第9話氣☆ガァ―ルモード!『バツイチ』ってなんだあ?
「言いにくいんですけど。孝介さん、バツイチじゃあないですか」
「まあね。でもそれってもう一年以上前のことだけど…」
「おい!孝介!あんた一年以上前に『バツイチ』だと!」
(まあね。あれ?『気☆ガァ―ル』ちゃんに言ってなかったけ…)
「うーーーー、けしからんぞい!で、『バツイチ』ってなんだあ?」
(知らないのかよ!『バツイチ』ってのは結婚してから離婚したこと。ようは『離婚』を『バツ』と言って一回目の『離婚』だから『バツイチ』って言うの。これが二回、三回と増えると『バツニ』、『バツサン』となるのね)
「ほへえー。そもそも『結婚』とはなんぞい?」
そこで後輩の椎名との会話も並行して行う孝介。
「でもその…、『お相手』が取引先の方だったじゃないですか。僕も結婚式に呼ばれましたし。確か『岩島企画』の事務の人でしたよね。山崎さんって僕も新人の頃に孝介さんと同行してた時から見てましたがすごい美人さんでライバルもかなり多かったって聞いてましたよ」
「みたいね。『みどり』のやつは表の顔と裏の顔のギャップがすげえのよ。俺もそれに騙された口かな。まあ、いいところもたくさんあったし。逆もまたたくさんあった。結婚前の付き合いも長かったからさ。結婚前には『みどり』のいいとこも悪いところもたくさん知ってた。それでも『こいつと一生一緒にいたい』と思って決めたことだったし」
「へえ。僕も今付き合ってる彼女がいるんですが…」
「何!?それは初耳だぞ。おい!『バツイチ』で親権も相手にとられ、独りぼっちのかわいそうな先輩に『合コン話』のひとつやふたつお願いしますよー」
「ていうか…。僕の彼女については聞いてくれないんですね…」
「おい!孝介!さっさと教えろよなあー!急に呼び出したのは孝介の方なんだぞ!で、『結婚』とはなんぞな?」
(ああ、ごめんごめん。『結婚』てのは男女が、いや、今は『同性婚』もあるか。まあ、愛し合う二人が『一生一緒に人生を共に歩んでいく約束』みたいなもんかな)
「なに?孝介はその『約束』を破ったのかあ!?『約束』を守れないやつは最低だぞい!」
(あ、ちょっと語弊があったかな。『約束』って言うより『契約』かな?まあ、大勢の人の前で『一生みどりを愛する』って誓ったのにそれを守らなかったから『契約違反』と言う方が正しいかなあ)
「何!?『契約違反』だとおおお!それは『約束』を破るよりもっと重罪だわよ!孝介、あんたって『人として』最低なんじゃないの?」
(そうかもね。まあ何の反論も出来ないわ)
そして後輩の椎名とも会話を続ける。
「まあ、真面目な話。びっくりしたよ。よかったら今度紹介してよ。別に変なことなんか考えてなんかいないし」
「ええ。僕も孝介さんには報告しなきゃと思ってましたんで。今度セッティングしますから。三人で飯でも食べましょうよ」
「お、いいねえ。で。話は戻るけどさあ。その一年前以上の俺の『離婚』のことと社内での評価になんか関係あるの?」
「それなんです。まあ『岩島企画』の社長さんがですね。会社の看板娘を孝介さんが奪ったわけじゃないですか」
「別に奪ったわけじゃないけどね…」
「そうです。で、今は『岩島企画』には僕が行ってるじゃないですか。あそこの社長さんの岩島さん。その『離婚』のことを最近知ったみたいでして」
「そうなの?」
「ええ。それからまあ、行くたびに僕にもあたりがすごくてですね。他にもいろいろ孝介さんのことを貶めるようなことを取引先に吹聴してるみたいなんです。事務の子が教えてくれましたんで確かな情報みたいです」
「へえ。それでその『俺を貶めるようなこと』をうちの社員の子たちが耳にしてって訳かあ」
「多分そんなとこだと思います」
そこで『気☆ガァ―ル』ちゃんが。
「モードチェンジ!氣☆ガァ―ルモード!おらおら孝介!シカトぶっこいてんじゃねえー!『結婚』以外にも知らない言葉がたくさんあるぞ!おらおら!詳しく聞かせんかいいいいい!われええ!『あたいたちまるで捨て猫みたい…、エンジェル!(エンジェル!)』。モードチェンジ!気☆ガァ―ルモード。とにかく私に詳しく話してみるだわさ」
(分かった分かった。じゃあとりあえずこいつと適当なところで分かれるから)
「何!?『別れる』!?孝介…。今、この殿方と…。まあ、恋愛は自由だけどな…」
(ちがー――――――う!大きな勘違いをしてるぞ。『気☆ガァ―ル』ちゃんは!)
そんなこんなで孝介は自分が北北堂の女性社員が『青』か『透明』の色で見える理由が分かった気がした。
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