9話
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実家の近くの商店街の脇道。通学路から外れてはいたが、家に帰る近道だった。あまり人通りがない。そんな道に、お母さんと、男性の後ろ姿。あのおじさんがいた。声をかけたかった。でも、急に怖くなった。幼い私は、よく顔を確認することなく、来た道を戻ってしまった。
お母さんの目は真っ赤で、何度も頭を下げていた。おじさんは困ったように、顔を上げるように言っていた。
「こんなことに巻き込んでしまって、本当に申し訳ありません。お怪我は?」
「いや、私の方は本当に大丈夫です。」
「あの子を守ってくれて、本当にありがとうございました。あの子もだいぶ立ち直っています。」
「いいんですよ。私がもっとしっかりしていれば、こんなことにはならなかったんですから。もう忘れることにしようって、決めたでしょう。」
「いや、でも、本当に、本当に、ありがとうございました。ありがとうございました。」
私に、こんな記憶があるわけがなかった。
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