8話
***
「いいかい、お嬢ちゃん。明日、お家に帰れるよ。解放だ。」
何日目だったんだろうか。食事を持ってきたおじさんは私にそう告げた。おじさんとはすっかり仲良くなっていて、誘拐犯であることを意識しないくらいになっていた。家に帰りたいけれど、おじさんにもこれからも会いたい。
「おじさんにはもう会えないの?」
おじさんは何とも言えない顔をしていた。それで、ふっと笑った。
***
目隠しをさせられた私をおんぶしているのは、あのおじさんだった。薄暗い道を、肩が痛いのに、疲れた顔でゆっくりと歩いている。
「おじさん?」
「起きちゃったか。もうすぐお嬢ちゃんの家だ。」
「おじさんは逮捕されちゃうの?」
「俺は遠くに行く。もう二度と君と会うことはないな。」
道はどんどん暗くなり、二人の姿は見えなくなっていった。
***
幼い私がぐっすりと眠っていた。その横で、お母さんは不安そうな顔で、ずっと私の顔を見ていた。
目が真っ赤に腫れていた。ずっと寝ていないのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます