第32話 村に帰ってきました!
「ありがとうございました……っ」
迎えに来てくれていた白い巨鳥に乗り、メイたちは村へと戻ってきた。
「ジャングルは守神様の力に守られておるのです。皆さんがいなかったらどうなっていたことか……」
深々と頭を下げた後、安堵の息をつく村長。
「皆さんは、ジャングルを守った英雄です」
「英雄だって!」
ぴょんぴょん跳ねて喜ぶメイ。
もちろん、守神が小鹿の姿に戻って眠り出した後すぐにブーツをはき直している。
裸足はやはり、野性味が強い。
「守神様は今、力を使い切っている状態でしょう。それも少しお休みになれば回復されるはずです」
それを聞いて、集まっていた村人たちも「よかった」と胸をなでおろす。
「皆さん、ありがとうございました」
そんな中、メイたちのところに三姉妹が駆け寄って来た。
なぜか付いてきている一羽のニワトリも、当然のようにレンの頭上に跳び上がる。
「なんで来てるのよ」
「レンさんを称えに来たのではないでしょうか」
言われてみれば、翼をバサバサ鳴らして感謝を表しているように見えなくもない。
「あの、実は家にずっと置きっぱなしになってる本があったんですけど、皆さんの役に立てるかもと思って」
そう言って長女が取り出したのは、一冊のスキルブック。
「わあ、ありがとうっ」
「ニワトリを助けておくと、こういう展開になるのね。メイ、中身は?」
さっそく目を輝かせながら、のぞきこんで来るレン。
「ええと、【装備変更】だって」
【装備変更】:装備品の即時交換が可能。
「なるほど、戦闘中にウィンドウなんかを開かずに装備を替えられるスキルなのね。使い方次第で面白くなりそう」
レンは興味深そうにうなずく。
「守神様と村を助けていただいた皆さんには、私からもお礼をしなくてはなりませんな」
村長がそう言うと、木の皮で編んだ箱を三つほど村人たちが持って来た。
「必ずや、あなたたちの力になってくれるはずです」
「さっそく開けてみましょ」
目の前に置かれた『クエスト報酬』に、レンはすぐさま飛びつく。
箱を開くと、そこには深い色味の古木に銀の装飾。
大きな紫色の宝石が飾られた杖が入っていた。
【ワンド・オブ・ダークシャーマン】:敏捷値を大きく下げる代わりに知力値を大きく向上し技量も上げる。敏捷値-50、知力値+40、技量値+20、攻撃力10。
「なるほど……敏捷値の下がり幅が大きいから、私の『近接もできなくない』っていう特長には合わないように見えるけど、【魔砲術】の一撃性能を上げるのには十分使えるわね。技量値のアップは命中に関わるし、面白い装備だわこれ。見た目が少し……闇の使徒感あるけど……」
少し顔を引きつらせながらも、さっそく新装備の使い方を見出すレン。
一方、ツバメの箱の中にはスキルブックが入っていた。
【二刀流】:両手に武器を持って戦うことが可能になるパッシブスキル。アイテムスキルの使用も可能。
防具を持たずに手数を増やす。
そんなスキルだが、現状でも盾を持たないツバメにとっては有効だ。
【電光石火】による攻撃が連撃になることも予想できる。
また、この連撃の二発目をスキル持ち武器の使用にすることで、三連撃にすることもできそうだ。
「わー! なにこれすごい!」
メイが感嘆の声をあげた。
その手には、鹿の角。
「装備品の素材ですか?」
興味深そうに角を見つめるツバメ。
【鹿角・尻尾】:スキル【突撃】を使用可能。ステップ系スキルが強化される。突撃のタイミングを合わせることで、敵の物理攻撃の一部を弾くことができる。腕力+20、敏捷+20。
「これ自体が……装備なんですか?」
「なるほど、そう来たかって感じね。獣耳装備を変更することで戦い方も変化する。面白いじゃない」
「それは守神様が百年に一度、『角』の生え代わりの際に落とした物です。そして同じく落ちた毛を集めて作った『尾』とのセット。守神様のお力が、必ずやあなたの役に立ってくれるでしょう」
村長も自信をもって推薦する。
「間違いなく【バンビステップ】の性能向上が付くだろうし、いいわね」
「この【突撃】というのも、シンプルだけど聞いたことのないスキルです」
「本当ね。どんな効果があるのかしら」
「装備してみるね!」
さっそくメイはアクセサリー装備を【猫耳・尻尾】から【鹿角・尻尾】に変更してみる。
「……かわいい」
思わずつぶやくツバメ。
しかしメイは、鏡に映った自分を見て不意に思う。
「な、なんか、野生味が強くない?」
「……野生ですか?」
メイが度々口にするその言葉に、ツバメは首を傾げる。
「メイはその出自っていうの? 7年のジャングル生活もあって『野生児』って呼ばれてるのよ……運営に」
「運営に……?」
「そうなんだよ! ちゃんと身だしなみにも気を使う普通の女の子なのにー!」
「でも、可愛いですよ? 野生より可愛いが優先します」
早くも鹿装備のメイに、見とれてるツバメ。
「裸足でも、大丈夫だった?」
「…………も、もちろんです」
「ちょっと考えてくれた時間があった!」
「私も、その装備も十分可愛いと思うわよ」
「え? そ、そうかなぁ?」
「それだけは間違いないです」
「……え、えへへへへ」
しかし二人に強く肯定されて、うっかり喜んでしまうメイなのだった。
「そう考えると、【装備変更】はメイが覚えるのが良さそうね。耳とか角みたいな動物アクセサリーを即座に付け替えられるっていうのが、大きな武器になりそう」
敵や状況次第で装備品が持つスキルや効果を使い分ける。
なかなか面白くなりそうだ。
「これはイベント後半戦も、楽しくなりそうね」
ニワトリを頭に乗せたまま、楽し気に笑うレンだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます