8話

***


「いいかい、お嬢ちゃん。明日、お家に帰れるよ。解放だ。」

何日目だったんだろうか。食事を持ってきたおじさんは私にそう告げた。おじさんとはすっかり仲良くなっていて、誘拐犯であることを意識しないくらいになっていた。家に帰りたいけれど、おじさんにもこれからも会いたい。

「おじさんにはもう会えないの?」

おじさんは何とも言えない顔をしていた。それで、ふっと笑った。


***


目隠しをさせられた私をおんぶしているのは、あのおじさんだった。薄暗い道を、肩が痛いのに、疲れた顔でゆっくりと歩いている。

「おじさん?」

「起きちゃったか。もうすぐお嬢ちゃんの家だ。」

「おじさんは逮捕されちゃうの?」

「俺は遠くに行く。もう二度と君と会うことはないな。」

道はどんどん暗くなり、二人の姿は見えなくなっていった。


***


 幼い私がぐっすりと眠っていた。その横で、お母さんは不安そうな顔で、ずっと私の顔を見ていた。

 目が真っ赤に腫れていた。ずっと寝ていないのかもしれない。


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