第335話 王都クエスト終了です!

「メイ――っ!!」

「メイさーんっ!」


 駆けてきたレンとツバメが、メイに飛びつく。


「やったわね!」

「お見事でした!」

「ありがとーっ! みんな無事なままで良かったよー!」


 三人はぴょんぴょんと飛び跳ねながら、戦いの終わりを喜び合う。

 王都決戦は見事、メイの怒涛の攻勢によって勝利した。


「すげえ、本当に勝っちまった……」

「獣の王、完全にこれまでの『星屑』史でも最強クラスのボスだったよな」

「それでも最後はメイちゃんの能力が上を行ったか……いいもの見れたわ」


 集まっていた観戦者たちも、ため息をつくほどの戦い。


「お、獣の王が動き出したぞ」


 倒れ伏していた獣の王は、わずかな時間を置いてフラフラと立ち上がった。

 そして、こちらに向かってやってくる。

 メイはそんな王の顔の高さに合わせるため、近くのガレキの上に登って到着を待つことにした。


「……さあ戦いは終わったぞ、ここからどうなる?」


 集まった参加者たちが、息を飲む。

 立ち上がった獣の王は狂化が解け、目も元に戻っていた。

 どうやら正気を取り戻したようだ。しかし。

 メイたちを見ると、再び紋様を輝かせて怒りをあらわにし始めた。


「王の子の誘拐、そして強引な狂化薬の使用。人間への怒りは……もう止まらないのか……っ」


 従魔ギルド長が、そう言って観念したかのように目を閉じる。


「おいおい、正気に戻った上で許されないってことかよ!」

「ここまでやってそれは悲しすぎるだろ……!」

「でもなぁ……魔獣を捕えて利用して、王の子も誘拐、そのうえ獣の王まで狂わせたとなったらなぁ……」


 唸り声をあげ、怒りのままやってくる獣の王。

 メイの目と鼻の先まで、その顔を近づけてくる。

 この後は王都の崩壊か、それとも魔獣や動物たちとの戦いが始まってしまうのか。

 参加者たちの間にも緊張感が走る。しかし。


「王の子ちゃん!」


 そこに駆けてきた王の子が、メイを守るように隣に並んだ。

 ……すると。

 ホワイトパンサー、ペガサス、バジリスク、金毛羊がやって来て、メイの背後に並ぶ。


「みんなも……」


 続けてグリフォン、キマイラ、ワイバーンといった、地下攻略組と檻から助け出してきた魔獣や動物たちもやってきた。

 さらに地下探索に向かったプレイヤーたちが救出した魔獣も、続々とメイのもとに集まってくる。

 集まった魔獣から、動物たちから向けられる視線。

 うなりを上げていた獣の王は、それを見て動きを止めた。

 輝きを増していた光の紋様も、消えていく。

 そして、ゆっくりと伸ばしたメイの手が、今度こそ獣の王の鼻先に触れた。


「王が……怒りを収めた。我々はどうやら……動物たちの敵とはならなかったようだ……」


 従魔ギルド長の言葉に、参加者たちは顔を見合わせる。


「お、おおお」

「おおおおお……」

「「「うおおおおおおお――――っ!!」」」


 そして思わず皆、叫び声を上げた。


「なんだなんだこのクエストはァァァァーッ!!」

「皆で地下に潜ってやってきた魔獣たちの解放が、ここで効いてくるのかよォォォォ!!」

「あの魔獣は俺が助けたんだぜ! それが今、戦いを止めるために来てくれたってことだろ! すげーっ!」


 歓喜の声が止まらない。

 獣の王の鼻先を撫でながら、ほほ笑むメイ。

 その周りには魔獣や動物たち。

 そしてそんなメイを見ながら、歓声をあげる参加者たち。


「すごいです……」

「メイだからこそ、見られる光景かもしれないわねぇ」


 獣の王と魔獣たち、メイ、そしてプレイヤー。

 奇しくも、メイが両者の間をつないでいるような光景になっている。


「君たちのおかげで王都は……いや、世界は救われた。ありがとう……本当にありがとう」


 従魔ギルド長はそう言って、『星屑』最大級クエストの終了を宣言するのだった。

 伏したままの元老院卿、そして巨竜たちをけしかけた元老院副長は、別派の王都兵たちに連行されていく。

 これで魔獣を使った陰謀を企てていた者たちが、王都から一掃されたという形になるのだろう。

 こうして王都イベントの二日目は、過去最大級の展開と共に終了を迎えた。

 誰もが歓喜にわいている王都南部。

 問題があるとすれば、【世界樹の分枝】によって生まれた巨木と【豊樹の種】によって茂る木々に、王都南部が完全に占拠されていること。

 そしてメイは今、エンディングの展開に夢中になっている。

 そのせいで、『獣耳』に『毛皮マント』を羽織っただけという完全な野生児姿であることを、忘れているという点だけだ。

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