邪眼の代償
禁俗口承案内 backnumber◼️◼️
【禁俗口承案内】
著:
前回、打ち切りの憂き目にあった当コラムですが、後任の執筆者に不幸が重なり、記事の作成が困難らしいので、もうしばらく私が代打で書くことになりました。
よろしくおねがいします。
前回は最終回にも関わらず、『ワイラハイラ』についてたくさんの情報をありがとうございました。
ワイラは
畏怖するものを崇める……と読みとれそうですが、肝心の中身はさっぱりでしたね。
情報の断片ならネット検索で出てくるのですが、核心には至りません。
引き続き、調査していきます。
さて。
これまでは、私が各地から集めた禁忌とされる民俗口承について皆さんと議論を交わしましたが、今回からはあと何回連載できるか分からないという裏事情を加味して、すこし趣向を変えようと思います。
こんなところまで読んでくれる読者のあなたに敬意と感謝を込めて、私が墓までもっていくつもりだった話をしましょう。
これは私の一方的な話なので、いつものように読者参加型を期待されていた方はごめんなさい。
皆さんは、イナエタという言葉をご存じですか?
漢字で書くと
穢多は、学校の授業で習った方も多いでしょう。
穢多、
フーンそうなんだ、自分はソレじゃなくて良かったな、と、あなたも思ったでしょう。いいんです、それが当たり前ですから。
生まれた瞬間から、いえ、生まれる前から未来永劫差別され、虐げられることが確定している人生など、誰も望みません。
でも、これは物事のいち側面でしかありません。
穢多、非人は似て非なるものです。
ここでは穢多について取り上げますが、そもそも、穢多という名前がつけられたのは江戸時代からです。
その人たちは、もっと以前から世界の一部で、動物の屠殺、廃棄物の処理などを請け負う人たちでした。
その中でも、牛や馬を解体して加工する際はひどい悪臭がしたので、自然と集落から遠く離れた場所に住居を持つようになります。
仏教は殺生を、神道は血液を穢れとして忌む傾向があるので、次第に彼らが疎まれるのは自然の流れと言えるでしょう。
しかし、彼らの力なしには世界は立ち行きません。
人が生きている限り、神道や仏教における穢れは発生し続けるのです。
生きるとは、間違いなく他者を殺めることですし、老いるということは血が澱むということです。
誰かが、手を汚して処理しなければ、穢れは溜まる一方です。
その誰かを差別することで、自分は清い存在だと思うのは、ひどい欺瞞だと思いませんか?
誰もが我先に清くあろうとする行為こそ、肥溜めに落ちていくだけなのに。
現代が差別を禁止する本当の理由は、そうしないと、これまで自分たちが無意識下で行っていた目に見えない差別が露呈してしまい、自己の矮小さを直視することになってしまうからだと、私は思います。
……話が逸れてしまいましたね。
穢多、と名の付く前はえとり、かわた、などと呼ばれていました。
特に動物の解体後の皮なめしには一家言あり、加工技術を独占していた彼らは戦国時代などには武具の調達に際してとても重宝されたらしいです。
しかし、彼らは暮らす地域によってその処遇はかなり違いました。
財を築いて富をなした者もいれば、教科書通りに差別の連鎖に巻き込まれた者もいます。
やがて、時の幕府から穢多というレッテルを貼られ、その後は皆さんも知るとおりです。
と、ここまでが前置き。
私の前置きが長いのは、いつものことですね。
すみません。
イナエタはここからです。
幕府によって穢多の名を賜った者達の中には、当然反発する者もいました。
彼らは自身を
さて、これだけなら、いいんです。これもまた、よくある話です。
でも、これ以降がまずい。
穢多とは、つまり穢れを多く請け負うもの。
なぜ、穢れを多く請け負うことになったのか。
それは、彼らに穢れを浄化する特別な力があったからです。
では、その特別な力の出所は?
圧倒的多数が清潔であるために虐げられ、犠牲となる極少数は、何を拠り所にしていたのか?
なぜ、今は誰もそれを知らないのか?
個人的には、『畏ラ拝ラ』がその力の鍵を握るのでは……と、思っています。
公共の場では、これ以上はお伝えできないのが歯がゆいですね。
興味がある方は『ワシコモシワ』でも紐解いて下さい。
さて、このあたりで規定文字数ですね。
またご縁があればお会いしましょう。
ちなみに、読者アンケートで等端が良かった、と一言添えていただくとご縁が繋がりやすくなりますので、ご用とお急ぎでない方はよろしくお願いします。
等端りんでした。
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