おまけ
こうして合格発表会が終わった。
終わってみれば、最悪なシナリオだ。
まさか学校を通り超して、もう軍人になるなんて。
ちょっと展開早すぎないかしら。
幸いお給金はそれなりに出るし、官舎があるようだから宿にも困らない。
ヴェルちゃん、ルースが同期ってのも救いよね。
それでもメンタル的にかなりやられてたわ。師団に入ったら、今以上に目立たないように気を付けないと。
「ミレニア、ちょっと聞いてるの?」
ふと我に返った時、目の前にヴェルちゃんの顔があった。
相変わらずお人形さんみたいに可愛い。
私たちは講堂から指定された教室に向かっていた。なんでも、師団に入ることが決定した私たちだけで、これからの生活についてオリエンテーリングを行うらしい。
ルースは何か用事があるらしく、後から来るという。
今はヴェルちゃんと二人っきりだ。
「えっと? どうしたの、ヴェルちゃん」
「その……。ありがとうね。あんたにもお礼を言っておくわ」
「お礼?」
「あたしを説得するために、思い留まらせるために辞退するって言ったんでしょ? それぐらいわかるわよ。……悪かったわ。巻き込んで」
うわ~~。ヴェルちゃん目線、そういう解釈なんだ。
結果的にそういう風に見えるよね。
うう、言えない。本当に辞退したかったのだと。
「き、気にしないで。ヴェルちゃんと一緒にいたかったのは事実だし」
「ななななな、なんで? ああああああ、あなたはそういうことを恥ずかしげもなく」
「二ヒヒヒ……。ヴェルちゃんの頬が真っ赤だよ」
「う、うるさいわね! 別に真っ赤になんか。……あ、あとあんたに言いたいことがあるわ」
ヴェルちゃんはプルプルと指先を震わせながら、私を指差した。
「なに? ヴェルちゃん?」
「その呼び方よ。……子どもみたいで嫌なのよ」
「ええ……。でも、ヴェルちゃん子どもじゃない」
「あんた、本当に燃え滓にしてあげようか」
ヴェルちゃんの手から炎が溢れ出す。
ストップ! ストップ、ヴェルちゃん。それ以上はいけない。
気を取り直して――――。
「だから……。せめて呼び方を変えて」
「じゃあ、ヴェルマジ天使とか」
「何よ、それ! ていうか、名前なの!?」
早速、却下された。ええ……。これ以上、いい呼び名なんて考えられないんだけど。
「た、単純に考えなさいよ……。う゛ぇ、ヴェルでいいでしょ」
「へ?」
「その代わり、あたしもミレニアって呼ぶから」
そ、それは……。「あんた」からの、名前呼びへの大昇格と考えていいのかしら。
やった! やっとヴェルちゃん――もといヴェルが私にデレたわよ。
「むふふふ……」
「な、何よ、気持ち悪いわね」
「だってぇ。さっきまで私に対抗心剥き出しだったヴェルが、名前呼びを許すなんて。成長したなあって。お母さん、泣きそう」
「何をしみじみと! ていうか、いつからあたしのお母さんになってるのよ、あんた」
そこはもう「あんた」じゃなくて、「ミレニア」を使っていこう。
でも、まだ馴染めないのか。
それとも激オコモードなのか。
あるいは私の頬に平手でも打とうとしているのか。
さっきからピョンピョン跳びはねるだけで、ただひたすら可愛いというだけだった。
「はあ……。やっぱりヴェルは可愛いなあ」
「ちょ! だ、抱きしめるなあ……」
私は自分から近づき、ヴェルを抱きしめるのだった。
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
これにて第二章終了です。
徐々にPVが上がってきてて、嬉しい限りです。
感想はレビューなどお待ちしております。
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