第3話

 もう一度叫んで五秒待ったが、やはり返事は返ってこない。寝ているのか。


 短気な母は棍棒を手にして夫の部屋の辺りの天井を突いた。



 ゴッ!ドゴッ!



 二度天井を突いて『直』に呼び出してみる。反応はない。アイツ死んだ?



 

 「今日のご飯なにー?」


 バタバタと駆けてきた息子が笑顔で問う。


 天井へ向けていた鬼らしい形相を柔らかくして子供向けの表情を作って答えた。


 「今日はね、人鍋よ」


 メニューを伝えた途端に息子の顔はパッと明るくなった。



 「人鍋大好き!やったぁ!!」


 「でもパパが来ないとお鍋が始められないの。だからパパを呼んできてくれる?」



 家庭内お使いを頼んだら、はーいという返事と同時にミサイルのように夫の部屋まで息子は駆けて行った。


 最終兵器、息子。困ったときはこの手段一択だ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る