第30話 守神との戦い

 テーブルマウンテンの遺跡の奥地。

 怒り狂う守神の放った青い雷光に、倒れたハンターたち。

 守神はその狂眼をメイたちに向けると、強く地を蹴った。


「【バンビステップ】!」

「【加速】」


 速く力強い突進をかわしつつ、接近するチャンスをうかがうメイとツバメ。

 巨鹿は荒々しい跳躍で広い緑のマップを縦横無尽に掛けまわると、その角を輝かせる。


「あっぶな!」


 付近一帯への落雷。

 その範囲は広く、少し距離を置いているレンのもとにも容赦なく落ちて来る。

 これをレンは、回避に集中することで身を守る。

 すると守神は、前足を高く跳ね上げた。

 角を走るまばゆい雷光が煌々と輝いた次の瞬間、猛烈な一筋の轟雷が地面に突き刺さる。


「あれをもらったら一発アウトね……」


 苦笑いを浮かべるレン。

 守神は身体を一度振るった後、再び走り出す。

 その狙いはメイ。

 猛烈な勢いで迫る守神は、そのまま地を蹴り飛び掛かる。


「【アクロバット】!」


 これをメイがバク転一つでかわすと、守神は大きな角をしゃくりあげる。


「【ラビットジャンプ】! 【アクロバット】!」


 これを後方への大きなバク宙でかわして着地。


「レンちゃん! ツバメちゃん!」

「了解!」

「いけます」


 守神は再びメイを狙いに来る。


「がおおおお!」


 しかし目前で放たれた【雄たけび】に、大きくのけ反った。


「【電光石火】」


 生まれた隙に、ツバメが斬り抜ける。

 守神の後方へと回ったツバメは、そのまま――。


「【紫電】」


 体勢を整えつつあった守神の動きを、再び止める。


「耐性がなくて助かりました」

「【フレアバースト】!」


【紫電】の硬直を狙い、レンが魔法を放つ。

 駆け抜ける爆炎は巨鹿を大きく燃え上がらせた。さらに。


「【加速】」


 燃える守神に、ツバメがダガーを叩き込んだところで――。


「【ラビットジャンプ】!」


 駆けこんで来たメイが大きく跳躍。


「ジャンピング――――【ソードバッシュ】!」


 締めの一撃を叩き込む。


「決まったー!」


 メイが歓喜の声をあげる。

 レンの提案したコンビネーションは、見事に守神のHPゲージを2割ほど削ってみせた。

【雄たけび】への警戒、【紫電】の感電率を考えれば二度はつながらない連携だが、威力は上々。

 慌てて大きく跳び下がった守神は、ドンと脚を鳴らす。

 するとレンの足元が、にわかに光り出した。


「ッ!」


 慌てて飛び退くと、木の根が刃の様に突き上がった。

 上からは雷、下からは木の根。

 前衛をけん制しながら後衛も狙う、なかなかにやっかいな攻撃だ。


「これじゃ……魔法を使う暇がない……っ!」


 上下からの攻撃を、必死にかわすレン。


「レンちゃん大丈夫!?」

「なかなか厳しいわね。メイ、早いうちにアレもいっておきましょう!」

「うんっ!」


 レンの言葉に、メイが目を輝かせた。


「先行します」


 その意図を読み取ったツバメが前に出る。

 狙いを変更した守神は、シンプルな直線の特攻でツバメを狙う。


「【電光石火】」


 ツバメはこれを、より速い【電光石火】を使うことで回避。

 守神が振り返ったところで【加速】で距離を取る。

 こうしてツバメがオトリになると、守神が再び前足を大きく上げた。


「この後の隙を突きましょう」


 ツバメは【加速】からの【跳躍】で再び距離を取る。

 直後。強烈な稲妻が落ちて、守神が身体を大きく震わせた。


「【フレアストライク】!」


 上下からの攻撃の隙を縫うようにして放った魔法が、大技使用後の隙を見せていた守神を捉えた。

 大きな爆発と共にあがる炎が、巨鹿の体勢を大きく崩す。


「今よ、メイ!」

「りょうかいっ!」


 おとずれた好機。

 しかしメイは自ら追撃に向かうのではなく、右手を高く掲げてみせた。


「よろしくおねがいしまーす!」


 右手に装備した【召喚の指輪】が輝きを放つ。

 するとメイの背後に、大きな魔法陣が現れた。

 巻き起こるライトエフェクトと共に、魔法陣から現れたのは――――仁王立ちをした巨グマ。


「おおーっ!」


 その威容に、メイの尻尾がブンブンと興奮し始める。

 ジャングルで仲良くなった親グマは、標的の巨鹿をその目に捉える。

 そして、猛烈な勢いで走り出した。

 一気に巨鹿のもとへと駆け付けると、砂煙をあげながら豪快に跳躍。

 空中で一回転すると、轟音を鳴らしながらその剛腕を振り下ろす。

【グレイト・ベアクロー】

 その猛烈な一撃はなんと、巨鹿を地面に叩きつけた。

 守神は、煙をあげながら地面を跳ね転がる。


「ありがとー!」


 拳を突き上げたまま消えていくクマに、飛び跳ねながらブンブン手を振るメイ。

 何気にその背中に張り付いてきてた子グマに、ツバメも夢中で手を振る。

 大きな連携と、必殺の大技を続けざまに叩き込んだメイたち。

 早くも守神のHPゲージは、5割ほどになっていた。


「【フレアアロー】」


 倒れている守神に、念のため追撃をしておくレン。

 しかしゲージは減らず、守神はゆっくりとその身を起こす。

 それを見て、確信する。


「……ここからが、勝負どころってことね」


 見れば守神の角は青白く輝き、その全身からバチバチと雷光が弾け飛んでいた。

 それは、戦いが次の段階に入ったことを意味していた。

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