第27話 遺跡に向かいます!

「いってらっしゃい!」

「どうか、守神様をよろしくおねがいします」


 三姉妹と村長に見送られて、メイたちは村を出る。

 白い鳥は、三人が乗ってもまだ余裕があるほどに大きい。


「いってきまーす!」


 見送りに来てくれた三姉妹たちに、大きく手を振るメイ。

 白い巨鳥は大きな羽ばたきで、一気に夜空へと舞い上がる。


「うわー! すごーい!」


 メイの尻尾が、これ以上ないくらい大きく揺れる。

 浮かぶ大きな月。

 照らされるジャングルに、三人目を奪われる。


「きれいです」

「あの滝が、私たちの降りて来たところね。夜だと全然違って見えるわ」


 大きな羽毛に顔をうずめながら応えるレン。

 そのまま三人は、テーブルマウンテンの中央部へ。

 巨鳥は三人を下ろすと、再び空へと帰っていく。


「ありがとー!」


 そんな鳥に、手を振るメイ。

 たどり着いた遺跡に、思わず息を飲む。


「すごい……」


 何本もの太い樹が、絡み合うようにして一つの巨木を作り出している。

 そこには、そのほとんどを飲み込まれた石碑のようなものがあった。


「正面玄関って感じじゃないわね」

「いくつかあるルートの一つでしょうか」


 足元には、小さな花々。

 石碑には月光を浴びて緑に輝く宝珠が埋め込まれている。


「このパターンは、ポータルね」

「ぽーたる?」

「移動装置のことよ。おそらくこの遺跡の内部に瞬間移動することになるわ」

「そうなんだ! さっそく行ってみようよ!」

「それじゃメイ、その宝石にさわってみて」

「うん!」


 石碑の中央、緑の宝石にメイがふれる。

 するとまばゆい光が広がり、三人は姿を消した。


「……わあ。遺跡って感じだねぇ」


 尻尾をふりふりしながら、メイが感動の声をあげる。

 転移先は石壁の広い空間。

 続く通路はところどころが崩れ、木の根が大きく浸食している。

 幸い、ランプ代わりに置かれている魔法石が放つ光で視界には困らない。

 道はすぐに、二本に分かれていた。

 片方の道は崩れ落ち、足元に大きな穴が開いている。


「普通に考えれば片方しか通れないんだけど……崩れた方も、私たちなら行けるわね」


「【ラビットジャンプ】! 【アクロバット】!」


 メイは余裕で穴を飛び越えて空中回転。体操選手の様に着地した。


「大丈夫だよー!」


 その華麗な動きに驚きながら、ツバメも【跳躍】で後に続く。

 レンは【浮遊】で穴を飛び越えた。

 一人でも跳躍系スキルを持たない者がいると進めない道。

 三人が進んで行くと、たどり着いたのはやけに高さのある部屋だった。

 だだっ広く薄暗いその部屋の天井は、木々の浸食もあって確認することすらできない。


「おっと!」


 上方から飛んできた矢を、いち早く気づいたメイが首の動き一つでかわした。

 その足もとの沈み方を見て、レンが仕掛けに気づく。


「これ、踏んだ場所を狙って矢が放たれるようになってるのね」

「危ないですね……この矢、おそらく毒が付着してます。気をつけないと」


 ツバメが緊張しながら歩を進めていると。


「【投石】!」


 メイの投じた石が、天井の奥にあった何かを吹き飛ばした。

 散らばり落ちる矢を見て、それが仕掛けのボウガンだとツバメはすぐに理解する。


「これで大丈夫だよ!」

「なんで、【投石】が……?」


 あんな距離まで、あの威力で、的確に?


「ステータス補正の効果よ」


 としか言えないレンが、笑いながら応えた。

 三人はこの部屋も難なくクリアして、先へと進む。

 続く部屋には光を放っていた魔法石がなく、真っ暗だった。


「一応松明も持ってきてはいるけど、ここは一度メイにまかせましょう」

「まかせてくだされ!」


 そう言ってずんずんと暗闇の中に消えていくメイに、ツバメが困惑の色を浮かべる。


「レンちゃーん、ここに大きなランプみたいなのがあるよー」

「なるほどね。多分火の魔法を当てると明るくなる仕掛けじゃないかしら」


 レンはそう言って、手を上げてみせる。


「こんな感じでどう?」

「もう少し右だよー」

「これくらい?」

「もう少し、あとちょっと上かな」


 メイの言葉に合わせて、手を向ける位置を調整する。


「うん、それくらいでいいと思う」

「それじゃ、【ファイアボルト】!」


 レンの手から放たれた炎の弾丸が、暗闇の部屋の奥に吊り下げられた大きなランプに当たる。

 予想通り火が灯り、一気に見通しがよくなった。


「……見えてるんですか?」

「メイは暗闇の中でも見えるスキルを持ってるの」

「そうなんですか……」


 いよいよ首を傾げるしかないツバメ。


「松明だけだと、進むのが難しい道になってるわね」


 足元を見れば、各所に空いた底の見えない穴。

 足場も悪く、これを松明一つで乗り越えるのはなかなか難しそうだ。


「レンちゃんツバメちゃん、こっちだよー! うわあっ!?」

「メイ!? ……もう、心配させないでよ」


 うっかりバランスを崩して、あやうく穴に落ちかけるメイ。


「メイはいざという時は頼れるけど、意外とうっかりなところがあるのよね」

「あはは、お母さんにも抜けてるって言われるんだよぉ」


 恥ずかしそうに笑うメイに、ツバメがクスリと笑う。

 三人はそのまま暗闇の部屋を出て、再び通路へ。

 すると、まさに今出てきたばかりの部屋へ戻る道が急にふさがれた。


「「「ッ!?」」」


 思わず三人顔を見合わせる。

 直後、降り始める天井。


「こんな仕掛けもあるの!?」


 驚きの声をあげるレン。ツバメが即座に走り出す。


「【電光石火】!」


 落ちてくる天井の隙間に、滑り込むような高速移動。

 ツバメは先の部屋にあった古いレバーを上げる。

 すると、落ちてきていた天井が止まった。


「ツバメちゃんありがとー!」

「助かったわ」


 飛びついてくるメイと、「やるわね」と笑うレン。

 真正面から二人に褒められて、恥ずかしそうに頬を赤くするツバメだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る