空中にいる身動きの取れない状況下にあるフェイ目掛けて飛び込んできた。


「何だ、こいつら!」


素肌の露出している部分を狙い、風にのって突撃してくるその虫たちはフェイの腕や足に身体をぶつけてくる。


「ーー痛っ!」


予想外に虫たちがぶつかった場所に痛みが走る。

多少機敏に動くとはいえ、たかだか指先程度の虫の突進でなんでこんなに……。


見れば少量ではあるが出血している。


「鬱陶しいっ」


しがみついていたロープから一瞬片手を離し、顔に向けて飛んできていた一匹を掴み取った。

すぐさまロープを握り直しつつ、拳を開く。


握った感触が硬い、そして思ったよりも表面がざらついている。


拳の中で息絶えたその白い虫の体表は血に濡れていた。


その異様に伸びた口器を見るに、吸血性の虫。


「ーーくそっ、また」


そうしてる間に別の虫がバチバチと身体にぶつかってくる。


この虫の表面はやすりのようになっていた。

その身体を勢いよくぶつけ、こすりつけることで対象を出血させる。

そしてその血を身体に纏わせるのだろう。


鬱陶しいが、一匹程度がつける傷は大したものではない。

しかしフェイの目の前にはいつの間にか視界一面に飛び回る数の虫たちが飛び回っていた。


「ーーっ」


腕を振り回そうにも今の状態では落下するおそれがある。

抵抗できないのを感じ取ったのか虫たちの標的がフェイに集中する。

まるで豪雨のように降り注ぐ虫たちの襲撃がフェイの身体をじわじわと削り取っていく。


防御することもできず、今はただ虫たちの良い的になることしかできない。


「なんとかこっちまで来てください!」


フェイは虫たちの猛攻に耐えながら急いでロープを伝い、プラットの元へ向かう。

いつの間にか腕は血まみれになり、だくだくと流れる血が脇を伝い腰のあたりに血が溜まり、服へと染み込む。


ほうほうのていで逃げるフェイがようやくプラットの近くまでやってくるとプラットがガンっと手に持った何かを岩に叩きつけた後、


「息止めてください!」 


茶色い粉末のようなものを空中にばら撒いた。

フェイの周りに集る虫の群勢に叩きつけるように撒かれたそれは風に舞い、流される。


効果は一瞬にして現れた。


粉が虫たちを通り抜けていってすぐ、虫たちの挙動が不自然に乱れた。

上に下に空中で意味もなくフラフラとよろけたかと思うとその小さな身体を震わせ、一層大きく羽音を鳴らした後に無様に地上へと落下していく。

ぼとぼとと次々に落ちていく虫たち。


「リザさんは今のうちに!」


プラットの合図で一人取り残されていたリザがこっちへと寄ってくる。


「痛ってぇ、なんだ今の虫共は……」


「棘虫の集団です。あんなに群れているのは私も初めて見ました棘虫トゲムシ、近くに巣があったのかもしれませんね」


そしてプラットはフェイの姿を見て、


「あぁ、あちこち傷だらけ……。少しじっとしていてください」


そう言うと布切れと軟膏を取り出した。


「沁みますよー」


この窮屈な状況下で器用に身体を動かし、フェイの血を拭き取っていく。


「痛っ! ちょっ、痛ぇ!」


布で血を拭き取るまでは耐えたが、軟膏を塗り始めた段階で声が出た。

沁みる。

それはもう身体が勝手に逃げようとするくらいに。


「じっとしててくださいってば! リザさん、少し抑えていただけますか?」


ひょいひょいとまるで跳ねるようにやってきたリザがプラットの声を受け、するりとフェイの背中から腕を絡めとり、抑え込んだ。


ーーこんな時ばっかり素直に言うこと聞きやがって……


相変わらず表情はむすっとしたままだが、こころなしかフェイの悶絶する声を楽しそうに聞いている気がする。


それからしばらく、でごぼこ地帯に男の叫び声が響き続けた。

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