第14話『気☆ガァ―ル』ちゃんと『気☆ガナーイ』君

「お、孝介ちゃん♪元気してたかい?」


「はい。毎度。いつも元気だけが取り柄ですので」


(へえー。木島さんも『赤』ですよー。俺ってやっぱり『すげえイケてる』んじゃねえの?)


「それでお願いしてた『サンプル』はどう?」


「ええ。いくつか持ってきましたんで。やっぱり定番の『チェック柄』は今年もいいかと。あとは新しいのもいくつかですね」


「へえー。『ニット』でこういうの面白いね」


(木島さんって『こう』、何て言うか…、俺ももう三十路だけど『大人の女性』って感じなんだよねえ。銀座の高級なお店のホステスさんみたいと言うか…。スタイルもすげえいいし…。彼氏とかいるのかな?そういう話って聞いたことないし…)


「ええ。前の展示会で見つけたやつですね。それは色もそれだけありますし」


「なんかいいかも。これっていくらなの?」


「メーターにせんご、いや、木島さんならメーター二千四百五十円にしますよ」


「おいー。今、わざとらしいぞおー。でもいいわね。とりあえずこれを『一メートル』分、サンプル用に送ってもらえる?」


「分かりました。明日もこっちの方を回りますんで。反物で会社にありますから明日持ってきますね」


「ホントに?助かるぅ。ありがとね。孝介ちゃーん♪」


「おい!孝介!私には言葉の意味がチンプンカンプンだぞ!ちゃんと説明しろよなあー!」


(『コマンド』


 『話す』


 →『気☆ガァ―ル』ちゃん


 今、商談中だからね。ちょっと待ってて。後で説明するから)


「なんだ。『商談中』ぞな?『パチ・んこ』とはまた別なのか?どっちも『お金稼ぎ』じゃないのけ?」


(まあ…、そうだけど…)


「孝介ちゃん?」


「はい!」


「何?ボーっとしてた?私に見とれてたとか?」


「あっは、今はそういうのはデリケートな発言になりますから勘弁してください。でもいつもすごくお綺麗で彼氏さんが羨ましいなあーとは思いますよ」


「こら…。三十路越えの独りもんをつかまえてその言葉はないよ。孝介ちゃん」


「え?木島さんって…」


「孝介ちゃんじゃなかったらぶっ飛ばしてるとこだよ。こういう仕事してると『出会い』があんまなくてさあ。今流行の?『婚活アプリ』とか?そういうのは『怪しすぎる』し『怖い』からしないからね。まあ、当分は『仕事』が彼氏っすよ」


「へえ。勿体ないですね」


「て、何を話してんだ。いかんいかん。仕事だ!仕事!他にも『サンプル』見せてー」


「はい。次はですね…」


(へえ…。『濃度』が微妙に変わるけど『赤』のまんまだ。てか、後半でかなり濃い『赤』になった…。これって…)


 そして『伊太利亜』を後にする孝介。


「おい。さっきの『商談中』ってなんぞい。他にも『ニット』とか『サンプル』とか『反物』とか『チェック柄』とか」


(『コマンド』


 『話す』


 →『気☆ガァ―ル』ちゃん


 『商談中』ってのは仕事の、いや、商売の話中のことね。サラリーマンで営業職だから)


「『営業職』っすか?」


(そう。『もの』を売る仕事。それで俺は『生地』を売ってるのね。洋服とかのね。ほら、『気☆ガァ―ル』ちゃんも着てるでしょ?)


「ああ、これかあ。それで?」


(『チェック柄』はその生地の柄の一つであり…、うーん。説明が難しい。まあ、『こういうのが今年は流行りそうですよ』ってお勧めしてるのね。今のはその洋服を作る『デザイナー』さん。『気☆ガァ―ル』ちゃんもお気に入りの洋服とかあるでしょ?)


「そりゃあめちゃめちゃ拘ってるだわさ。私はシャレオツで有名だからな。それより孝介。さっきからご機嫌そうだが『赤』がかなり見えたのか?」


(ドキッ。そういうの鋭いね。『気☆ガァ―ル』ちゃんは)


「でも孝介。あれだぞ。『気☆ガァ―ルアイ』のルールを忘れたのか?」


(へ?)


「本当に孝介が好きな相手の『色』は見えないのじゃねん。孝介がいくら『赤』を見ても孝介にその気がなければ意味ナッティングじゃねえの?」


(た、確かに…)


 孝介君は意外とモテるようですが、『気☆ガナーイ』君ですね。これは意外と大きな問題ですね。

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