第261話 救出成功です!
海運倉庫の一室に閉じ込められていた、フィンマルク王国軍副官。
倉庫内で鉢合わせた九条院白夜と共にヴァイキングを倒すことで、その身柄を開放することに成功した。
「助かった、礼を言う」
そう言って頭を下げたのは、騎士鎧に身を包んだ背の高い剣士NPC。
これにて、追加クエストも見事達成となる。
「まさかこんなに早く助けが来るとは思わなかった。ヴァイキングたちは一気に街を占拠してしまったからな……」
「いくら小さな国とはいえ、ヴァイキングに乗っ取られそうになるって防衛能力が危うい感じよね」
「それが今回のヴァイキングの攻勢はあまりに見事で、短い時間で即時に要所を抑えられてしまったんだ」
「ヴァイキングと言えばもっと荒々しく大雑把なイメージでしたが、少し意外ですね」
「……なるほどねぇ」
レンは何か思案するように、息をつく。
「ここからはヴァイキングを追い返す流れになっていくのかしら」
「そのための部隊がおそらく王国でも編成されているだろう。私はこれから軍に戻りその指揮を執ることになるだろうが……」
レンの問いに、副官は悩ましそうに応える。
「港に停泊しているヴァイキングの船、あれを落とさない限り状況は変わらないだろう」
現状、氷海へと続く港には大型の木造船が停泊しており、これがヴァイキングたちの本拠地となっている。
実際港からはある程度の距離があり、ジャンプ一つで飛び乗れるといった感じではない。
船を使って近づくといった感じの手段が必要となるはずだ。
そうなれば当然、敵も迎え撃ってくるだろう。
「そこでだ。君たちの力を貸してほしい……あの船を落とすために。このままではフィンマルクはヤツらに奪われてしまう」
「ヴァイキングの大型船を落とす……これ結構あっちこっちのクエストからつながってきそうね。大きな展開になりそうだわ」
「街には多くのヴァイキングがいましたし、かなりのプレイヤーが参加しての戦いになりそうですね」
街を開放するための戦い。
レンやツバメの予想通り、この大きなクエストには多くのプレイヤーがたどり着くようになっている。
「もちろんわたくしは構いませんわ! このような危機を見過ごしてしまっては、光の使徒としての名が泣きます!」
そう言って、ポーズを決める白夜。
「わたしもかまいませんっ! 普通の女の子としての名が泣きますっ!」
メイも自然と隣り合い、ポーズを合わせにいく。
「ちょっとメイが影響され出してる……」
同じくポーズを決めるメイを、レンはそっと自分の方に引き寄せる。
「ありがとう……こちらは人数の少なさもあり、状況は劣勢以外の何物でもない。我らだけで特攻しても望むような戦果は得られないだろう。だが君たちのような優秀な戦士がいれば戦況は大きく好転するはずだ」
「船への攻撃はいつ始めるの?」
「敵船への反撃は、大きな合図と共に開始する。君たちにはそれをサインにして攻め込んでもらいたい。王国軍も、助けに来てくれた冒険者たちも一斉に動き出すはずだ」
「りょうかいですっ!」
「それではまた会おう。君たちの卓越した能力を期待している」
そう言って、駆け足で倉庫を出ていく副官。
「……そうだ」
不意に、何かを思い出したかのように足を止めた。
「ヤツらの会話の中に『海竜』という言葉が聞こえた。氷海の海竜と言えば『猛吹雪』と『氷海大波』という広範囲攻撃を持つ大型モンスター。くれぐれも気を付けてくれ。それと……そこにあるヴァイキングの書物は何かの役に立つかもれない」
そう言い残して立ち去っていく副官。
さっそくレンは、残された本を確認してみる。
【連続魔法・中級】:中級魔法を三連続で放つことが可能になる。
「これは幸運ですわね、どうぞお使いになって」
「いいの?」
「魔導士用のものですから構いませんわ。ですが……わたくしの目の黒いうちは、企みごとに使うようなマネは許しま――」
「はいはい、使わせてもらうわ。海竜の話も大きな展開になりそうだし、やっぱり派生のクエストは得られるものも大きいわね」
「ふふ、相手にとって不足なしですわ」
副官の話を聞いた白夜は、うれしそうに笑う。
「次はヴァイキングたちと戦いながら、船を破壊するのが目的になるのね」
「ヴァイキング船のゲージを削り切ったら勝利ということでしょうか」
「おそらくそうなるわね。とにかく船を沈めなさいってことだ思うわ」
「がんばりましょうっ!」
いよいよ大きくなってきた展開に、ワクワクし始めるメイたち。
「海竜の話は船破壊までの時間制限か、それとも追加の展開か……どちらにしろ覚えておく必要がありそうね」
「それではさっそくフィンマルクの開放に向かうといたしましょう。この地に光の使徒がいる以上、悪が栄えることありえませんわ!」
白夜はレイピアを引き抜くと、意気込みながら倉庫を後にする。
「街の皆は普通の女の子が守りますっ」
「負けられません」
先陣を切る白夜とメイ。
肩を並べ、クールな笑みを浮かべながら進む二人の後ろに、ツバメも静かに続く。
「そ、その感じは続行していくの……?」
さりげなく白夜との行動が継続されている上に、なんか『光の使徒たち』みたいな雰囲気を出し始めたメイたち。
そんな三人に困惑しながら、レンはあとに続くのだった。
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