青春捧げて30000戦！～村を守るために戦い続けた少女、モンスターはどれだけ倒しても絶滅しないと知った時には《最強の野生児》になってました～

第798話 怒涛の攻勢、怒涛の防御

「いけいけー！　盾子ちゃん！」

　完全な防御型ゆえに、攻め手には欠ける部分があるまもり。

　しかし戦いの優位は完全にこの、結木まもりのものだった。

【魔神の大剣】を受け転がったインペリアルのHPは、残り6割ほど。

　少し早いが、その攻撃に勢いを増してくる。

「【跳躍】【雷蹴】！」

　低空跳躍からの回転蹴りは、稲光と共に。

「【天雲の盾】！」

　これをまもりは、しっかり待って防御。

「【トンボ返り】！」

　着地際の隙を狙わせないバク宙は、まもりの盾を蹴る形で。

　接地すると同時に、放つ回転蹴り。

「【首狩り蹴り】！」

　斜め上から、まさに首を斬り落とさんと迫る足を、まもりは思い切ってもう一度しゃがんで回避。

　反撃を狙おうとするが、インペリアルの踵の魔法珠が輝く。

「【炎天蹴】！」

「ッ!!」

　真正面への蹴り上げは、水場で足を蹴り上げたかのように炎の尾を引く。

　天に向けて真っ直ぐ伸びた足から、そのまま炎柱が巻き起こった。

「【コンティニューガード】【天雲の盾】！」

　防御時間の延長によって、巻き上がる盛大な炎から身を守る。

　しかしこれでも、インペリアルの攻勢は終わらない。

　蹴り上げたままの足を、そのまま力強く振り下ろす。

「【地沈脚】！」

「ッ!!」

　高く上げた足をそのまま強く踏み下ろすことで、相手のバランス崩すひび割れを起こすそのスキル。

　この技の回避は、左右への大きな飛び込みか――。

「え、えいっ」

　ジャンプのみ。

　思いっきり足をあげての自前ジャンプは、運動が不得手な女の子の動きそのものだが、回避には見事成功。

　現実では永遠に大縄跳びに入れないまもり、ここでは見事一発成功。

「【シールドバッシュ】！」

　即座に盾を叩きつけて、インペリアルを転がす。

「【ストライクシールド】！」

　さらに右手に取り出した大盾を全力投擲し、直撃させた。

　これで残りHPは半分を切る。

「――――【帝国武闘・閃式】」

　しかしそれによって発動する、格闘型インペリアルの奥義。

　短い時間だが、クールタイムを大幅減して一気呵成に出るというスキル。

　終了と同時に大きな隙が生まれ、そのうえ防御力の減衰というデバフを受ける、まさに切り札だ。

　その分、火力は異常。

「【ライトニング・フック】【ライトニング・フック】【フレイムジャベリン】！」

「【クイックガード】【地壁の盾】盾！　【天雲の盾】！」

「【ライトニング・フック】【アイスジャベリン】【首狩り蹴り】！」

「【地壁の盾】【天雲の盾】【地壁の盾】ッ!!」

「【ウィンドカッター】【影送り】【雷蹴】【フレアバスター】！」

「【天雲の盾】……【天雲の盾】【天雲の盾】ーっ！」

　二発の高速フックから、突然放たれる炎の魔法。

　直後にまた高速のフックから氷の槍につなぎ、今度は回転蹴り。

　風の刃から姿を消し、一瞬遅れて上方からの雷蹴り、そして着地後の爆炎魔法。

　タイミングをずらし、視界上部に瞬間移動し、最後は高火力の上位魔法。

　まさに圧倒的な連打だ。

　だがまもりも、この恐ろしいラッシュを見事な防御で徹底防御で対抗してみせる。

「すごい……」

　その徹底的な防御に、どうしても感想が単純なものになってしまう。

　格闘に魔法を混ぜようが、瞬間移動を使ってタイミングをずらそうが、まもりはその全てに対応してくる。

「で、でも、反撃の火力不足はどうするんだ……!?」

　たとえ防ぎ切っても、反撃時にどう攻撃するのか。

　観客たちは、そんな懸念を抱えながら熱い視線を向ける。

　インペリアルの両ナックルに生まれる輝きは、これまでを上回る火力の証。

　強烈な踏み込みから、超高速の接近。

　足が石畳にめり込むほどの、強い踏み出しだ。

「【エクスプロード・ナックル】！」

「【不動】！　【地壁の盾】！」

　まもりの左手の盾に巻き起こる濃密な爆発。

　本来であれば守っても盾を吹き飛ばす『武器飛ばし』効果を持つその一撃を、左のヒーターシールドで受ける。

「【ショックフィスト】！」

「【天雲の盾】！」

　右手のカイトシールドに走る強烈な雷撃に、視界が白く焼ける。

　するとインペリアルは、両手を大きく引く。

　左右の拳打から続くのは――――。

　この流れを何度か見てきたことが、まもりに閃きを与える。

　左の【エクスプロード・フック】、右の【ショック・フィスト】

　この大技の連携の最後にくる決め技は、魔法だ。

　インペリアルは後方に引いた両手を身体の前面に伸ばし、両掌を開く。

「消え去れ――――【グランマギア】！」

　その瞬間、猛烈な輝きが視界を埋め尽くす。

　見た瞬間分かる、明らかな大技。

　上位上級に値する、必殺魔法だ。

「【マジックイーター】！」

　冴え渡る感覚。

　格闘系の連撃だが、最後を締めるのはやはり魔法だった。

　そしてどんな魔法でも喰らうまもりの盾が、空間ごと噛み千切るように魔力の閃光を飲み込む。

「【ローリング・シールド】！」

「くっ！」

　すかさず一回転して右の盾でインペリアルを弾いたまもりは、そのまま強く左の盾を突き出した。

「解放――――【グランマギア】！」

　それはまるで、砕けた津波のよう。

　弾け散る大量の魔力。

　放たれた白色のエネルギーは、防波堤の決壊を思わせる怒涛の勢いで放出される。

「……バカな」

　目前で発動したこの魔法に、回避のしようなどない。

　直撃し、爆発。

　吹き飛んだインペリアルは飾りの石柱を折り砕き、それでも止まらず教会の石壁を突き破って一部を破壊。

　ガラガラと崩れ落ちる石片と、巻き上がる煙。

　HPゲージを吹き飛ばされる形で敗北となった。

「た、盾子ちゃんすげえ……っ！」

「防御メインでここまで戦えるなんて、誰が思うんだよ……っ！」

　攻撃しなければ勝てないのに、攻撃するほど不利にさせられる。

　そんなまもりの戦闘形式に、観客たちは感嘆の息をつく。

「な、なんとか、なりましたぁ……っ」

　大きく安堵の息をつくまもり。

「さすがです。あの敵、相手がまもりさんでなければ間違いなくかなりの強敵でしたね」

　手数の多さに、挟む突然の魔法攻撃。

　そして瞬間移動による翻弄。

　余りにやっかいな敵も、狙った相手が悪かった。

　そう言ってツバメは、目前のインペリアルに視線を戻す。

「私も、負けていられません……！」