第8話『気☆ガァ―ル』ちゃん帰☆ガァ―ル

「椎名君さあ」


「なんですか?孝介さん」


 二人は最寄り駅に向かって歩きながら話す。孝介はその間もすれ違う相手の『色』を見ながら。


(お、『赤』だ。おーい。一緒に今から『お茶』でもしなーい!…て椎名もいるしなあ…。まあ、先は長い。今は冷静に、だ)


 そんなことを考えながら歩く。


「俺って社内での評判、あんまりよくないのかなあ?」


「え?急に何言ってるんですか?孝介さんは北北堂の稼ぎ頭ですし、みんな心の中では孝介さんのことを頼りにしてると思いますよ。社長だってよく褒めてますよ。『みんな、星野君を見習って業界を盛り上げていこう!』っていつも言ってますし」


「そうなの?」


 確かに現在のテキスタイル業界は不況である。昔は毎年『流行りもの』があり、それをデザイナーが作り出したり、先取したり。そこから時代は変わり。今は『うにくろ』などの安くて着やすいものや『好きな有名人が着ているから』とかの方が強くなり。北北堂はそんな現代のテキスタイル業界で『生地』をデザイナー相手に売り込むことで利益を出している。


「ええ。それに孝介さんって仕事出来るのに嫌味なところもないじゃないですか」


「そう?」


「ええ。正直なところ、僕もいつまでも会社のお荷物みたいな存在ですし。それにうちの会社ってそのお…、女性が強いって言いますか。女性が多いじゃないですか。僕の方こそ社内評価は気になりますよ」


「そうなの?でも椎名君ってよくやってると思うよ。実際、今まで男の社員もたくさんいたけどみんな辞めていったじゃん。でもそいつらが新しいとこで活躍してるって話も聞かないし。それよりただでさえ不況なこの『テキスタイル業界』に残って頑張ってる時点でたいしたもんだと思うよ」


「呼んだか!?孝介!」


 いきなり現れる『気☆ガァ―ル』ちゃん。


(『コマンド』


 『話す』


 →『気☆ガァ―ル』ちゃん


 おい!遅いよ!)


「そんなこと言ったって。私はスーパーマンじゃねえだわよ!これでも急いだんだかんね!それでどうしただわさ?」


「急にそんなこと聞くなんてどうしました?なんかありました?」


 後輩の椎名君と『気☆ガァ―ル』ちゃんの両方と会話をすることになる孝介。営業の星はその辺を上手くこなす。ちなみに『現代の聖徳太子』と呼ばれたことはない。


(ちょっと待って。順番にね。こいつは俺の後輩の椎名君だ)


「いや。なんかみんなの俺を見る視線がなんていうか…。悪いものを見るような視線を感じることがたまにあってね」


「あ、それは多分あれが原因じゃないですか?」


 ほうほう。どうやら最近、孝介は『何か』やらかしたらしい。

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